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クロムめっきの試験・検査法


硬さ試験
厚さ試験
摩耗試験
耐食性試験
密着性試験


硬さ試験


・引っかき硬さ試験

この試験は、ある荷重の作用したダイヤモンドの先端で、測定しようとする材料の表面をすべらせながら傷をつける。カタサは傷の生じるまでに要した荷重、または一定の傷幅をうるに要する荷重で表わされる。
この試験の長所は10g以下の低荷重まで用いることができるので、薄い皮膜に対して都合がよい。しかし、この反面得られた値は単に相対的なものであるから、他のカタサ値に換算することはむずかしい。
クロムのようにもろいメッキの場合は、荷重を増すと共にカタサの低下する度合いが、引っかきカタサのほうがいちじるしい。


・マイクロビッカース硬さ試験

通常のビッカースと同型の圧子を用いるが、微小荷重を使用するため、生じた圧こんは300〜600倍の顕微鏡でよみとる。
メッキ層のカタサを測定するにさいして重要なことは、用いる荷重に対して厚さが適当であるかどうかということである。正しいカタサを測定するには、生じた圧こんの深さに対し、皮膜の厚さは6〜7倍以上必要とされる。いま、メッキ層の厚さh=0.01mmとし、このカタサHv=800とすれば、L≦58gとなる。すなわち、0.01mmのクロムメッキ層に対しては、荷重を58gあるいはそれ以下にしなければならない。実際には表面層および素地の性質により、多少の変動はありうるであろう。


・ヌープ試験

ヌープ型の、ミクロビッカースカタサ試験機と異なるところは圧子の形状にある。ヌープ型は長子稜127°30、短い方の角度130°を有するひし型の圧子をもっている。したがって、ビッカース試験機により得られる圧こんは正四角形であるのに対し、クヌープ型では長子対角線の長さは、一方の長さの約7倍のひし型となる。
PetersおよびKnoopは、この試験機を用いていろいろな厚さのクロムメッキを50〜2,000gの荷重でカタサを測定している。これによれば、メッキ厚さに対する押込み深さの比が14:1を限度として、押込み深さがこれより大なるときはカタサがいちじるしく減少する。この結果から0.02mmの厚さのクロムメッキは荷重200g以下を用いるならば、素地金属に影響されないことを示している。
ミクロ押し込みカタサ試験を行なう場合に注意すべき点は、圧こんはきわめて小さいから読取誤差をできるだけ少なくするため、測定面は、平滑で圧こんを明瞭にしなければならない。表面が凹凸があったり、また斜面は測定すべきではない。被測定層の厚さと荷重の関係はとくに注意すべきで、メッキ層はできるだけ厚く、かつ荷重は許される最高を用いるべきである。また求められたカタサに対しては、常にこれに用いられた荷重を付記することを忘れてはならない。そして、カタサ値を他のカタサに換算することはできるだけ避けた方が良い。すなわち、それぞれの試験により、カタサの意味するものが多少異なるからである。


厚さ試験


・顕微鏡による試験

この方法は試料を破壊することおよび手数のかかることが欠点であるが、得られた値はもっとも正確である。
測定すべき個所をメッキ面に対して直角に切断して、断面をメッキ層がだれないようにエミリー紙を用いて入念に研摩し、量後にラッピング仕上を行ない、顕微鏡により断面から厚さを読取るか、またはこれを撮影して標準スケールに合わせて厚さを測定する。とくに薄いメッキ層の場合は斜めに切断するとよい。研摩にさいしてメッキ層のだれを防ぐ目的で、当て金をあてたり、常温硬化性の樹脂に試料を理込む。また測定のさいメッキ層と素地の境界を正確にするために、適当な薬品を用いてエッチングを行なうとよい。鉄素地上のクロムまたはニッケルクロムメッキの場合は、硝酸―アルコール溶液またはピクリン酸―アルコールを用いる。
この方法で測定できる最低メッキ厚さは1〜2μである。


・弦測定法

砥石またはヤスリを用い、素地が露出するまでメッキ層を研摩して厚さを測定する方法である。すなわち、平面のメッキ層に対しては、半径の既知の砥石により、素地が出るまで研摩し、そのときの研摩された弦の長さを測定すれば、メッキ厚さは次式から得られる。

T=C2/8R ただし、C:けずられた弦の長さ R:砥石の半径
球状の被メッキ物に対しても、平ヤスリでメッキ層をげずりとり、同様に厚さが得られる


・陽極溶解法

これは試料を陽極にして電解し、メッキ層を溶解するに要した時間を求めて、メッキ厚さを決定する方法である。すなわち、試料の上に4.8o径の穴のある円形パッキンと、これよりやや穴の大きい円形のパッキンを重ね、その上にカップをのせる。この中に電解液を10t注入し、試料を陽極、カップを陰極として適当な電流密度として、電解開始と同時にストップウォッチを作動させる。極間電圧と時間の関係曲線をとる。溶解の終止点は急激に電圧が変化するので明瞭に察知できる。メッキ厚さは溶解時間から求めるものである。
この商品にKocour Meterがある。


・磁気を利用する方法

このものは磁化された鉄針先端がメッキ層を介して鉄素地と引き合うカが、メッキの厚さによって変化することを利用して、メッキ厚さを測定しようとするものである。
永久礎石で磁化された1本の鉄針と鉄素地の吸引力を利用したものがポケット型膜厚計である。


・インダクタンスの変化を利用する測定

コ型の鉄心に磁化線輪をまき、この線輪に交流を流し、鉄心を磁化させる。鉄心のコ型を測定しようとするメッキ面に接触させると磁気回路ができるので、磁化線輪のインダクタンスが変化する。このインダクタンスの変化の割合とメッキの厚さとの間には一定の関係があるので、この変化を測定することによりメッキの厚さを知ることができる。
この原理を応用したものにLeptskopおよびkett電磁微厚計などがある。


・高周波渦電流を利用する方法

コイルに高周波の電流を流して、これを測定しようとするメッキの表面に近づけると、メッキの表面には高周波の過流が生じる。この過流は、メッキ層を通して下地の表面まで達するようになる。この場合、コイルに流れる電流の周波数が低いほど金属を通しやすくなる傾向がある。このようにして生じた過流はコイルのインダクタンスを変化させる。インダクタンクの変化量は、メッキ層の厚さに応じて変化するから、この変化量を測定すれば、メッキ層の厚さを知ることができる。
この方法の特長とするところは

@素地およびメッキ厚の磁性に関係なく測定できる。
A測定がきわめて簡単で非破壊的である。
B被測定物の形状の影響がすくない。

しかし、短所は素地の皮膜の組合せに応じてそれぞれ関係曲線を求めなければならない。Dermitronはこの原理を応用したものである。


摩耗試験


・砥石類による試験

一般に砥石による摩耗試験は、一般の研削試験であるから、カタサの大なるものほど耐摩耗性がすぐれているという結果が得られるが、さらにもろさも加味される。したがって、カタサは大であっても、粒子があらくてもろいメッキの摩耗抵抗はこの試験では必ずしもよくないことが多い。


・相対摩耗の試験

この試験は軸に対する軸受、シリンダに対するピストンリングその他相互の摩耗の雰囲気を想定のもとにおこなわれるものである。


耐食性試験


・有孔度試験

クロムはきわめて耐食性の強い金属であるが、電着によって得られたクロムは小孔や割れ目が生じている。よってこのものが耐食性雰囲気に耐えるかどうかは、素地を十分に被覆しているかどうかを調べればよいことになる。もちろん、使用中における機械的損耗も考慮に入れる必要があるので、たとえ素地が完全に被覆されていたとしても、きわめて薄い層では長持ちしないことは当然であり、厚さ試験の結果も考慮して判断しなければならない。
有孔度試験には硫酸銅メッキ試験法がある。この試験は硫酸銅メッキ液(CuSO4 200g /l H2SO4 75g/l)中で、クロムメッキした試料を浸漬し、試料を陰極側につるしてクロムめっきした面に銅めっきを行なうものである。試料は切断などして素地がむき出しの場合は、その部分を塗料などで絶縁保護する。こうして低電圧のもとでめっきを行うと、銅はクロムめっき面に露出している素地(鉄鋼その他)へのみ析出し、クロム上には析出しない。したがって、有孔度を数量的に表現するには、一定条件のもとで流れた電流量(または電流密度)をとればよい。ここに用いる電圧はデリケートであるが、両極間に生じる逆起電力をうちけす最小の電圧を用いることが理想である。
例えば、陽極に52×34mm銅板、陰極に片面のみクロムめっきした直径15mm鉄板を用いた場合、0.3Vが都合のよいことを確認されている。
この試験で通電することが厄介ならば、めっき液中にただ浸漬するだけでもよい。ただ析出される銅はきわめて微細なので目視では判断としないから、顕微鏡的に観察する必要がある。
クロムめっきの小孔や割れ目を調べるのに硝酸蒸気による試験がしばしば用いられる。濃硝酸はクロムの表面に露出した下地の金属のみ腐食するので、クロム被膜の欠陥は容易に検出することができる。この方法は、試験しようとする試料を、濃硝酸を入れた容器にフタをすればよい。なお腐食を促進させるために温度は50℃に加温する。この場合、試験時間は50minまたはそれ以下で、非常に明瞭な小孔や割れ目が現れるものである。
フェロキシル試験は鉄素地上のニッケルークロムめっき規格にも採用されている。


・塩水噴霧試験

この試験は万能腐食試験法ともいうべく、めっき、無機皮膜および陽極酸化炭膜などあらゆる表面処理皮膜の耐食性の判定に利用されている。めっきでは工業用クロムより、むしろ一般の装飾および防食めっきの大気中における耐食性の評価に利用されている。
この方法は塩水噴霧の雰囲気に、試験しようとする試料を暴露させて、さびの生じるまでに要する時間、あるいは一定時間内にさびの発生する状態を調べて、その耐食性を判断する。 試験に必要な装置は噴霧室、塩溶液のタンク、圧搾空気の供給機、噴霧用ノズル、および加熱設備よりなっており、JISには試験装置その他について厳密な規定が設けられてある。腐食度の表示にはレイティングナンバー法が用いられる。


・酢酸酸性塩水噴霧試験およびCASS試験

近年、塩水噴霧試験の結果が実際の使用状態とかなり差異のあることがわかり、酢酸酸性塩水噴霧試験法が採用されつつある。すなわち酢酸酸性塩水噴霧試験法の腐食溶液が中性であるのに対し、この試験はpH3.2とする。pHの調整は酢酸を用いて行なうものである。上記溶液に対しさらに塩化第2銅を少量添加したものをCASS試験(Copper Acetic Acid Salt Spray)といわれている。
おもな試験条件は、5%塩水中に塩化第2銅0.26g/l、pHを酢酸酸性3.2とし、噴霧の温度を50±10.5℃とする。この試験は前記塩水噴霧試験装置を利用することができる。腐食条件が過酷であるため、試験時間がかなり短縮でかつ再現性もよい。


・コロードコード試験

この試験法はアメリカ、カナダにおいて冬期除雪に使用する化学薬品などによって生じる自動車部品などの腐食を加速再現しようとするもので、耐食性の泥をめっき面に塗りつけ、高湿の状態で腐食を促進させるものである。
腐食泥は次のようにして作られる。まず5g/l硫酸鋼溶液を7t250〜300tのビーカーにとり、5g/l塩化第2鉄を10cc加え、次に100g/l塩化アンモンを10cc加える。さらにカオリンを30g加えてよくかきまぜると泥状となる。
操作法は、この泥をハケを用いて円をえがくように試料に塗りつけ、ハケを一方方向に動かして泥を平らにする。そのまま1時間放置して乾燥し、温度43℃、湿度95〜99%の室内に入れて20時間保つ。その後、取り出してさびの発生状態を調べる。


・亜硫酸ガス試験

亜硫酸ガスは工業的雰囲気に含まれる腐食性因子の主要成分なので、これを加速させるために行なわれる。試験装置は、適当な大きさの箱(透明な合成樹脂など)の上にのせ、外部と遮断してガスもれのないようにする。そして箱の中に試料を入れ、一定濃度の亜硫酸ガスをふき込めばよい。箱内における亜硫酸ガスの濃度は、多少変化しても腐食にはあまり影響はないが、湿度が95%以下になると、耐食度がいちじるしく低下するといわれている。
試験条件としては、亜硫酸ガス濃度約1%(0.5〜2%)、相対湿度95%以上、温度は室温とし、時間は管理またはうけ入れの目的に行なうならば、24時間が適当であるといわれる。


密着性試験


・折曲げ試験

この試験は、種々のめっき規格にとり入れられ、MILにも採用されている。JISH8615では、試験を曲げ半径10mmの曲げ試験機または万力ではさみ、有効面を外側にして90°曲げる。そして、曲げられた個所を4倍の拡大鏡でめっきが素地よりはく離しているかどうかを調べるものである。
MlLでは試料を180°曲げ、これをもとに戻してから、めっき層のはく離のあるなしを調べることになっている。
曲げ試験は、めっきの密着性試験として一般的であるが、よく知られているように、本来の使命は材料のぜい性を判定するのがその目的である。この試験をめっき試料に利用したとき、外側のめっきは引張り、内側のそれは圧縮応力をうけ、外側に面するめっきはもろければ、ただちに割れを生じる。この際、密着性が悪ければ、めっきははく離するわけである。しかし銅めっきのように柔軟性をもち、展性に富む皮膜は割れを生じることは比較的少なく、また、たとえ密着性が悪くとも容易にはく離しない。よって、もろい金属ほどこの試験では、はく離しやすいということで、同じクロムめっきでも、カタサの大なるほど試験が苛酷になるわけである。
従って、めっきがリン片状あるいは、粉末状にはく離しているときに密着不良とみなすように注意が必要である。


・加熱試験

試料を加熱と冷却により、素地とめっき層の膨張の差を利用して密着性を調べるものである。
Marcovitchはめっきの表面が酸化しないよう油脂を用い、これを245〜260℃の間に加熱し、この中に試料を2分間浸漬し、次にケロシンの中に入れて急冷している。
この方法によれば、他の試験で密着不良のわからなかったものでも容易に検出され、一方、この試験で良好だったものは、その後に苛酷な試験を行なってもなんらの欠陥も認められなかったと述べている。


・砥石による研磨試験

現場向きの試験法であるが、JISにも採用されている。
試料を研摩盤にとりつけて、研削油を十分に使用しながら、次のような条件でめっき層を静かに研摩して、密着性の良否を調べる。

研摩砥石; 粒度60、結合度H−M
砥石の周速; 600〜2000m/min
切込深さ; 5μ以下

素地金属が露出するまで研摩したとき、めっき層は薄片となることなく、連結した表面を露呈するまで素地金属と揮然一体となっていなければならない。
なお、切れの悪い砥石あるいは目づまりした砥石を使用したり、切り込みが深すぎると、ひび割れを生じることがあるが、これは密着不良とみなさないことになっている。


・鋼球押込法

鋼球を試料の表面に垂直に押し込み、圧こんの周囲のめっき層の変化の状態を調べて密着性の良否を判定するものでJISに採用されている。
試験機はブリネルカタサ試験機がそのまま利用できる。
ChessinおよびPoorは、この試験でクロムめっきの密着性の良否は明瞭に判定し得られるとしている。用いる鋼球は直径1.56mmのもので、押込深さは0.7mmとし、次のような場合に不良とみなすようJISでは規定している。

@圧こんの周辺のめっき層がはく離している場合
A圧こんの周辺の円形がくずれている場合
B圧こんの周辺のもり上がりが特に大きい場合
C圧こんから放射状の明瞭な割れが多数認められる場合

しかし、圧こんの周辺におけるわずかなもり上がりや、細かい割れはたいていの場合に見受けられるから、密着不良と見なさないほうがよい。


・つき出し試験

工業用クロムのような厚めっきの密着性試験に次のような方法もある。
めっきされた反対側から直径0.257inのめくら孔をあげる。金属製台のうえに、孔を上に向けておき、径0.25inのロットを孔に入れる。水圧ジャッキでこの装置を引上げ、めくら孔の底にロットを通して底が突き破れるまで圧力を上げる。圧力はゆっくりと定速度で押しつける。鋳鉄やアルミ合金の試験片は破壊されたり、底辺の破壊部分にテーパーがついたりする。顕微鏡で破壊片および本体の破壊部の面を調べることにより、密着性の良し悪しの分類ができる。
密着性の判断は、破壊によって生じた孔の周辺の検査によるもので、界面がはっきり離脱している場合は密着不良とする。顕微鏡観察によって素地金属およびクロムめっき内に分離が生じている場合は、密着性良好とみてよい。


・せん断による試験

Zmihorkiは16mmの丸棒に部分的にクロムめっきを施し、これをダイスに押し込み、せん断密着力を調べた。この場合の密着力(R)は次の式で表わされる。

R=P/πdS P;加えた力(Kg),S;クロムめっきリングの幅(mm),d;鋼ロッドの径(mm)

この結果では、素地金属のカタサが増すに従って、密着力は減少することを認めている。
すなわち、ブリネルカタサ260の鋼を用いた場合のクロム密着力は65kg/cm2であったが、カタサ620のものでは55kg/cm2に低下したといわれる。


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