200X年、札幌国際空港にて

                            
    新千歳空港(http://www.new-chitose-airport.co.jp/main.html)が、滑走路一本で開港してから、すでに15年が経とうとしている。その間、国際エアカーゴ、ハブ空港と、様々なイメージだけが膨らんだ。しかし今のところ、まさにイメージだけに終わっている。

 そのイメージを、より具体的にとらえてもらえるよう、近い将来の姿を思い描いてみた。新千歳に限らない、筆者の理想とする空港の姿を織り込んでみた。

 フィクションの部分と、それを保管する部分に分かれている。なお新千歳の名称はそのままとしているが、空港の正式名称は「札幌国際空港」とした。ポートセールの上でも、大都市札幌の名前を利用しない手はないと考えている。したがって「札幌国際空港〜新千歳空港〜」としている。もちろんこれは国土交通省(http://www.mlit.go.jp/)の所管によらない名称である。


TYO(HND)LON(LHR) NH9501
 時刻はまもなく午後7時になろうとしていた。羽田空港の国際線乗り継ぎカウンターで、T氏は、ロンドン行きの搭乗券を受け取った。ANA9501便、札幌新千歳経由のヨーロッパ便だ。経由便とあるが、実際には新千歳までは、国内便、新千歳から先は、エアドゥ(http://www.airdo21.com/index.shtml)とのコードシェアによる国際便だ。


 CTS TERMINAL
   同じ頃、札幌国際(新千歳)空港のターミナル3と名付けられた、コミューターターミナルにI氏の乗ったHAC(http://www.hac-air.co.jp/)×××便のSAAB340が函館から到着した。隣のスポットでは、釧路から着いたばかりのDASH8−400から降りた利用客が、オープンスポットをターミナルへと歩いている。

   このコミューターターミナルは、半円形スタイルのターミナル1(http://www.dfwairport.com/)とは、道路や駐車場ビルを挟んだ場所にある。今ではコミューター機は、すべて自衛隊側にある滑走路(36R/18L)に離発着する。
再び、防衛庁側滑走路を開放することについては、かなりの曲折があったが、民間側滑走路を利用する大型機と分離し空港周辺の安全性を高めることを主眼にコミューター機に限り、防衛庁側滑走路の使用が認められた。

ターミナル・コンセプト

 最低限必要なターミナルは、国内線用、国際線用、そしてコミューター路線用ターミナルだ。このフィクションでは、従来からある半円形のターミナルを、ターミナル1。このターミナル1に隣接して建設された国際線専用を、ターミナル2。そしてコミューター線専用のターミナルをターミナル3と呼んでみた。

自衛隊側滑走路のコミューターへ開放を
   文章の中では、コミューターとはSAABDASH-8CRJ100クラスの50〜70席前後の航空機を指している。コミューターという呼び方そのものが、今となっては定義もあいまいで、そぐわないものとなってしまっているが、この文章の中ではあえて、小型機による運航をコミューターと呼んだ。
これらの小型輸送機は、特に北海道においては益々活躍の場が広がることと思われる。道内路線はもとより、東北方面の路線などについても、多くの路線はMDクラスのジェットでは、ほとんど採算が取れていないと見られる。
新千歳〜釧路などは機材を小型化することによって、運航頻度が上がり、利便性は高まった。またプロペラ機においても、巡航速度も上がり、所要時間は、短距離区間においていは、ジェットと遜色ない。さらにジェット偏重とも言える、プロペラ機に対する利用者の偏見も、新型機の導入で、薄れてきている。今後は、全面的な機材置き換えだけではなく、時間帯によって、ジェットとプロペラ機を弾力的に運用するなどのシーンも増えるに違いない。
   これらサービス面やコストの面から、04年では一日20便に満たないプロペラ機での離発着は、今後ますます、増加することは間違いない。安全面での分離策が、現実味を帯びてくるのは必至だ。訓練期間や時間帯などを避けるにしても、防衛庁側R/Wの解放を視野に入れた論議を始める必要があるのではないか。空域をコントロールする管制隊にとってもリスクや緊張度の軽減につながることは間違いない。


      コミューター・ターミナルの必要性
    防衛庁側滑走路の使用に伴い、コミューター・ターミナルの必要性についても言及したい。このフィクションでは、現在の80番代スポット付近、現ターミナルとは駐車場を挟んだ、反対側になる。そこに作られた、こじんまりとした専用ターミナルを想定している。
最小限のスタッフで運用しなければならないコミューター航空においては、乗員が地上のスタッフを兼ねることは常識、その効率の良いスタッフ繰りが、運航コストを最小限に抑えなければならないコミューターには欠かせない。
しかし現在の新千歳では、ターミナルの入れ物は大きく、利用者もバスを使ってシップサイドまで移動しなければならない。バスを使わなければならないことのコスト、さらに、シップとターミナルが離れていることで、地上係員と乗務員を兼ねる、1人2役は叶わない。
さらに利用者にとっては、バスを使わなければならない不便さに加えて、ターミナル配置上の不合理が、運賃に跳ね返ってくる可能性もある。
コストを抑えたコミューターの利点を遺憾なく発揮してもらうためには、専用のターミナルが欠かせない。ターミナル3の配置は、現ターミナルの対面という理想的な位置、この面からも36R/18Lの解放を望みたい。
ただし、いくつかの問題点はある。時間輸送量に弾力性を持たせることによって、中型ジェットとプロペラが混在する路線が出来てしまう。フライトによってターミナルを分けることは不可能で、これについてはランプバスを利用しなければならないケースが出てくる。
またプロペラ機を使った国際線については、ターミナル3でのハンドリングは不可能と見る。

TERMINAL CONNECTION

 I氏は、目の前のコミューターターミナルに歩いて入ると、そのまま地下の動く歩道にのり、国際線のターミナル2へと向かった。国内線専用となった半円形のターミナル1ともども地下を長い長い動く歩道が続いてる。上空から地下を透視すると、それぞれのターミナルを結んでいる地下道が、まるで直角三角形のように見えるはずだ。
当初、ダラスやシアトル(http://www.portseattle.org/seatac/)の空港などにあるような、各ターミナルを結ぶ電車も考えられたようだが、結局はこの動く歩道に落ち着いた。駆け足速度で動くファースト・レーンと一般的な歩く速度のスロー・レーンがあって、所々に乗り換えられるようなポジションが設けられている。
長い地下道だが、天井には幻想的な光が走っていたり、常に情報を送っているTVモニターが目に入り、飽きさせない。どうやらこれはシカゴ(http://www.ohare.com/)の空港を真似たらしい。


       PARKING BUILDING
    F氏は、T氏同様にヨーロッパ行きのエアドゥにのるため、自家用車を駐車場ビルに乗り入れた。同行する一家はすでにターミナルの前で、荷物ともども降ろしてある。駐車場ビルはターミナル1.2の前にそれぞれ建てられているが、7日以上利用するロングターム専用階に入れると、1日300円ほどで済む。
地下に降りて、各ターミナルを結ぶ動く歩道に乗ろう。少し早く着きすぎた。出発までまだ3時間以上もある。エレベータに乗ると、顔を火照らせたアメリカ人だろうか、上の階から降りてきた。トランジットを利用して、屋上にある、世界の空港初の天然温泉SPAへ行ってきたのだろう。空港SPAは、2005年に開港した中部国際空港(http://www.centrair.jp/index1.html)にも設けられたが、こちらは天然で、広い露天風呂も売り物だ。外国人の利用も考慮して、水着入湯ゾーンもあるのだが、最近は外国人も掛け値ナシの裸の付き合いゾーンの利用者も増えているとか。


FROM SAKHALIN
   そんなことを考えていたF氏とすれ違ったのは、実はオランダの本社へ出張途中の英国人O氏だ。O氏は昼過ぎにHACの定期便でユジノサハリンスクから到着している。
O氏は、国際線ターミナルにあるトランジット客用SPAを嫌って、一度入国し、もっと大型の駐車場ビルのSPAに行って来たのだ。そのために夕刻の便ではなく、一便前のHACにしたのだから。
   サハリン(http://www.hit-north.or.jp/)は、エネルギー開発が本格化してから北海道との間の人や物の行き来が急激に増している。HACだけでもQ400で毎日2便、サハリン航空(http://www.kisara.com/)も、ロシア製の第三世代ターボプロップ機、IL−114かB737で毎日1往復をしている。
サハリンと北海道の間が、これだけ人の行き来が多くなったのは、エネルギー開発に携わる、欧米人はもとより、北海道に限りロシア人のビザが免除されたからに違いない。

  TERMINAL 2

  国際線専用のターミナル2は、ターミナル1よりは小ぶりなものの、A380
http://www.airbus.com/dynamic/about/index_h.asp)にも対応できるものも含め、10バースのスポットを持ち、年間500万人の旅客を裁く能力を持っている。

  新千歳の特徴でもあった半円形のターミナルコンセプトは捨て、リニアタイプのターミナルとなった。多くの国際線ターミナルと同様1階が到着、2階が出発で、広い出発ターミナルにはアイランドタイプのカウンターが4バース備えられている。
随所に緑が配置されたターミナルには、所々に、ターミナル1同様、往年の名機のレプリカが置いてあり、利用者、特に子供達を楽しませている。
   秋田からやって来たM氏一家は、午後9時発のケアンズ行きに乗る予定だ。秋田から到着したのは夕刻だが、新千歳はチャンギ空港(http://www.changi.airport.com.sg/changi/index.jsp)でのシンガポール航空同様、当日のフライトなら、どの航空会社でも、なんどきでもチェックイン可能だけに、バゲージを預けて身軽になって夕食を楽しんだ。そろそろ7時、ゲートを通ってDUTY FREEをながめてみるのも良い。レストランやショップに限らず、新千歳のエンターティメント性は国内の空港屈指だ。

利用者本意の施設とサービスを
    新しい国際線ターミナルは、年間処理能力500万人を目指し、アイランドタイプのチェックインカウンターが4、リニアタイプの搭乗ゲートは10持つ。トランジットモールや、トランジットレストルームなど、利用者のための施設は充実が必要。

利用者にとっても航空会社にとっても安全な空港が絶対条件となる。
    〜駐車場ビルの整備を〜

航空旅客のパークアンドライドは、必要欠くべかざる物だが、現在の駐車場の能力

は、すでにパンク状態といえる。冬の利便も考えると、駐車場ビルの整備が早急に求められる。

駐車場にはロングタームの考えを取り入れ、長期の利用者にはより使いやすい料金が

必要であろう。
    アムステルダムのスキポール空港(http://www.schiphol.nl/)には駐車場ビル内に、車のショールームも設置されている。新千歳の駐車場ビルにもエンターテイメント性を求めたい。それは日本の空港でははじめてのパチンコ屋。

フランクフルトのアムマイン空港
http://www.frankfurt-airport.de/b2c/livecontroller/en/index.jsp?sprache=en&teaserarea=homepage)には映画館があるが、映画は長すぎで、馴染まない。自分で好きなだけの時間がつぶせる、世界のエンターテイメントパチンコ屋は空港での時間調整にはもってこい。
   もうひとつは、日本の誇る「銭湯」だ。空港利用者はもちろん、地元の人もいつでもつかえる、世界初の「エアポート・ホットスプリングス」。駐車場ビルの上階と屋上を使って、お風呂につかりながら飛行機をながめることが出来る空港お風呂エンターティメントだ。

〜現有国際線施設にカンフルを〜
    新千歳の国際線は、ソウル便を事実上の起源とするが、02年には、年間利用者50万人を突破する伸びとなっている。しかし現在の国際線施設は、利用者にとっても、航空会社にとってもストレスのかかる誠に貧弱な施設といえる。
空港における利用者への最大のサービスは何か。旅行者に安らぎの空間を提供することはもちろんだが、最大のサービスは待たせないことだ。世界に名だたるシンガポールのチャンギ空港は「列が出来ないこと」をテーマにしている。どんなに深夜、早朝に到着しようが、CIQ、セキュリティ・チェックには、長い列はない。
新千歳の現在のファシリティーは劣悪といえる。余裕の空間を持ったソウル仁川
http://www.airport.or.kr/Jpn/home.jsp)や香港新空港(http://www.hongkongairport.com/eng/index2.jsp)から飛んできた客が、新千歳の入りと、出で受ける洗礼は長い列だ。北海道の印象はいかばかりかと心配になる。道がポートセールに力を尽くしても、航空会社は、現在の施設を見ると就航に二の足を踏むことは、想像に難くない。
福岡、名古屋の国際線ターミナルに匹敵するターミナルが緊急に必要だ。しかし数年、この施設で乗り切らなければならないとすると、チェックインを専門の会社一社に任せ、カウンターをコモンにして減らしたうえで、セキュリティー・ゲートを拡大するなどのカンフルが緊急に必要だ。


       INTERNATIONL FLIGHT
    午後7時、JALのホノルルゆきのボーディングが始まった。A氏ファミリーは、軽い下り坂となっているボーディング・ブリッジを通って、767の機内へと向かった。
このボーディング・ブリッジのアイディアは、かつての香港啓徳空港のものだ。ブリッジのターミナル側の接続部分が、1階フロアと2階フロアに上下に動くシステムとなっている。このため利用者は、飛行機へ乗る時も、降りる時もいずれもゆるい坂を降りることとなる。しかも出発客と到着客が完全に分離されるため、セキュリティ上もこの上ないシステムだ。

  EUROPE RELAY EXPRESS
    ロンドン行きAD501便のカウンターが忙しくなってきた。ADのヨーロッパ便は、深夜に札幌を出て、ヨーロッパには早朝の到着となる。成田にはなくなってしまったナイトフライトのロンドン便だ。

 T氏が利用する、羽田発のロンドン行きは、前述の通り、新千歳乗換えADとANAのコードシェア便だ。札幌午後11時発のAD501は、午後8時30分羽田発のNH9501便でもある。CIQは新千歳だが、乗り換え時間を1時間ジャストとしスムーズなコネクションを計っている。

 東京での仕事を終え、羽田を夜発ち、ロンドンには翌日の朝6時前に到着するANAヨーロッパ・リレー・エクスプレスは、コストはエアドゥのだけに、ビジネスクラスも料金が安く設定されていて、出張族には人気のフライトになりつつある。

エアドゥの新鋭機、といってもANAとの共通運用機だが、B777の4割近くがビジネス設定となっている。
さらにツアー客も多く、北海道だけではなく、広く首都圏からのツアー客を取り込んでいる。
またビジネスは、サハリンからの客にも結構な人気を博している。サハリンからのモスクワ便は、モスクワ到着が夜となるため、ヨーロッパ便のコネクションが、その日につながらないことが多い。またソウル乗り継ぎより時間セーブにもなる。その点、札幌乗換えは、ユジノサハリンスクを夕方出て、札幌でスムーズな乗換えが出来る。
 羽田は、国際線が入ったとはいえ、アジアなどの近距離に限られている。長距離便は、依然として成田国際空港頼りだ。エアドゥの機体で飛ぶ、リレー・エクスプレスは、ヨーロッパだけでなく、ニューヨークとロサンゼルスへのアメリカ・リレー・エクスプレスも人気だ。

新千歳の国際線は
   文中のヨーロッパ線、ロンドン、アムステルダムを想定、2地点合わせてヨーロッパに週7便。アメリカへはニューヨーク、ロサンゼルス合わせて週7便。広島ないしは福岡を経由するバンコク便、その他は、現行の路線と同じか。


       エアドゥの国際線進出を
   エアドゥが再び「道民の翼」のタイトルを取り戻すためには、北海道発の国際線に自ら光を当てることが必要だ。新千歳の国際化は北海道に大きな利益をもたらすことは言を待たない。これをエアドゥがリードすることで、道民のエアドゥへの期待度は大きく変化する。エアドゥにとってはイメージアップにつながる。ANAとの提携を初めて飛躍へのプラスとして利用できる。
海外のファシリティーはANAのそれを利用するだけに、エアドゥとしての投資は必要ない。さらに運航はエアドゥのコストだ。
ツアーももちろんだが、エアドゥのコストで、独自のビジネスクラスのサービスを作り上げることが可能だ。フィクション部分にある通り、首都圏の利用者を取り込むことは十分可能。
サハリン開発に関わるビジネス客のKLM乗り継ぎは、ほぼ定着するところまで行っていた。KLMなきあとのサハリン〜ヨーロッパは、モスクワ経由かソウル経由が主流になりつつある。この需要を取り戻すのはエアドゥの責務だ。
   国際線でもハブアンドスポークの考えは廃れている。航空機の航続能力の伸びと伴に、2地点間を直接結ぶ路線が増えている。しかしこれらのフライトは発着時間は似通っており、それ以外の時間に出発、到着したい利用者は、時間を合わせるしか方法はない。
それだけに24時間空港の利点を最大に生かし、首都圏や関西圏を夜にピックアップし、これをリレーして海外に運ぶ、いわば、時間のニッチを行くフライトを設定する
もちろんサハリンからの集客を視野に入れてのダイヤでもある。

 この他新千歳の将来については、札幌の空港としてのアイデンティテイをどう発揮するべきかなどを中心に、書くべきことはまだたくさん残っている。以下のテーマを次としたい。

 札幌エアポートリムジンの開発を

 エアポートツアーを

 株式会社「札幌国際空港」。北米、欧州航路に近い、は何の売りにもならない。

 丘珠空港をどう生かす

 ポートセールの決め手は「安全な空港」

乗客には厳重な警備を感じさず、航空会社には、安価でしっかりしたセキュリティを

以上