平成9年(ネ)第5746号 損害賠償請求控訴事件

          控 訴 人      耿 諄 外10名
        被 控 訴 人      鹿島建設株式会社

和 解 条 項


一 当事者双方は、平成2年(1990年)7月5日の「共同発表」を再確認する。 ただし、被控訴人は、 右「共同発表」は被控訴人の法的責任を認める趣旨のものではない旨主張し、 控訴人らはこれを了解した。

二 被控訴人は、前項の「共同発表」第2項記載の問題を解決するため、 花岡出張所の現場で受難した者(以下「受難者」という。) に対する慰霊等の念の表明として、 利害関係人中国紅十字会(以下「利害関係人」という。) に対し金5億円(以下「本件信託金」 という。)を信託する。 利害関係人はこれを引き受け、控訴人らは右信託を了承する。

三 被控訴人は、本件信託金全額を平成12年12月11日限り 利害関係人代理人弁護士新美隆の指定する銀行預金口座に送金して支払う。

四 利害関係人(以下本項において「受託者」という。)は、 本件信託金を「花岡平和友好基金」(以下「本件基金」という。)として管理し、 以下のとおり運用する。
1 受託者は、本件基金の適正な管理運用を目的として 「花岡平和友好基金運営委員会」(以下「運営委員会」という。)を設置する。
2 運営委員会は、控訴人らが選任する九名以内の委員によって構成されるものとし、 委員の互選により指名される委員長が運営委員会を代表する。 ただし、被控訴人が委員の選出を希望するときは、 右委員のうち一名は随時被控訴人が指名することができる。
運営委員会の組織及び信託事務の詳細は運営委員会が別に定める。
3 本件基金は、日中友好の観点に立ち、受難者に対する慰霊及び追悼、 受難者及びその遺族の自立、介護及び子弟育英等の資金に充てるものとする。
4 受難者及びその遺族は、第二項記載の信託の受益者として、 運営委員会が定めるところに従って本件信託金の支払を求めることができる。
5 受託者は、受難者及びその遺族に対して前号の支払をするときは、 本件信託金の委託者が被控訴人であること及び本件和解の趣旨について説明し、 右支払を受ける者から本件和解を承認する旨の書面二通 (本人の署名又は記名押印のあるもの)を取得し、 そのうちの一通を被控訴人に交付する。
6 本件借託金の支払を受ける遺族の範囲については、 遺族の実情に照らして運営委負会が定める。
7 運営委員会は、受難者及び遺族の調査のために、本件和解の趣旨について、 他の機関、団体の協力を得て周知徹底を図るものとする。
8 本件信託は、その目的を達したときに運営委員会の決議により終了する。 その場合の残余財産の処分方法は運営委員会が定める。

五 本件和解はいわゆる花岡事件について全ての懸案の解決を図るものであり、 控訴人らを含む受難者及びその遺族が花岡事件について全ての懸案が解決したことを確認し、 今後日本国内はもとより他の国及び地域において一切の請求権を放棄することを含むものである。
利害関係人及び控訴人らは、 今後控訴人ら以外の者から被控訴人に対する補償等の請求があった場合、 第四項第5号の書面を提出した者であると否とを問わず、 利害関係人及び控訴人らにおいて責任をもってこれを解決し、 被控訴人に何らの負担をさせないことを約束する。

六 控訴人ら、利害関係人と被控訴人との間には、 本和解条項に定めるもの以外に何らの債権債務が存在しないことを相互に確認する。

七 訴訟費用及び和解費用は第一、二審とも各自の負担とする。

八 本和解は、日本語版をもって正文とする。


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