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第4部 光芒の果て(7)

 光代からの電話であった。
「昨日はどうもご馳走様。由利ちゃん,まだ一緒なの?」
光代は機嫌が良かった。
「いや,たった今,帰ったところだ」
朝里には急速に眠気が襲っていた。
「へぇー帰ったの。まだ一緒かと思ってた」
「やる事やったし。時間が持たなくなっちゃって」
「朝里さんらしくないわね,もっと誠意を見せなくちゃ」
「やっぱり,天の川の向こうとこっちという感じなんだよな」
「後で後悔するわよ」
 朝里は光代とおしゃべりするより,少し横になって寝たかった。
 話を切り上げるタイミングを探したが,光代は饒舌で止まらなかった。
 光代の電話は続く。
「朝里さん知っている?由利ちゃんはね,ケイサンフなのよ」
「ケイサンフ?」
朝里は事態がよく飲み込めなかった。
「由利ちゃんはね,出産経験があるのよ。お嬢さんがいてね,今度,幼稚園にあがるんだって」
「...」
「二十歳のころ,付き合っていた男(ひと)がいて,結局,別れたんだけれど,その人の子供なの,結婚して離婚したのか,未婚の母なのか知らないけど」
「...」
「由利ちゃんに子供がいるなんて,想像してなかったでしょう。スタイルがいいから子供産んだなんて信じられないわよね。訳ありのお嬢さんだと思っていたんでしょう。違います?」
「...」
「由利ちゃん,おっぱい強く揉んでもらうの好きだったでしょう。経産婦というのは授乳経験があるから,おっぱいが柔らかいのよ。子供を産んだことのない女は,乳房が硬いから痛がる子が多いの」
「...」
「十七万円の訳も聞いたのよ。教えて欲しい?」
「...」
朝里は携帯を持っている腕から,力が抜けていくのを感じた。光代の声は細くなった。 同時に,朝里の由利は,彼方の遠くへ去っていった。

                − 17万円の女 完 −


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