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第4部 光芒の果て(2)

 由利と光代は,女性同士でも泊まる事が可能な新宿のシティホテルへ行く事になった。
 その後,由利と交渉し,朝里は鴬谷のホテルへ先着し,由利と光代が終わるのを待つ事になったわけである。
 もちろん,今回は携帯をつないだままにするという事はないので,由利と光代の間で何が行われるかは,朝里は知るすべはない。
 朝里は一眠りしようと思ったが,自分と情交を持った女達が会っており,しかもそれはお茶を飲むといった話ではない,そういう思いで気が高ぶり眠る事はできなかった。
 彼女たちはどうしているのか。2人の顔や体が目に浮かぶ。
 数時間前には,彼女たちと会話し,体に触れ,あまつさえ朝里の痕跡を彼女たちの体内に残しているのだ。
 単に会話を楽しんでいるだけかもしれないが,乳繰り合っているという事もあるし,激しい情愛を交わしているかもしれない。
 もしかしたら,朝里をさかなにして盛り上がっているかもしれない。
 2人の女をうまく御したつもりが,逆に朝里だけが除け者にされたようになってしまって,空しさを感じるとともに,女というのは恐ろしいものだと思った。
 その一方で,訳知り同士の女が,仲睦まじく,抱き合っているさまを想像するのは楽しい事でもあった。
 由利が見知らぬ男に陵辱される事がなくてよかった,という思いも強かった。
 朝里が気持ちの整理を付けきれず,感情の高まりを押さえられないでいるときに,携帯が鳴り響いた。
「おはようさん。光代です」
光代の声は爽やかであった。ずっと由利と一緒だったはずだが,十分に睡眠をとり,爽やかに目覚めたという感じの声であった。
「終わりましたか」
朝里は平静を装って返事をした。
「不機嫌な声ですね。待ちくたびれましたね。由利さんは,今,そちらに向かっていますから」
朝里は由利がこちらに向かっている聞いて,気持ちが落ち着いた。
「もう,由利とは別れたの。君はこれからどうするの」
「私はね,ここで一眠りしてから,仕事に出かけるわ。由利ちゃんたら,思いっきり激しかったのよ」
光代は思わせぶりな事を言って,朝里を挑発した。
「どんな風だったか,ぜひ聞かせて欲しいな」
朝里は興味が湧いた。
「それはこの次までにレポートにまとめておくわ。それより,由利ちゃんに問い詰めてご覧なさい」
光代は軽くはぐらかした。
「じゃあ,そうしてみよう。他に言いたい事は」
朝里は,これ以上,話をしても実りがないと考え,打ち切りにする事にした。
「知ってた?由利ちゃんの車,アストロなのよ」
 アストロを乗り回す女が,一晩に17万円稼がなければならないというのは,確かに奇異な話である。
 しかし,今晩起こった事は,すべて奇異な話ばかりだ。そんな現実のあとでは,大して驚く話ではなかった。
「ふうん,そうかい」
朝里は気のない返事をした。
「もう,浅里さんたら,気がないのね。由利ちゃんがドアをノックするのを今か今かと待っているんでしょう。じゃあ,電話切るからね。朝里さんも,由利ちゃんとの事を教えてくれなくちゃ駄目よ」
電話はそこで切れた。


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