この国
「この国」とはどこの国か

 最近,日本のことを「我が国」とか「日本」とか言わないで,「この国」と表現する人がいる。私は気に入らない。
 古くは,司馬遼太郎の著書に「この国のかたち」というのがある。しかし,これは多少許せる。なぜなら,そこで扱っているのは,現代の日本だけではなく,近世の日本も扱っており一口で日本と言っても,明治期と現代では一括りに括れないから,「この国」と表現したのだろう。
 政治家では武村正義が新党さきがけ時代に「この国」を連発していた。彼が「この国」という対象は「現代日本」である。
 中央公論('98/2)にも,田原総一郎が「この国はどこへ向かうのか」という文章を書いている。
 なぜ,「この国」なのだろうか。
 「この」は英語で習うように。近くのものを現す。恐らく,「この国」と表現する人は,「日本」から少し距離を置き,客観的にものを言っているのだということを強調したいのだろう。

 成田に着いた外人が「この国」というなら話は分かる。
 「この国」と発言している人は,紛れもなく,日本に住む日本人である。私は日本のことを「この国」と言われると,お前は日本人でないのかと言いたくなる。

 日本人が「日本」のことを「この国」というのは止めようではないか。


暗視装置に戻る
花雀の館に戻る