ゲーム開発余話(1)
ゲーム開発余話(1)
− 花雀の個人的体験やユーザさんのレポートなど −

PC-8001購入記(1)【'96/03/17】
PC-8001購入記(2)【'96/04/20】
ゲームパワー(1)【'96/03/20】
ゲームパワー(2)【'96/03/20】
ソフトのコピー【'96/03/17】
花雀の由来【'96/03/17】
最高齢ユーザと最年少ユーザ【'96/03/20】
近所のユーザと遠くのユーザ【'96/04/14】
昆明のバックドア【'96/05/23】
公用封筒【'96/07/31】
カナダからのメール【'96/09/01】
牡丹に蝶【'96/12/09】
ソフト開発事始め(1)【'97/06/22】
ソフト開発事始め(2)【'98/06/27】
ユーザ'99【'99/07/07】


●PC−8001購入記(1)('96/03/17)

 1980年のお話です。当時,日なが一日,電卓をたたく仕事をしていた花雀は,世の中にパーコン(当時はこう呼ばれていました。パーコンでは安っぽいので,パソコンにしようとしたのはNECです。正しい決定)というものがあって,計算も出来るらしいという話を聞き込んで,何とかそれを使いたいと思いました。
 当時,私の周りにあったのは,シャープの関数電卓,256ステップまでプログラムの組めるHPの関数電卓,同じく1000ステップまでプログラムの組めるCanonの100万円もした,SX1000という計算機,そして1000x1000の配列をいくつか使うときは,コモンにしないと動かなかった某社のホスト計算機でありました。
 決断するまでは大変でした。今でこそパソコンの性能は分かっているし,応用ソフトもそれなりにありますので,投資に対してどのような見返りがあるのか判断は可能ですが,'80年当時は参考にすべき本もなく,頼れる人もなく,何もかも分からない時代でした。しかも,16K(Mの間違いではないですよ)のパーコンが17万円もしたわけです。
 買ってみて使いものにならなかったらどうしよう。まさに,清水の舞台から飛び降りる心境でした。
 私は,今はT-ZONEになっているトヨムラという店に行きました。そこにはキーボードを少し分厚くしたようなNECのPC-8001とシャープのMZ,Appleとコモドールという外国製のパーコンが置いてありました。パーコンの知識など全くなかった私は,うろうろと店内を何周もして,逡巡していました。大売出しのAppleがいいのだろうか,CRTの付いているMZがいいのか,さあ分からない。困った。悩みに悩んだ。
 思い切って,店長さんに聞きました。
 「私は何を買ったらいいのでしょう」
 店長の答えは明確でした。新しく出たPC-8001を買いなさい。絶対これがいいですよ。自信に満ちたお答えでした。あのとき大売出しに負けてAppleを手にしていたら,全く別の人生を歩んでいたでしょう。そういう意味であのときの店長さんに感謝しています。
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●PC−8001購入記(2)('96/03/17)

 何日か後にPC-8001を手に入れましたが,CRTは1週間後でないと入荷しないという。因みにグリーンモニターという,白黒のもので4.5万円しました。
 では,どうするのだと聞いたら,RFモジュレータというのを貸すので,TVにつないで使っていて欲しいという話でした。
 で,TVにつないでみるのですが,タダだけあって同期が合わなくて画面が流れる。やっとの思いで,
 print "J"
と打ったら,Jという文字が映りました。感動でした。家人にこの感動を興奮して伝えたのですが,20万も出して買ったキカイでTVにJが映ってそれがどうしたというのが,反応でした。当時でも,1万円もしない値段でTVゲームが買えて,テニス(といってもボールを四角いラケットで打ち合うだけのものですが)ゲームなどが遊べたのですから無理もないことです。

 さらに何日かたって,前述の100万円のプログラム電卓で計算していたの同じ事を,今は懐かしいN-BASICで,打ち込んで計算させてみたのです。結果は驚異的でした。100万円のプログラム電卓の半分以下の時間で計算が完了してしまったのです。しかもプログラム電卓は1行しか表示できないのに対し,我がパーコンは画面一杯に入出力が表示が出来たのです。まさに望遠鏡で見ていた世界を,肉眼でみるような相違でした。

 私はその瞬間に,これからはパソコンの時代になると確信したのでした。
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●ゲームパワー(1)('96/03/20)

 ゲームソフトの開発をしていると,作者である本人も気が付かない,ゲームの力というものを痛感させられることがあります。
 東西麻雀のユーザの方で,ある重度心身障碍者療護施設のおじいちゃんの園生の方がいっらしゃいました。
 そのおじいちゃんには大変に東西麻雀を気に入っていただきまして,職員の方が,パソコンに向かう時間の制限を行ってるにも関わらず、ヒマさえあればディスプレイの前に座って楽しんで居られたそうです。その方が亡くなられたときに,職員の方から,納棺の際に東西麻雀の入ったFDを一緒に入れてあげたいので,許可して欲しいという,メールを頂きました。私はもちろん同意しました。
 東西麻雀で遊んでいただくことによって,そのおじいちゃんの最後の何ヶ月かが,少しでもより楽しいものになったとしたら,それは作者冥利に尽きるものです。
 故人と冥土の旅へ一緒に旅立ったソフトというのは,そうたくさんはないと思います。
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●ゲームパワー(2)('96/03/20)

 ある身体障碍者療護施設で,園生の知的リハビリ訓練に「花札(八八,馬鹿っ花)」を導入したところ,「皆なにがしかADL(日常生活動作)の向上が見られ、生活意欲がアップしてきた」というメールを頂いた事があります。
   ◆   ◆
 また,事故のため頸椎に損傷を受けられた方で,両手両足が不自由になり,昔は好きだった麻雀も出来なくなって残念に思っていたところ,「南北麻雀」をお知りになり,重度障碍センターの職能訓練室のネットワークに接続された数台のパソコンを使って,楽しんでいるという手紙を頂きました。
 300字ほどのお手紙ですが,これを打つだけでも大変な労力であったとろうと思うと,目頭が熱くなりました。と同時に,私のソフトを楽しんで頂けて大変うれしく思いました。
   ◆   ◆
 障碍者の方で私のソフトで遊んで頂いている方は,割と多いようで,ほかにもALS(進行性脊索硬化症)の患者さんからも,楽しんでいるというメールを頂いております。
 重病の患者さんと言っても,一日中病気と戦っているということでもなく,意識がしっかりしていれば,ときには息抜きの楽しい時間も必要だと思います。
 市販のゲームはキー入力の早さを競うようなものが多く,健常者でも操作が難しいのですが,その点,私のソフトはそんなことはありませんので,ご利用いただけるのだと思います。
   ◆   ◆
 ある自動車会社の情報システム関連の方から,東西麻雀を複数購入するときにディスカウントサービスがあるかというメールを頂いた事があります。
 その方によれば,「リストラで中高年の方にパソコンを勉強してもらわないとならないのだが,マウスの使い方も分からないで困っていた。ところが,東西麻雀を半日もやらせておくと,何も教えなくてもマウスの使い方やウィンドウの操作の仕方を覚えてくれることが分かったので,導入教育に使いたい」と言うことでした。
 花雀はディスカウントには応じますと申し上げたのですが,結局,個人的に三本ほど,お買いあげになられただけで,話は終わってしまいました。
 しかし,リストラにも役に立っていると言うことが分かったのは収穫でした。
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