電波時計キット

秋月のキットの中でも、興味深い電波時計キットを製作してみました。

最終更新日 2001.4.29

回路構成

自分が一番興味があるのは受信回路です。このキットの受信回路は、電波時計用の専用受信IC(U4226B)(右の写真)を使っています。ですから、受信できて当然・・・ ということで、イマイチ面白みには欠けますが、このICは、秋葉原で簡単に買えるというものではありません。面白みは無くても確実に動くのは安心です。

そして、もう1つ興味のあるテーマはバーアンテナです。40KHz用のバーアンテナなんて、専用受信IC以上に入手は難しいでしょう。もっともこれは、色々代用ができますので面白いテーマの1つです。
キットで使われているバーアンテナは(下の写真)のような構造をしています。40KHzにしては太めの電線で少な目の巻数です。コアも昔の6石スーパーラジオで使われていたような、今見ると少し大きめの形状です。しかし、紙製のボビンとかではなく、プラスチック製で自作で手巻することを前提に作ったような立派で高そうなボビンになっています。

受信した信号は、PIC16F873で処理します。表示は液晶キャラクタ・ディスプレイを使用していて、時計といった感じではなく、沢山付いたLEDを相まって、何かのシーケンサのような趣です。

特徴や機能

このキットは、実用的な時計としてではなく、教材として企画されたと説明書の書かれています。確かに、時計にはない機能が色々と付いています。

特徴的なのが、RS232Cを使ってパソコンから、現在時刻や日付などのデータを読み出すことができます。パソコン側のアプリケーションは全く含まれていませんが、比較的簡単なプログラムで、パソコンの内部時計を合わる用途に使えそうです。

次に変わった機能として、1秒間、1分間、1時間、1日間、1月間に1度、LEDが点灯し、トランジスタによるスイッチング回路がONになる機能を持っています。例えば、1時間毎に何かの装置を動かすといったような用途に使えるようです。このキットの部品のうち1/3は、これらのLEDとスイッチング用のトランジスタです。

あと面白い機能に、LM35DZを使った温度計を内蔵しています。温度計センサは、基板上と外付けの2個取り付けが可能で、現在の温度を液晶画面の隅に表示することができ、RS232Cでデータを読み出すこともできます。ちなみに、外付け用のLM35DZはオプションとなっていますし、1度に画面に表示できる温度は1カ所のみです。

そして、液晶表示は、16桁×2行のキャラクタ・ディスプレイなので、時計としては見やすくありません。価格も、6400円と秋月のキットの中では高額な部類です。最近は、スーパーの特売などで1500円程で電波時計を買えますから、純粋に時計として使うには、不便なうえに値段も高いということになります。

PICやら、液晶ユニットやら、最低必要な部品代だけ考えていっても、4000円以上はしそうですので、仕方ないのかもしれません。単なる電波時計としてでなく、教材としてとか、何か特殊なシーケンサなどとして価値観を見いだせない場合は、手を出さない方が良いかもしれません。
 

動作確認と実験

電波時計は、標準電波を正しく受信できて初めて正しい時刻に合わせることができます。この電波をちゃんと受信できているかどうか、一般に売られている電波時計は分かりにくいのが実状です。

その点、このキットは、常時受信状態をモニターでき便利です。受信状態は「TCO」というLEDでモニターできます。しかし、回路図を見ると、受信機の出力をそのままLEDで出力しているのではなく、一度PICで信号処理をしてLEDを点滅させています。

受信機で受信される生の信号は、受信状態によっては、ノイズが混じります。このような状態の時は、受信機の信号を、オシロスコープでみると(左下の図)のようになっています。このようにノイズが混じっていても、信号全体から平均値を取って、その比較として信号を処理すると、正しい信号として判別可能な場合も多くあります。ひょっとすると、このような処理をした信号でLEDを点滅させているのかもしれません。

JJYの標準電波のタイムコードは、(右下の図)のような3種類の信号に分けられます。「TCO」のLEDは、この図のように1秒間隔で点滅していれば、正しく電波を受信している可能性が高いと言うことになります。うまく受信できていない場合は、LEDが全く点灯しなかったり、逆に点灯したままだったり、また、不規則にチラチラと短い間隔で点滅したりします。少し慣れれば、今、ちゃんと受信できているかどうか、一目で判別できるようになります。 

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バーアンテナの考察

バーアンテナの付加コンデンサには0.027μF(右の写真)が使われています。私が調べた市販の電波時計は6800pFが多かったようですので、この値はかなり大きめです。

以前、私が実験した時には、AMラジオ用のバーアンテナを使い、このときは、手持ちの部品の都合で0.022μF+4700pFのコンデンサを使いました。容量から推察すると、このキットに付属するバーアンテナは、私が実験したAMラジオ用のバーアンテナと同じインダクタンスを持っているようです。このときの私の実験では、AMラジオ用のバーアンテナが、最も選択度が高く、ノイジーな自宅の部屋でもちゃんと受信できました。

付属のバーアンテナは、このとき実験したAMラジオ用より、太い電線に、大きなコアが使われていますので、受信感度はずっと良さそうです。もし、送信所から遠い場所で使用するなら、もっとコイルの巻数を増やし、コンデンサの容量を減らした方が感度は上がると思われます。しかし、ノイズには弱くなってしまいます。

ひょっとすると、このバーアンテナはAMラジオ用の物を流用しているのかもしれません。でも、どう見ても、自作用か少数生産用のバーアンテナなのですが・・・

詳細な記事は、CQ誌 2000.12 をご覧下さい。


電波時計の応用

秋月の電波時計の設計はトライステートという秋月とは別の会社が行っています。このトライステートのHP(http://www.tristate.ne.jp)を見ると、電波時計を使った応用について幾つか書かれています。RS232Cを使ったパソコンの内部時計の校正ソフトも載っていますので、これを使えば電波時計が、ただの教材から、実用時計になるかもしれません。

パソコンの内部時計を合わせる

これはトライステートのHPにあるソフトを使います。Windows版が掲載されていますが、ほとんどの人はこれでOKでしょう。インストーラーが付いていますので、それほど難しいことはありません。ただ、電波時計に繋がっているCOMポートが違うと、そのままハングしてしまいます(^^;) そんな時は、C:\Program Files\JJYTMSET2というディレクトリにJJYTMSET.INIというファイルがあり、その中にCOMポート番号が書かれているので、電波時計が接続されたポート番号に変更しておきます。プログラムが起動できるようになれば、時刻合わせや、温度取得ができるようになります。使ってみた感想としては、時刻が正時よりわずかに遅れる感じですが、Windowsパソコンの内部時計に、そこまで要求する意味はあまりなさそうなので、こんなもんで十分でしょう。

秋月のデジタル時計キットの時刻を合わせる

秋月のキットには幾つかPICを使ったデジタル時計がラインナップされています。その時計を、この電波時計を使って時刻を合わせる方法が、トライステートのHPに載っています。その方法が、ちょっと目から鱗だったので紹介しておきましょう。PICデジタル時計は、PICをリセットすると00:00(表示は12:00)になります。電波時計は00:00になると瞬間だけONになるスイッチがあります。つまり、電波時計の「日」のスイッチにPIC時計のリセット端子を繋ぎ込めば、00:00のみですが、時刻が校正されるわけです。
強引で意表を付いた方法ですが、簡単なのですぐ試せます。ちなみに、この方法でも、PIC時計が少し遅れますが、秒表示しない大型LEDを使用した多機能時計ならば、それほど気になることも無いでしょう。

PicNicを使ったパソコンの時刻合わせ

秋月のキットには、PicNicというLANを使って機器を操作できるアダプタが売られています。電波時計をこのPicNicに接続すれば、同じLANに繋がった複数のパソコンの時刻を、1台の電波時計で合わせることができるようになります。ちゃんとしたタイムサーバを持ったLANならば、こんな方法を採らなくても良いのですが、小規模LANとか、家庭内LANなんかには便利かもしれません。このソフトウエアもトライステートのHPからダウンロードできます。注意点としては、マイクロソフトのライタイムライブラリ(MFC42.DLL)のバージョンが古いと上手く動かないようです。新版のMFC42.DLLは、マイクロソフトのサイトか、ベクターデザインのサイトからダウンロードできるようです。