ワイヤレス・ターミナルアダプタNEC Aterm・IW60 |
1998.7.27 de JS1RSV
1998.9.24 更新
1999.8.11 更新
1999.8.23 更新
2000.1.17 更新
2000.7.28 更新
昨年の秋頃から、PHSのアンテナが付いたターミナルアダプタ(ワイヤレスTA)が、なんとか買えそうな値段になってきました。PHSのホームステーションのように、PHS端末を加入電話回線(ISDN)の、コードレスフォンにしてしまえるものです。それだけでなく、データ対応のPHS端末を使うとデータ通信も可能になります。
このデータ通信は、PIAFS(ピアフ/PHS Internet Access Forum Standard)と呼ばれる規格で、通信速度32Kbps(実質29.2Kbps)という速度でデータ通信することができ、32Kデータ対応のPHS端末を使うことで可能になります。
ワイヤレスTAを使うと、PHSからISDN回線を通してデータ通信(図*1)できるだけでなく、PHSとワイヤレスTAの間でも、コードレスの内線通話(図*2)が可能です。自分の部屋のパソコン(サーバー)を、別の部屋のノートパソコンからコードレスでアクセスすることが可能になります。もちろん、PHS端末を使っていても、内線通話ですのでタダで使えます。
パルディオ321SというPHS端末
無線(ワイヤレス)のデーター通信というと、アマチュアのパケット通信を連想します。とはいえ、手軽に実現できるのは、9600bps程度ですし、半二重で遅い上に、トランシーバやらTNCやら、必要な物も多く結構かさばります。
PHS端末なら32Kの全二重で高速ですし、パケット通信の機器に比べて超小型・超軽量です。特に、NTTパーソナルの「パルディオ321S(写真*1)」というPHS端末は、PIAFS用モデム・カードが内蔵され、ノートパソコンなどに付いているPCカード(PCMCIA)と一体型になっています。端末のフリップを開いてノートパソコンに差し込むだけで、通信できてしまうので、手軽に通信可能です。その気になれば、歩きながらノートパソコンに差し込み通信を始められます。
ワイヤレスTAを知ってから、こんなPHS端末と組み合わせて、内線通話でデータ通信ができないかと思っていました。
安くなってきたワイヤレス・ターミナルアダプタ
ワイヤレスTAのなかでも、NECのAterm・IW60(写真*2)という機種は、定価が59800円と安く、他の商品と比べて販売価格も安くなっていました。とはいえ、発売された当初は秋葉原でも4.5〜5万円と結構な価格でした。
しかし、5月に入ってから市場の販売価格が下がってきて、秋葉原の「TOW TOP」というパソコンショップで33800円という価格が付いていたので、やっと買うことができました。先のPHS端末「321S」も、NTTパーソナルの「32Kデータ通信モニタ」で無料で入手できていたので、すぐにでも実験できます。
内線データ通信の使い道
自宅ではLinux(PCで動く、フリーのUNIX)を使った、ファイルサーバーを動かしています。自宅にある複数のパソコン間のデータ交換や、出先から携帯電話を使って自宅のパソコンの中のデータを読み書きするのに使っています。
変わった使い方としては、別の部屋からLinuxにログインしターミナルソフトを起動することで、パケット通信ができたりします。寝床でチャットができたりして便利です。
自宅のデスクトップ型のパソコンは、LAN用のケーブルで接続されています。頻繁に動かす物ではありませんから、ケーブルが繋がっていても困ることはありません。しかし、ノートパソコンは、使う度に、空いているLANケーブルを探し接続して使うことになります。別の部屋で使いたいときは、LANケーブルを、ずるずると家の中を引き回して接続することになります。
そこで、ワイヤレスLANの登場です。PHS端末(321S)をLANカード代わりにノートパソコンに挿すだけで、ケーブルを使わずにサーバーにアクセスできるようになります。家中何処へでも移動できますので、居間でアクセスを初めて、途中で台所に移り食事しながら作業を続ける、なんてことも可能です。
ただ、ワイヤレスTAをLANとして使うには欠点もあります。32Kという通信速度は、モデムとしてはまずまずな速度ですが、LANとしては桁違いに遅い速度です。現在使用しているLAN(10BASE−T/2)は10Mbpsの速度を持っています。実際には800Kバイト/秒程度(TCP/IPプロトコル使用)送れます。しかし、32KのPIAFSとくらべれば30倍は早い計算です。用途次第では、相当遅くなることを覚悟しなくてはなりません。
説明書によると、IW60とPHSが通信できる距離は、見通しで100m程と書かれています。実際にどのくらい飛ぶのか実験してみました。
自宅の部屋は5階の窓際にあります。窓から30cm程のラックの中にIW60をセットして自宅周辺を歩いてみましたが、自宅が直接見える自宅前の道で使えるだけで、少し建物の奥に入ると使い物になりません。
そこで、IW60をベランダまで引っ張りだしてきて実験してみました。この位置は、以前、430MHzの八木アンテナを設置していた場所ですので、ロケーションはなかなかの物です。
すると、直接見通しでは無い場所でも100mくらいなら、辛うじて届くようになりました。大きなマンションの裏にはいるとダメですが、自宅方向の建物が低めな場所では使えるようです。200mも離れると、直接見通せる場所でないと難しいようで、300mも離れると見通し場所でも辛くなってくる感じです。
ただ、ベランダとはいえ、この場所は雨風に当たる場所なので、簡単にIW60を設置するのは難しいようです。もちろん、IW60はPHSの外部アンテナなどの取り付けをサポートしているわけではないので、なかなか設置は難しそうです。
格安(12.8K)にIW60を入手できたので、リモートステーションにして使ってみました。リモートステーションとは、IW60をPHS端末の様にして使うモードです。PHS端末と同じように、ワイヤレスで自宅のサーバーに接続したり、ISDNへ接続したりが可能なのですが、PHS端末とは異なり64Kbpsでの通信が可能です。
TA(IW60)がある作業部屋から10m程離れた寝室で使ってみることにしました。この部屋には10BASE-2とアナログ電話回線は通してあるのですが、ISDNのケーブルまでは引き回してありません。そのため、いままでアナログ回線を使ってインターネットに入っていました。そこで、もう1台のIW60をリモートステーションにして、ISDNからインターネットへ入れるようになりました。
本来ルーターを入れるべきなのでしょうが、IW60が12800円で入手できてしまったので、リモートステーションを試してみました。4ヶ月前に33800円で買った人間としては、こんなに安くなってしまうとは少々ショックですが、この値段なら2台買ってリモートステーションにしてしまうという贅沢も許されます。ちなみに販売されていたのは、新宿の「パソQ」で、限定数50台ということで、すでに完売で在庫はありません。
IW60をリモートステーションにするためには、IW60のファームウエアをリモートステーション用に焼き替えなくてはなりません。手順は、IW60用の「らくらくバージョンアップ」と「リモートステーション用ファームウエア」をNIFTYのFISDNTAのライブラリから取ってきて行います。具体的な手順は、IW60同梱の販売店用説明書にかかれているので省略します。
バージョン2リモートステーションに焼きかえるには、1度古いバージョンを入れてから、さらに新しいバージョンに入れ直すという2度手間が必要なようです。1回の焼き込みに10分程度掛かるので、結構時間がかかります。
実際に使ってみますと、アナログ回線よりは遥かに高速です。といっても、直接TAで使うより遅いハズなのですが、それ以上にプロバイダが重いのか大差無い感じでした(^^;)
1年ほどIW60とダイヤルイン・サービスを使ってきましたが、こんどダイヤルインに近いサービスでiナンバというのができました。ダイヤルインにくらべて600円/月も安いので早々に取り替えたいのですが、IW60は対応する予定が無いようです。ハード的に問題があるなら仕方がないのですが、単に旧機種になったから対応しないのなら問題ですね・・・まあ、NECは昔からそういう処があったので当然のなりゆきなのかもしれませんが(^^;)
しかし、わずか1年で使い物にならなくなるというのは困ります。NTT−TE(現ME)のMN128なんかは、これでもかっていうほどバージョンアップしてくれたので、さすがにiナンバは対応しないと言われても仕方がないかなと諦めもつくというものです。(なんでもフラッシュの空き容量が少ないそうです)
IW60は早々に売り払って今度はルーターでも買おうかと思ったりもしています。サーバーが死んで以来、リモートでアクセスすることもなくなりましたし、32Kbpsではさすがに遅くて使い難いです。ただ、コードレス電話としては多用しているのでホームステーションかコードレス電話を購入しないとなりませんけど・・・といっても、2台のIW60売ってルーター購入資金の7〜8割は出ないとつらいですが(^^;)
ハムフェアーで312Dを2台、安く手に入れたのでIW60へ登録してみました。今まで使っていた321Sと合わせて3台の登録です。内訳は、グローバル着信に1台、ダイヤルイン着信に2台です。しかし、2台付いたダイヤルイン側のPHSは、1台しか着信できません。2台目は発信専用なので、ちょっと使い難いです。これは、IW60の仕様なので仕方が無いようです。でも、3台もついていると、内線通話には使い出がありますね、とはいえ、すでにリモートステーション用に確保したIW60は売ってしまい、もう1台も手放そうかと考えているので、子機登録も無意味に終わるかもしれませんけど(^^;)
見きりを付けたIW60ですが、転売しょうと考えていたのに未だに手放していません。相変わらずコードレスフォンの替わりに使っていたのですが、今度はWindows98を使ったダイヤルサーバーの実験をしてみました。Windows98には、PPPでプロバイダのアクセスに使うダイヤルアップ・ネットワークだけでなく、そのサーバーになれるダイヤルアップ・サーバーの機能があります。これをインストールすれば、PHS端末からWindows98マシンにログインできる仕組みです。PPP接続になるのでHP200LXとかでは厄介ですが、Windowsが走るノートパソコンからなら手軽に使えます。デスクトップにあるファイルを、暖房のある部屋で読んだりするのに使っています(^^;) NetMeetingもインストールして、自分の部屋の様子をカメラで眺めて遊んだりもできます(無意味)。Linuxサーバーが止まった今、再びIW60でデータ通信をするとは思いませんでした(^^;) でも、HDDの大容量化でメインマシンのHDDに何でも入ってしまうようになったら、逆に、これがサーバーの替わりになりそうに思えてきました。
ノートパソコンから321S経由で、フレッツISDNへ入れるように設定してみました。別段、何も難しいことはなく、321SからISDNや自宅サーバーアクセスする場合と何ら代わり有りません。違う設定といえば、契約電話番号を発信する設定にすること、PAFSではなく同期モードにコンバートするモードにすること、の2点だけでしょうか? でも、これでノートからでも電話代を気にしないインターネットを楽しめるようになりました。
現在、ルーターを使わず、TAから入ってるのでこのような芸当も可能ですが、ルーターに替えると、ルーター自体が常時接続したままになるので、2回線接続できないフレッツISDNではIW60(TA)を通して通信することができなくなりそうです。