「うん、なかなか上手く描けたみたい。どう、サーナイト?」
初めて自分で捕獲し、進化を遂げたパートナーに声をかける少女、彼女の名はカノン
水の都アルトマーレでは絵を描いて暮らしていたが今はより多くの景色を描きたいと思い旅立っていた
暫らく湖を眺めているとポツポツと雨が降ってきた
「大変、濡れちゃう」
カノンは仕上げた湖の絵を大事そうに仕舞い込み肩に担ぐと近くのポケモンセンターを目指した
「今日は1日晴れのはずだったのに、仕方ないからポケモンセンターで休んでいきましょう」
サーナイトにそう言ってカノンは駆け出した

「ピカチュウー!大丈夫かー!?」
リュックで頭を隠しながら全速力で森を駆け抜けるサトシ、と。ピカチュウ
「今日は晴れのはずだったのになぁー
お、あそこにポケモンセンターが見える、ちょうどいいや!休ませてもらおう」
そういって2人はポケモンセンターの方向に走っていった

「はぁー結構濡れちゃったね、サーナイト。大丈夫?」
ポケモンセンターの入り口近くで自分とサーナイトの体を拭くカノン、そこに
「ふー…かなり濡れちゃったな…大丈夫か?ピカチュウ」
雨に打たれたサトシも入ってきた
「あっ!サトシくん…」
立ち上がり懐かしい顔に驚くカノン
「あっ!カノン…どうしてこんなところに?」

冷たくなった体を温めるためホットココアをすすりながらカノンと会話するサトシ
「そのサーナイト、カノンが?」
頭を撫でられ気持ち良さそうに目をつむるサーナイトを見てサトシが言った
「ええ。私が初めて捕まえたポケモンなの」
「ちょっとちょっと!見てごらんなさいよ!ジャリボーイにいつだかのジャリガールじゃない!」
木の枝から愛用の双眼鏡でポケモンセンター内の様子、サトシとカノンの様子を窺うR団
「ほんとにゃ!あれはアルトマーレで出会ったヤツだにゃ!」
と、これはニャース
「アルトマーレって言えば…たしかラティアスとラティオスがいた場所だよな?どうしてこんなところにいるんだ?」
コジロウが言う
「そーんなことはどーでもいいの!大切なのは…ラティアス達を持ってるかどーかってことよ!」
ムサシに怒鳴られるコジロウ
「そうにゃ、もしあのジャリガールがラティアスを持っていたら…」
「いたら?」
「サカキ様に渡すのにゃ」
そういってニャースは説明を始めた
「仕事疲れでにゃかにゃか眠れにゃいサカキ様にラティアスを渡すにゃ、そーするとふかふか羽毛のラティアス枕でぐっすり快眠!それでサカキ様はこういうにゃ 『こんにゃ素晴らしいポケモンを送ってくれたニャース達にはホウエン支部をまかせるしかにゃい!』と」
「おおー!幹部昇進!支部長就任!イイカンジー!」
「早速行動に移るにゃ!ついでにピカチュウ&ポケモンセンターのポケモンもいただきにゃ!」
「はー…そんなに簡単に行くかな…」
コジロウの不安な呟きは2人の耳には入らなかった
「サトシくんが初めてGETしたポケモンは?」
「キャタピーなんだ、モンスターボール1個でGETしたんぜ」
拙い会話を交わすふたり、その時大きな物音と共にポケモンセンターの側面が破壊される、ジョーイさんも駆けつけてきた
そして聞き覚えのある声が響く
「なに?」
「なんだかんだときかれたら!」
調子良く始めるR団、が
「R団!お前達か!」
サトシがさえぎった
「もう!登場シーンに邪魔をいれないでよ!」
「まぁいいにゃ!早速いただくにゃ!」
今回は小さな爆弾で壁を破壊したらしく毎度毎度のロボットメカはないようだった、コジロウの持つマジックハンドがピカチュウをつかみ奪った
「ピカチュウ!」
「ふふふ…!返して欲しくばそっちのお嬢ちゃんのポケモンとここのセンターにいるポケモン!全部だしなさい!」
無茶苦茶な取引を持ち出すムサシ
「おお!なんだかスマートな仕事っぷり!」
不安そうだったコジロウも元気がでてきたようだ、しかし
「そうは行かないわ!サーナイト!サイコキネシス!!」
サーナイトは静かに目を閉じ超念力を発生させる
「わわわわっ」
コジロウのマジックハンドを青白く光、ピカチュウは開放されサトシの元に戻ってくる
「サンキュー!カノン!あとはオレに任せろ!ピカチュウ!10万ボルトだっ!」
見事に命中した10万ボルトはR団を吹き飛ばした
「あぁ〜やっぱり駄目だったか…」
コジロウは涙
「悔しいぃ〜!なんでサーナイトを黙らせなかったのよ!」
ムサシが叫ぶ
「にゃんだかにゃ〜ぱっとしないにゃ」
ニャースの台詞の後は勿論
「や〜なかぁんじぃ〜」
R団を撃破したカノンとサトシ、空はすっかり晴れ上がりオレンジ色の夕日が顔をだし始めていた
「ありがとう!でもサトシくんとピカチュウのコンビネーションもバッチリだったよ!」
「当たり前!もう何年も旅してきたんだもんな!」
そういって肩のピカチュウに微笑みかけるサトシ
「さぁ!じゃあオレ達は行くとするよ」
「休んではいかないの?」
少し残念そうに言うカノン
「そうしたいけど…今度出る大会の締め切りが近づいてるんだ」
「そう…解った!頑張ってね!サトシくん…」
「もちろん!優勝ねらいだぜ!」
しばしの沈黙、そして
「また…また2人でこの綺麗な夕日を見ましょうね、私その時を待ってるから…」
オレンジ色の夕日を見ながらカノンはそういった
「うん…また見よう!2人で、絶対に!」
小さくなるサトシの後姿をいつまでも見続けるカノン
「私も…頑張ろう」
小さな拳を胸元で握りしめ小さくそうこぼした