グッディーズ店主の音楽試聴記
2007-10

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<TDKコア>
TDKMA 302 \2450
ブルックナー:交響曲第7番(ハース版)
上岡敏之(指) ヴッパータール交響楽団
録音:2007年9月8,9日 ヴッパータールシュタットハレ(ライヴ)

当初1枚もので予定されていながら、演奏会が終わってみると90分を超える超長時間演奏となり、急遽2枚組に変更になったというい経緯の話題盤です。演奏は期待以上の仕上がりで、近年のオーケストラCDの新録音では出色の出来栄えと言えます。
このオーケストラはドイツのランクではAクラスという事になっていますが上岡敏之という才能を迎えて今まさに上昇気流に乗り始めた旬な状況です。かつてのモーシェ・アツモンと東京都響の時代や、最近ではアルブレヒトと読売日本交響楽団のように、オーケストラはこういう状況になると、1回の演奏会を行なうごとに、どんどん良い方向に変貌してゆくものですが、このヴッパータールもそういった雰囲気を感じさせます。演奏は聴き始めこそ遅さを感じさせますが、聴き進むにしたがって遅さを意識させない心地良さに変わっていきます。「遅い演奏をやろう」という意識がある演奏は、時々どこかに急く気持ちと抑える気持ちが両方顔を出すものですが、上岡敏之とこのオケのコンビはお互いの信頼関係と練習によってその部分を克服しているようです。奏者にほとんどためらいが感じられないのは素晴らしいものです。仮に上岡敏之がベルリン・フィルやシカゴ交響楽団のような機能的に優秀なオケに客演しても、このような成果は決して得られるものではありません。スタープレーヤーを集めた集団では見ることの出来ないチームプレーのすばらしさをはっきりと見る事の出来る、最近では珍しい録音で、面白い新録音が無いと嘆いている音楽ファンにはぜひ聴いていただきたい盤です。



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