グッディーズ店主の音楽試聴記
2007-07

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●7月8日(日) 15時開演 横須賀芸術劇場

アントニオ・パッパーノ(指揮)
ローマ・サンタ・チェチーリア管弦楽団

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」
レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」
レスピーギ:交響詩「ローマの松」

アンコール
カヴァレリア・ルスティカーナ間奏曲
ウィリアムテル序曲

少し時間が経ってしまいましたが、今回は演奏会の感想です。新聞で東京公演の好調さが伝えられていたので、横浜の用事ついでに足を伸ばしてみました。

編成は第1バイオリン14〜コントラバス6の中型で対向配置です。
ベートーヴェンは、縦の線を揃えようという意識が薄いのに全体としては破綻なくまとまっていると言う、非ドイツ的な音楽の捉え方で通されていました。流行(もう流行りでもなくなりましたが)のピリオドアプローチとも無縁のようで、楽器のバランスの取り方などに部分的に工夫はあるものの、きわめて自然に聴けるベートーヴェンとなっていました。最近良く聴かれるベートーヴェンは、何のために演奏しているのかという目的不在を感じさせるものが多い中(これまでと違った演奏を提示すると言うことだけが目的の演奏は、私にはどうももの足りません)、この演奏は音楽に何かを語らせようとする姿勢が自然に出ていて、好感が持てました。招待動員と思われる高校生も多く見受けられましたがマナーも反応も上々でした。

後半はお国ものですが、イタリアのオーケストラがこの曲を過去にどのくらい来日公演で演奏したか分かりませんが、私は初めての体験でした。ドイツ・オーストリアやロシア、フランスものほどには、イタリアの管弦楽曲のお国もの演奏のイメージは一般的では無いように思いますが、ベートーヴェンでも見えていた独特のアンサンブルが、レスピーギでは力を発揮していました。弦は適度な柔らかさと角張らない歌い回しが美しく、金管・木管も均質な奏法と音色で全体に溶け込んでいて、全体のブレンド感がすばらしいものでした。また、ブレンドはされていても個々の楽器が埋もれる感じではないので、細部も見えて量感もあるという独特の響きです。こういう響きで聴くと、イタリア人の持っている歌心だけでない構築性というものも、はっきりと感じ取る事が出来ました。パッパーノの指揮はさすがにオペラの経験が豊富なせいか、大見得を切るような一人よがり的なものではなく、オケの音を聴きながらしっかり対処をしてゆくやり方で、結果として音楽の持つ美しさや躍動感が無理なく伝わってきます。

ローマ・サンタ・チェチーリア管弦楽団は、1996年のダニエル・ガッティのデビュー盤で、ローマ3部作を録音しています(パッパーノとの新譜は未聴)。今回聴き直してみると、当時から言われていたガッティの若手らしからぬ丁寧な音作りが聴かれますが、オケの響きも今回の演奏会と同質のもので、彼の表現はこのオケの力によるところも大きかったのかもしれません。後のロイヤルフィルとの一連の録音では、やや彼の大味な面が出ていたように思います。このガッティ盤は現在BMGセール中で、お買い得・お薦めです。

82876-60869-2 \650 ※8月末入荷分までの特価
レスピーギ:ローマ3部作
ダニエル・ガッティ:指揮
サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団



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