グッディーズ店主の音楽試聴記
2006-12
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<BIDDULPH> 80218-2 \1980 「カミラ・ウィックス 録音集」 シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 ヴァーレン:ヴァイオリン協奏曲 Op.37 ブロッホ:ニーグン、カバレフスキー:即興曲、 プロコフィエフ:「三つのオレンジへの恋」−行進曲 ショスタコーヴィチ: 「黄金時代」−ポルカ,前奏曲第10番,第15番、第16番,第24番 サラサーテ:マラゲーニャ、アギーレ:ウエラ、 ヴァッレ:前奏曲第15番、ベンジャミン:サン・ドミンゴから、 ストラヴィンスキー:牧歌 カミラ・ウィックス(ヴァイオリン) シクステン・エールリンク(指揮)ストックホルム放送交響楽団 録音:1952年2月18日 エイヴィン・フィエルスタート(指揮) オスロ・フィルハーモニー交響楽団、録音:1949年 シクステン・エールリンク(P) 録音:1949-1951年 ピアノ伴奏、録音:1951年 カミラ・ウィックスは「シベリウスのバイオリン協奏曲の決定盤」との評価 がありますが、わたしはこれまで機会がなくようやく今回聴くことが出来ま した。以前にシベリウスの聴き比べを行った時には、ムターのあまりの素晴 らしさに他の演奏がかすんでしまったのですが、このカミラ・ウィックスは 噂どおりの本当に素晴らしい演奏でした。節度がありながら表情が深い演奏 で、大柄な表現もこれ見よがしにならないところで踏みとどまり、知性と情 熱のバランスが絶妙です。ムターの演奏がやや主観的に過ぎると感じる方に は是非お聴きいただきたい演奏です。また伴奏のエーリンクですが、世界初 の全集録音であるシベリウスの交響曲では、やや早めのテンポで押し通す演 奏が多いのですが、ここではウィックスに合わせてか非常に丁寧な伴奏を付 けていて、見事な北欧の叙情を見せています。 |
<NAXOS> 8.570131-32 2枚組 \1760 ヘンデル(1685-1759):オラトリオ「メサイア」(1751年版) 演奏・歌/エドワード・ヒギンボトム(指揮) アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック (エンシェント室内管弦楽団)、 オックスフォード大学ニュー・カレッジ聖歌隊、 ヘンリー・ジェンキンソン(トレブル)、 オッタ・ジョーンズ(トレブル)、ロバート・ブルックス(トレブル)、 イェスティン・デイヴィス(カウンター・テノール)、 トビー・スペンス(テノール)、エイモン・ドゥガン(バス) ※英語歌詞付き、特製紙ケース入り 今年もメサイアの新録音が数点ありましたが、NAXOSの再録音と言うことで、 楽しみに聴きました。合唱・独唱とも全員男性(少年)と言う編成で、以前 にこのような編成の録音があったか記憶にないのですが、私が聴くのは初め てです。出来は期待以上で、少年の声がこの曲の雰囲気作りに大変貢献して います。写真では(少年も含めて)30人程度の合唱団ですが、明晰さを強調 しない録音のせいもあり適度な厚みとふくよかさが非常に心地良いです。少 年の独唱も特に技量が高いと言うことはないのですが、必要にして十分な歌 いっぷりで自然に聴き入ることが出来ます。テンポにも無理がなく、安心し てメサイアを楽しめる新録音としてお薦めです。 |
<RCO> KDC 5016(SACD-Hybrid) \1880 日本語帯・解説付 ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界」ホ短調 マリス・ヤンソンス(指)ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 録音:2003年6月 コンセルトヘボウライブ ヤンソンスとACOコンビのこのレーベルでのデビュー盤ですが、今年の来日に 合わせて、日本語解説付きで再発売になったものです。初回発売時はしっかり 聴いていなかったのですが今回聴きなおしてみて、ACOのオーケストラの美し さに改めて感心しました。私が生で最後に聴いたのはシャイーとの来日で、サ ントリーホールのP席でしたが、この時も特に名人奏者が目立つわけでもなく、 超絶アンサンブルと言うわけでもないのですが、どんな場面でも各パートが 決して崩れることなくしっかりと音楽を奏でる姿勢を見せていました。音色は 弦も管も派手でも地味でもなく中間的と言えますが、各楽器がはっきりそれと わかる奏法と音色で演奏しているため、全体では驚くほどの深みと奥行きが 感じられます。これは70年代にハイティンクで聴いたときから変わらない印象 ですので、メンバーが変わっても受け継がれてきたこのオケの伝統といえます。 ヤンソンスはこの曲では表現の種類を非常に多く出していて、変化に富んだ 演奏を繰り広げています。また叙情的な表情を見せることが多いのも、この 演奏の特徴と言えます。バーンスタインのようなアメリカ的なものや、チェコ のオケのようなスラブの風土を感じさせるものではありませんが、純音楽的に 美しく聴き応えのある演奏としてお薦めします。 |