グッディーズ店主の音楽試聴記
2006-10
メールマガジンでも発行しています。
<UNIVERSAL MUSIC> UCCD-1147 国内盤 \3000 村治佳織「リュミエール」 ジムノペディ 第1番 サティ ジムノペディ 第3番 サティ 亜麻色の髪の乙女 ドビュッシー 亡き王女のためのパヴァーヌ ラヴェル サウダージ(郷愁)第3番 第1曲:儀礼 ディアンス、他 10月25日にDECCA移籍第3弾「ライア&ソネット」をザ・シックスティーンとの 共演で発売する村治佳織ですが、この「リュミエール」は昨年発売された、 DECCA移籍第2弾です。たまたま耳にする機会があったのですが、思いの他(と 言っては村治さんに失礼ですが)良い印象を持ちました。一般的にはアイドル 的に見られることもある村治ですが、ギター奏者からはそのテクニックも高く 評価されている実力派でもあります。以前は「テクニックは十分だが、他人に どういう音楽を聴かせたいのかがやや曖昧」と言う印象でしたが(ギター音楽 はギターを弾く人にしか魅力が分かりづらいという部分が在るので、これはギ タリスト全般に言えることですが)、このアルバムからは彼女の人間的な魅力 が強く感じられます。フランス音楽と言う選曲もあるのでしょうが、どこかふ くよかな落ち着きがあって、聴き手にギター音楽と言うことを特に感じさせな い広い間口を持っています。録音もこれまでのややとがった感じでは無く、近 いマイクながら暖かい音色がとらえられていて、たいへん魅力的です。これま でギター音楽に抵抗のあった方にもお薦めします。 |
<Deutsche Grammophon> 1703139 \1850 スティング 「ソング・フロム・ザ・ラビリンス」 ダウランド:リュート伴奏歌曲集 1.ダウランド:ウォルシンガム 2.ダウランド:あのひとは言い訳できるのか 3.「公正なる閣下…」 ロバート・セシル卿への手紙 (1595年11月10日 ニュルンベルク) 4.ダウランド:流れよ、わが涙(ラクリメ) 5.ジョンソン:あなたは見たのか 6.ジョンソン:輝く百合を 7.「…かつてジョンソン氏が亡くなられた折…」 ロバート・セシル卿への手紙(続き) 8.ダウランド:いと高貴で偉大なるデンマーク王クリスチャン4世のガリアード 9.ダウランド:一番低い木にも梢はある 10.「…私の望むように…」 ロバート・セシル卿への手紙(続き) 11.ダウランド:ご婦人用の見事な細工物 12.「…そこから私はヘッセン方伯のところへ行きました…」 ロバート・セシル卿への手紙(続き) 13.ダウランド:ファンタジア 他全16曲+朗読7通 スティング(Vo、リュート) エディン・カラマーゾフ(リュート) ロックグループ「ポリス」のスティングがダウランドに挑戦と言うことで、 クラシック・ファン、ロック・ファン共に期待のアルバムでしたが、結論 から言えば「やや時すでに遅し」でしょうか。スティングはポリス時代から 歌の上手さではなく、独特の声と歌いまわしでその地位を気付いてきたミュ ージシャンですので、80年代の全盛期のシワがれた輝きとでも言った独特の 声で歌われれば、さぞかし異色の魅力あるアルバムに仕上がったであろうと 思われますが、近年の衰えた声では残念ながら期待したインパクトはありま せんでした。こういったロック・ミュージシャンの他ジャンルへの挑戦は、 60年代後半からほとんどのジャンルに向けて行われましたが、やはりその 全盛期に挑戦してこそ良い結果が出るもので、今回は努力賞にとどまりそう です。因みに、レコード芸術にスティングとカラマーゾフのインタビューが 別々に載っていましたが、相変わらずの行き違い発言はさすがに声は衰えて もスティング節は健在でした。 |
<Hyperion> CDA 67585 \2080 F・シューベルト: 弦楽四重奏曲第14番ニ短調D.810《死と乙女》 同第13番イ短調D.804,Op.29《ロザムンデ》 タカーチ弦楽四重奏団 ハンガリーを代表する弦楽四重奏団がDECCAからHyperionに移籍して初めての CDです。DECCA時代にも同じカップリングで録音があり、再録となります。 1975年結成時のメンバーは2人で、昨年ビオラが交代したばかりと言うことで アンサンブルはどうなのかと思いましたが、やはり同国人の強みでしょうか 均一な奏法と音楽性が保たれています。ハンガリーの弦楽奏者から聴かれる 力強い音色が、現代の高い演奏技術レベルで均衡を保っているのが、この団体 の魅力と思いますが、この演奏でもシューベルトの情緒にのめり込むことなく、 しかし決して冷たさを感じさせない絶妙の距離感で、独自のシューベルト演奏 を行っています。 Hyperionとは年1枚のペースで新録を行うようで、予定に入っているヤナーチェ クはどういった演奏になるのか期待です。 |