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グッディーズ店主の音楽試聴記
2006-09

メールマガジンでも発行しています。

●木村大「ロンドン・エッセイ」
SMEJ 国内盤 SICC-10040 \3,045 [税込]

1-1 アメイジング・グレイス
1-2 タイム・トゥ・セイ・グッバイ
1-3 ユア・ソング
1-4 天国への階段
1-5 グリーンスリーブス
1-6 ロンドンの街々
1-7 ホランド・パーク
1-8 スカボロー・フェア
1-9 ワイルド・マウンテン・タイム
1-10 イギリス組曲:第1曲 前奏曲
1-11 イギリス組曲:第2曲 フォークソング
1-12 イギリス組曲:第3曲 円舞
1-13 ロンドンデリーの歌

木村大(ギター)
小松長生
オーケストラ・アンサンブル金沢
大島ミチル
加藤ジョー・ストリングス
木村祐(ギター)

ロンドンに2年間留学経験の木村大の、イギリスをテーマにした新録音です。
ロンドンで、ほとんど見ることが出来なくなりつつある、旧式の2階建てドア
無しバスから降りようとする木村大のジャケット写真からもうかがえる、彼の
ロンドンへの思いが伝わる意欲作です。
選曲はトラッドからデュアートの新作「イギリス組曲」やロックの名曲など
バラエティーに富んでいます。全体の雰囲気もポップな落ち着いたもので、
ストリングス・オーケストラも効果的に使われています。
奏法は選曲のわりにはクラシカルで、メロディーも所々クラシカルな折り目
正しいメロディー・ラインが選ばれていたりと、クラシックの演奏家としての
こだわりのようなものも感じさせます。最近は村治佳織などより若い世代の
ギタリストも増えていますが、彼も一本筋の通った演奏家に成長する可能性を
感じさせるアルバムで、今後の活動に期待です。
60年代のラルフ・マクテルの名曲「ロンドンの街々(London Town)」が、個人
的にはうれしい選曲でした。ラルフ・マクテルは数年前に60歳のバースデイ
コンサートをロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールで行いましたが、
20代の若者から彼と同年代以上の聴衆もたくさん集まった盛大なものでした。
そういったイギリス人に今も愛されているミュージシャンへのリスペクトは、
忘れないでいてほしいものです。因みに、「スカボロー・フェア」の作曲者
を、ポール・サイモン(サイモンとガーファンクル)ではなく「イングラン
ド民謡」としているのも、正しい見識です。この曲はイギリスでは昔から、
トラッド・フォークのミュージシャンにも取り上げられている、いわゆる民謡
のようなものですが、ポール・サイモンはこの曲を自作登録して、世界中から
印税を稼ぐと言う暴挙にでて、イギリスのミュージシャンから呆れられたと
いう曰くがあり、彼の伝統音楽へのリスペクトの無さを露呈したとして、イ
ギリスのミュージシャンの間では有名な事件です。
<BBC LEGENDS>
BBCL 4189 \2080
ショスタコーヴィチ:交響曲第8番ハ短調Op.65
エフゲニー・スヴェトラーノフ(指)ロンドンSO.
録音:1979年10月30日ロンドン、ロイヤル・フェスティヴァル・ホール

スヴェトラーノフのショスタコーヴィチと言うと、爆裂演奏といったイメージ
が先行しているように思いますが、思いの他合奏能力の高い丁寧な演奏を展開
しています。ロシア(ソ連)のオーケストラは一般的に、縦の線をそろえると
いう意識より旋律を弾き切る気持ちの方が強いため、ややもするとフレーズの
最後がまったく揃わない垂れ流し的なアンサンブルになりがちですが(それが
ロシアのオケの魅力でもあるわけですが)、LSOはさすがに自分たちのアンサ
ンブルをしっかり持っているため、スヴェトラーノフの豪快なイメージとはや
や違った印象を与える演奏です。全体にテンポの遅い部分が落ち着いた音楽の
運びで印象的ですが、緊張感を強いるタイプではなく、ゆったりと浸る事が出
来ます。こういった演奏をスヴェトラフリークの方々はどういう評価をされる
のか興味もわくところです。
音質は当時のFM放送並のステレオ録音で、ヒスはややあります。
<BBC LEGENDS>
BBCL 4186 \2080
モノラル
ブルックナー:交響曲第7番ホ長調
ベートーヴェン:「エグモント」序曲
ベートーヴェン:「プロメテウスの創造物」序曲
サー・ジョン・バルビローリ(指)ハレO.
録音:1967年4月26日、1966年12月1日マンチェスター、自由貿易ホール
1969年4月30日ロンドン、ロイヤル・フェスティヴァル・ホール

バルビローリの珍しい録音、ブルックナーの第7番です。バルビローリはEMI
のセッション録音ではブルックナーを録音していなかったので、これまでの
第3.8.9番はすべてライブの放送音源でしたが、これもバルビローリ・ソサエ
ティ提供によるライブ音源です。音質はこの時代にしてはややテープヒスが
ありますが、演奏を知るにはまずまずの音質が確保されています。
バルビローリの演奏は観客のためと言うよりは、自分自身で楽しむために演
奏を行っていると言った趣ですが、このブルックナーも他の作曲家に接する
時と同様に音楽に対する愛情あふれるもので、場面によっての微妙なテンポ
の変化や表情付けなどは、非常に変化と味わいにあふれています。全体のテ
ンポはブルックナーとしては中庸で、マーラーの第5番や6番のスタジオ録音
のような特殊なものではありません。旋律が即興風に流れるところなど、イ
ギリス音楽を聴いているかのような錯覚を起こさせるような場面もあり、バ
ルビローリがブルックナーをものにしていた事がわかります。1960年代は
ちょうどEMIはクレンペラーでブルックナーを録音していた時期でもあり、
バルビローリのセッション録音の企画は上がらなかったのかもしれませんが、
少々残念な気にもさせる録音でした。
<OEHMS CLASSICS>
OC523 \1450
ベートーヴェン:
交響曲第5番ハ短調Op.67「運命」
交響曲第6番ヘ長調Op.68「田園」
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ (指揮)
ザールブリュッケン放送交響楽団
演奏時間: 5番:6:59 9:32 4:55 10:53、 6番:11:47 14:02 5:23 4:02 9:58
録音:5番:2005年10月17-19日、 6番:2005年10月31日-11月3日
ザールブリュッケン、ザールラント放送大ホール

スクロヴァチェフスキのベートーヴェン全集も残すところ7/8番のみとなり、
年内には全集が完結します。今回の2曲もこれまでと変わらずやや早めのテン
ポで進みますが、昨今の演奏にありがちな落ち着きの無いものではなく、安心
して聴くことが出来ます。各パートのフレージングやバランスは例によって
様々な仕掛けがありますが、70年代頃はそれがどう感じられたのか、スクロ
ヴァチェフスキほとんどの音楽ファンに見向きもされませんでした。やって
いることは昔と基本的に同じですが、年をとって押し付けがましさが薄れて
聞こえる様になると、突然巨匠扱いになるのはギーレンやヴァントも同様で
すが、こういう風潮はいかがなものでしょう。もっと早くから旬の演奏を、
積極的に評価したいものです。
今回の2曲はどちらも前半に比べ後半楽章がテンポを落ち着かせて盛り上がる
傾向ですが、特に印象的なのは田園の4楽章で、ややテンポを落としてじっく
りと非常に充実した音楽的なものです。続く終楽章も丁寧な演奏でかつ淀み
なく進みます。運命の終楽章も主題を強調して高らかに歌い上げ、思いの他
劇的な効果もあげています。非常に個性的な表現も多いのですが、強い意志
で統一されているため、奇異をてらった演奏に聴こえないところがすばらし
く、これは立派なベートーヴェン演奏と思います。
<Deutsche Grammophon>
4776228 \1850
ベートーヴェン:
交響曲 第5番 ハ短調 作品67 「運命」
交響曲 第7番 イ長調 作品92
シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ
指揮:グスターヴォ・ドゥダメル
録音:2006年2月 カラカス,ベネズエラ

ベネズエラ出身の25歳がクライバー、ティーレマンと同じ曲でDGにデビュー
という事で話題の新譜です。
近年、新しいベートーヴェン演奏があふれていますが、その中では割と正攻
法と言える解釈を聴かせます。ティーレマンはドイツの巨匠風を目指して、
やや大袈裟でしたが、ドゥダメルは若さに似合ったすがすがしいスタイルで
のデビューです。基本的に早めのテンポですが、最近にありがちな無暗に意
味も無く速いテンポでは無く、十分に生理的にも受け入れ可能なものです。
東独のオケのような弦のきざみがあるかと思えば、テンポを変えるほどでは
ないレガートでアクセントを付けたりと、全体のバランスを崩さない中で工
夫が色々見られるます。第7番の終楽章はクライバーほどではありませんが、
早めのテンポで一気に聴かせるもので、これも若さが良い方向に出たもので
す。オーケストラはベネズエラの若手主体で中編成のようですが、管楽器に
時々心配な部分があったりするものの、ドゥダメルの意図に答えようとする
姿勢は良い関係を感じさせます。ドゥダメルのオーケストラ・コントロール
もラトルのデビュー時よりしっかりしていて、今後の成長が楽しみな、早く
次のアルバムが聴いてみたいと思わせる新人のデビューです。



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