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書評:松下幸之助『実践経営哲学』

この記事の最終更新日:2006年8月27日

実践経営哲学
実践経営哲学松下 幸之助

PHP研究所 2001-05-01
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私は欧米の文化に憧れるばかりで、日本の文化には外国の方に誇るものがないと、きっと無意識に思いこんでいました。「日本にも、こんなすばらしい方がいるのです」ではなく、「日本には、こんなすばらしい方がいるのです」と、自信と誇りを持って誇れる存在を昨日探しました。すぐに見つかりました、松下幸之助さんです。

松下さんの本は、母がまず、子どもの頃の私にすすめてくれました。子ども部屋の本棚に、母が松下さんの文庫本をおいてくれていたのですが、私は親不孝にも読まずにいました。社会人になってから、実家に帰った時にちらっと読みました。なかなかいいことが書いてあるなと思いましたが、日本および自分を卑下し、フランスやアメリカの文化に憧れていた私は、貧しい日本の混乱を生き抜いた、語り口の優しい松下さんを、畏れ多くもかっこ悪いと思ってしまったのです。

外国のビジネスマンに向けて、「私はナポレオン・ヒル、カーネギー、マンディーノ、マーフィー、ブランチャード&ジョンソン、ドラッガー、ブライアン・トレーシー、コトラー、ジャック・ウェルチの著書を読んで、ビジネスについて学んでいます」と言ったら、「よくそれらの本を勉強していますね(私もそんな読んでいないのに)」と驚かれることでしょう。ただ「日本のビジネス書はどんなものを読まれていますか?」と聞かれた時、「ああそうですね、例えば〜ですね」のように、誇りもなく、アメリカの偉大な著者たちに比べれば、たいしたことないですよという気持ちを丸出しにして答えていては、こいつは外国の本はそんな熱心に読んでいるのに、自国の文化は尊重していないんだなと馬鹿にされることでしょう。

外国の人たちは、日本がこれだけ成功しているのだから、自分たちがまだ知らないすばらしい経営哲学、職業倫理があるはずだと思っているはずです。そこで、ソニーの盛田昭夫さんや、ホンダの本田宗一郎さんほど海外では知られていないが、日本では全国の経営者、企業人から尊敬され、愛読されている松下幸之助さんの名前と業績を、誇りをもって紹介しましょう! 海外の方も「日本にはまだそんなすばらしいエグゼクテイブがいたのか。日本の優秀なビジネスマンはみんな読んでいたのか。私もぜひ読みたい」と思われることでしょう。

松下さんは膨大な量の著作、講演を残された、偉大な宗教家にも等しい企業人です。彼の著作の中から、今日は「実践経営哲学」をご紹介します。

経営哲学は、会社経営だけに当てはまるものでなく、仕事、人生、家庭の運営全てのおおもとにあるものです。
 
松下さんは、「何のために事業を行うのか」という企業の使命、経営理念を確立することが大切だといいます。しっかりした方針が一本立たなければ、組織はバラバラになりがちであり、活動も場当たり的になり、右往左往することが多くなると言います。

松下さんは、経営は人間が行うものだから、正しい人間観を持つことが大切だと説きます。松下さん自身は、人間は万物の王者とも言うべき、偉大にして崇高な存在であるという人間観をお持ちです。それは傲慢だ、人間には苦しみも悲しみもあるという考え方もあります。が、松下さんの考える万物の王者とは、支配・活用だけでなく、慈しみと公正な心をもって、一切を生かしていく責務もおっています。経営者は万物の王者として、従業員全ての天付の才能が顕現するようはからうことが大切になってきます。

松下さんは、企業は共同生活の向上という使命を持っているから、企業は私物ではなく、社会的公器だと言います。企業が利益のみを目的にすると、おかしなことになります。利益は、社会的使命達成の報酬なのです。

松下さんはまた、利益を稼ぐことは大事だと言います。利益の70%以上が法人税など税金となるからです。社会的使命を果たすことで、また社会の発展に役立つことができる。ゆえに、利益の出ない赤字経営は企業の社会的責任を果たしていない、許されない態度だといわれます。

利益に対する一連の考え方に、実に心が動かされました。私的な欲望をもとに振舞ってはならないのです。企業活動は、あくまで社会的使命の実現が目的なのです。利益を得ることも、税金を払うための手段にすぎません。利益を得ること、大金持ちになることにいままでずっとためらいがあったのですが、私は社会的に役立つ事業を行い、たくさんの報酬を得て(収入ではなく報酬なところがミソです)、その多くを税金として国に支払い、さらに社会の役にたつことを目指すことにしました。高額納税者は、社会貢献していたのです。みんながたくさん稼いだら、国の借金も減ります。すばらしいことです。

松下さんは、経営も芸術作品のひとつであると言います。芸術作品にも、数千万円するものから、1円の値段もつかないものがあるように、経営にもよしあしがあります。施設、製品、販売、人材、財務内容、全てが公正で立派であり、それらを統合している経営に明確な理念が躍動していてこそ、経営は芸術作品と言えるのです。

経営に興味がない方にもおすすめです。社会人のあり方がわかるすばらしい本です。


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