「石田流道場」を読む
2005/03/28

 
 「ごるくん、将棋の本はたくさん持っているようだけど、読んでるの?」
 最近、先輩からスルドイ御指摘を受けました(汗)。
 ここ2年ばかりは、まともに将棋の本を読んでいません。ここで言う「まとも」の定義とは、最低限

・盤に書かれていることを並べる

ことを指します。このところは買ってすぐに地下鉄や電車の中でパラパラと読みますが、家に帰って本棚に並べてしまうとそのまま眠りについてしまう本の多いことといったら…。
 春からはすこし自分の時間も持てそうなので、少しは「読む」ことを再開したいな、と思っているところです。

 将棋の勉強の一方法として「定跡を勉強する」ということは欠かせません。
 勿論、その場で最善手を指せる力があるのならば、定跡の勉強などいりません。しかし、現実的にはそれは非常に労力がかかります。別の世界、例えば数学や物理学でいちいち自分で定義から作っていったら最新の研究をする時間など作れません。先人の知恵を整備された道から学ぶというのは、当たり前のことなのですが、非常に大切なことなのです。もっとも、「数学の常識」とか「将棋の定跡」、「○○の定説」といったものの中には、間違いがある場合もあり、そこからノーベル賞クラスの大発見が生まれることもごくたまにはあるのですが…。

 将棋の定跡勉強でまず一番最初に大切なのは、

@ 本を買う

と言うことです。なんだ、当たり前か、と思われるかもしれませんが、これが大事。「身銭をきる」ことがモチベーションの持続のためにも必要なのです。立ち読みで済ませよう、というのは、「買うお金がないけれどもどうしてもこの本を読みたい!」という強力なハングリー精神がある場合以外はなかなか身につかないのではないか、と思っています。
 さて、本を購入したら、次の段階として

A 本を盤に並べる

ことが大事です。最近の本では、丁寧な図がたくさん掲載されていて、「並べなくとも読める」というのが謳い文句の本も出ていますが、実際に並べて「指に覚えさせる」ということもなかなか軽視できないことなのです。
 そして、次が

B 本を覚える

 大体、一冊まるまる覚えたら、その本の戦法に限れば四段クラスにはなるのではないか、と思います。まるまるは難しくとも、どこにどんなことが書いてあるか、だけでも記憶していると、似たような局面が実戦で現れた時に、あとで本を辞書のようにして使えるという利点があります。
 ここまで来ると、実戦と定跡勉強の繰り返しでどんどんステップアップのサイクルが回り始め、その戦法のスペシャリストの域が見えてきます。
 
 そして最後に

C 本以上の独自研究を加える

ことで完了。といっても、これはどこまでやれば「完了」かは誰にも分かりません。本に書いてあることの先を、あるいは本の誤りを知っておけば、それが勝利となってかえってくるでしょう。


 さて、久々に一冊、読了しました。東大将棋ブックス最終巻(第38巻)の「石田流道場」です。1冊読めそうな時間が出来たので、さて、何を読もうかと思ったのですが、

・最近、鈴木8段が石田流の新定跡を発表した
・HP「非定跡党」のコーナーに「石田流三間飛車」のコーナーがある(個人的には石田流は
 十分定跡化されていると思っているのですが…)ので、棋譜を作成したい

という理由で、読んでみました。

 石田流など勉強するのは久しぶりでしたが、知らぬ間に定跡も進歩していたようで、大変勉強になりました。例えば第1図(96頁の第7図)。



 ここで▲3六角で良し、覚えていましたが、居飛車側の受けに奥の手があったようですね。96頁B図の自陣飛車には感動しました。
 さて、新たに提案された先手の指手から進んで第2図(99頁第11図)。ここでのごるの第一感は▲4五金なのですが・・・


  

    第2図よりの指し手
▲4五金△2四玉▲3六桂△1四玉▲1六歩△2四歩▲3四金△2五玉▲4四金・・・(第3図)



本に書いてあるのは▲3四金まで。玉が逃げてきたらどうするのか、と考えましたが、単に▲3三金とすると手が続かないと思います。そこで、▲4四金。△同角ならば▲同桂が金に当たる上、▲3六角の痛打もあります。ほおっておけば▲2六歩から銀の活用。
 これで先手何とかなったかな?と考えました。
 さて、そこでじっと第2図を眺めてみると、次に考えたのは
「△1四歩が突いてあれば、第2図は後手必勝?!」
 △1四歩形なら、上に書いた手順は成立しませんし(1三に逃げられる!)、本に書いてあるもう一つの変化、▲4五金ではなく▲3六桂の時には、△1五歩と突けば後手玉は辛くもピンチを脱出できるのではないか、と考えました。
 端歩はどこで入るだろう、と考えてみると、浮かんだのが戻って第4図(93頁第4図)。



ここで△1四歩があるかもしれない。王様は4二→3二→3三と移動しているので、3二に移動する手を端歩にかけれるのではないか、という訳です。端歩に対して先手が▲3六飛と回れば、上の変化にして「一勝」となる可能性大です。
 ただし、タイミングとしていかにも妖しい感じのする端歩突きですから、先手も様子見で▲1六歩と指してくるかもしれません。この端歩交換は先手に利があるように思います。

 さて、別の場所より見つけた第5図(144頁第24図)より 。ここで△6五同歩は以下先手良しと書いてありますが、手順中の△6二金の代わりに△5二金だとどうなるのか?と疑問に思いました。



    第5図よりの指し手
△6五同歩▲3六飛△3三銀▲9七角△5二金▲7六飛△8三金▲5六歩
△4二銀▲5五歩△同銀▲5六銀△6六銀・・・(第6図)



金銀がバラバラで怖いですが、なんとか切らせることが出来るのではないか、と考えています。

 さて、今度は第7図(207頁B図)



この図、本の通りに作成しましたが、恐らく盤面が間違いではないかと思います。手順はあっているようなので、後手の飛車は6二ではなく7二ではないか?と思うのですが・・・。仮に△7二飛形だったとしても、それでも角をぶち込むんでしょうか?以下△7三同桂▲同歩成△7一飛・・・のような展開になるのでしょうか?ちょっと良く分かりません。
 今回は全部並べた訳ではなく、読みながら覚えておきたいところや気になったところに差し掛かったときに盤に再現して考えました。まあ、こうやって勉強してもやったそばから忘れていくんですよね。繰り返して勉強すれば記憶も定着していくのは分かってますが、それを行うのはなかなか大変ですね。


参考文献

 1)東大将棋ブックス「石田流道場」、所司和晴著、毎日コミュニケーションズ社、2004
                   (ごるの持っている本は2004年12月20日発行の第一刷)
トップへ
トップへ
戻る
戻る