4手目△7四歩戦法
2004/03/29

 4手目に△7四歩と突くこの戦法、、なかなか指す人はいらっしゃらないようです。
理由としては、

 ・どちらかと言えばマイナーな相掛かり、横歩取り系統の将棋に近い
 ・そのような将棋なら、最近は△8五飛などが有名で、そちらにいってしまう

というのが挙げられます。しかし、一番の理由は、

 ・定跡が整備されていない

ではないかと思います。そこで、簡単にこの戦法について解説してみようと思います。
 参考文献に挙げておきましたが、最近ではいくつか棋書も出回ってきつつあるようです。
現在、△7四歩党はごる位しか見当たらないのですが、皆様も是非一度お試しあれ!


 はじめに
 この戦法が初めて参考文献1)で紹介されたときには、初手▲7六歩に対する2手目に
△7四歩と突く形でした。これですと、先手が振り飛車にする変化もあります。それはそれで
また面白い戦いとなります。これで戦うのも一興でしょう。
 出だし▲7六歩△3四歩▲2六歩に対して4手目に△7四歩と突いたのは井上慶太八段が
最初ではないかと思います。1999年のA級順位戦、対島八段戦でした。結果的には敗戦となり
ましたが、途中は井上八段が優勢だったようでした。4手目に突く、という工夫に非常に感銘を
受け、それ以来私は4手目に△7四歩と突くようになりました。

 この戦法の基本図です。ここから大まかに以下の4つの形に分類されます。




 @飛先逆襲形 A横歩取り形 B相掛かり形 C矢倉形


@ 飛先逆襲形

    基本図よりの指し手
▲2五歩 △7二飛 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8八角成 ▲同 銀 △3三角
▲2八飛 △2六歩 ・・・ (第1図)


 類似形として、

イ) ▲7八金△3二金の交換を入れないで▲2四歩としたとき
ロ) ゴキゲン中飛車で7手目に▲2四歩としたとき

があります。個人的には、この2つの形より本譜の方が働いているのではないかと思って
います。
 ここで、先手には▲7七銀と▲7七桂が考えられます。それに対して参考文献間で見解が
ちがいますが、3)の△2二飛が無難でしょう。

 第1図からの一例を紹介しましょう。

    第1図よりの指し手
▲7七銀 △2二飛 ▲4五角 △5二玉 ▲3八銀 △2四飛 ▲2五歩 △同 飛
▲3四角 △2四飛 ▲4五角 △4四角 ▲6六歩 △3二銀 ▲4六歩 △7三桂
▲8六歩 △3三桂 ・・・(第2図)


 
 コツは、

・▲4五角には△5二玉と受ける。▲3四角の時に4三の地点を先受けしていることが大きい。
・△4四角と2六の歩をしっかり守ること
・両方の桂馬の活用を目指す

といった所でしょうか。
 このような展開は、△7四歩戦法の最も歓迎する展開です。逆に、これで悪ければこの戦法
自体が駄目という事になるので、是が非でも互角以上にしなければならないのですが。

 参考棋譜をあげておきます。なお、HP「非定跡党」にも参考棋譜をあげてありますので、
そちらも是非御覧下さい。
                      参考棋譜13-1

A 横歩取り形

 一旦金を上がりあってからの飛車先交換後、先手が横歩を取る形です。

    基本図よりの指し手
▲2五歩 △7二飛 ▲7八金 △3二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △7五歩
▲3四飛 △7六歩 ▲7三歩 △同 桂 ▲2二角成 △同銀 ▲7四歩 △6五桂
  ・・・(第3図)



ここで、先手には3つの変化があります。手順のさわりだけ記しておきましょう。

    第3図よりの指し手 A)
▲7三歩成 △9五角 ▲7七桂 △4二飛 ▲9六歩 (図面略)

    第3図よりの指し手 B)
▲9五角 △4一玉 ▲7三歩成 △5一角 ▲7四飛 △9四歩 (図面略)

    第3図よりの指し手 C)
▲7三角 △4二玉 ▲9一角成 △3三銀 ▲3五飛 △7七歩成 ▲同桂 △同桂成
▲同 金 △7四飛 ▲7六香 △2四飛 (図面略)


 実はこの形は、定跡書には書いてありますが、ほとんど実戦には現れません。ごるの実戦
でも2局しか出てきたことがありません。そのうち1局は残念ながら棋譜をとっていなかったの
で、残っているのは1局。この棋譜はHP「非定跡党」にUPしてあります。
 A)のような歩頭に桂跳ね、B)のような大駒にごちゃごちゃ当たってる形など、知らないと指
せない形が多いのがその理由ではないかと思います。

 この横歩取り形の変化の中に、ひとつごるが自信のない変化があるのですが、それはちょいと
秘密にしておきましょう(笑)。
 

B 相掛かり形

 実戦でもっとも出現率が高いのがこの形。激しい変化を避け、先手が本来目指したであろう
相掛かり系統あるいは矢倉系統の将棋にしよう、と言う意図です。
    基本図よりの指し手
▲2五歩 △7二飛 ▲7八金 △3二金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △7五歩
▲同 歩 △同 飛   ・・・(第4図)




 ここからは、実にさまざまな指し方があり、なかなか体系化が出来ていません。出現率が
高い割にはなかなか本がなかったのですが、参考文献4)で少し、5)でかなり詳細に取り上げ
られていますので、是非そちらを御覧頂きたいと思います。

 こちらの方針としては、

・ひねり飛車のような形を目指す
・横歩取り△8五飛のような中原囲いにする
・中住まいにする

とこれまたいろいろあります。実戦でいろいろ試して合う形を見つけて下さい、としか言えない
ところが、ちょっとつらいですね。ごるも、どのように指してよいのやら、いつも試行錯誤している
と言うのが本当のところです。

 実戦譜をこちらとHP「非定跡党」に1局ずつUPしておきます。

                    参考棋譜13-2

C 矢倉形

 もっとも穏やかに指そうという形です。以下の指し方は本邦初公開、ごるのオリジナルです。
もともとは、確か羽生―佐藤のタイトル戦(矢倉戦でした)からヒントを得て組み立ててみました。

    基本図よりの指し手
▲6六歩 △3二銀 ▲4八銀 △5四歩 ▲5六歩 △5二飛 ▲6八玉 △5五歩
▲同 歩 △同角 ▲2五歩 △3三銀 ▲5八金右 △6二銀 ▲7八玉 △5三銀
▲6八銀 △5四銀 ・・・(第5図)


 角道を止めた手に対して、△3二銀(あるいは4二銀)が手始め。これを指さないと、▲2五歩
の時に困ります。矢倉模様と見せていきなり△5二飛!それから素早く五筋の歩を交換します。
 先に書いたタイトル戦では、2筋の歩は先手に交換されてしまうのですが、この形は飛先交換
を拒否できるのが自慢です。玉移動は後回しにしてさらに右銀を繰り上げます。

 第5図以降は、角を8二に引き、玉は矢倉のように囲います。右金は、出来れば玉側の4二
あるいは4三に持っていきますが、相手の出方によっては△7二金と上がることもあります。
9筋の歩は角を覗く事も場合によってはありますので、突いておいた方がよろしいでしょう。
 機を見て△3五歩〜△4五銀〜△3六歩のような手が狙いとなります。そうはならなくとも、
先手は角の睨みで▲3六歩と突けない、右桂が活用しにくい、といった制約を受けている為、
後手が作戦勝ちと言えるでしょう。

 よくある急戦系の矢倉では、右銀を△5三に上がってから△5五歩と交換していますが、上の
手順では右銀を上がる前に飛車を振って△5五歩と交換しています。これは、早期に▲2五歩と指されて△3三銀と上がらされるのを回避する為に考えた手順です。ここまで無理をしなくとも、
『▲2五歩と決めさせた』ことに満足できるのならば、普通に右銀を上がってからの歩交換を
目指しても良いかと思います。

 この形も、実戦での出現はそう多くはありません。2局、ここと「非定跡党」にUPしておきます。

                    参考棋譜13-3


おわりに

 さて、いかがでしたか?まだまだ定跡が整備されていないこの戦形、自由な想像力で独自の
戦法を開発する余地もまだ十分にあると思われます。ごる一人では限界がありますので、是非
皆様にもいろいろと試してみて頂きたいと思っています。

参考文献

 1)「将棋世界1993年9月号『後手番2手目の可能性』」、中村修著、1993
 2)「続将棋戦法小辞典」、鈴木輝彦著、木本書店、1994
 3)「奇襲虎の巻」、神谷広志著、週刊将棋編、1994
 4)「NHK将棋講座1999年11月号『4手目△7四歩戦法』」、豊川孝弘著、日本放送協会、1999
 5)「居飛車奇襲戦法」、井上慶太著、創元社、2002

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