井上流美濃くずし▲8六銀戦法(2) 逆襲編
2003/06/19

 さて、前回はこの戦法の破壊力を御紹介しました。こういうのを目の当たりにすると「おお、振
り飛車党の落日も近い!」などと居飛車党は思ってしまう?のですが、振り飛車党としては、
「こんな変(?)な戦法にやられてたまるか!」というところでしょう。

対抗策 その1 早めの△5四銀

 24で何局かこの戦法を試していた所、次のような対策に出会いました。

初手よりの指し手
▲7六歩 △3四歩 ▲6六歩 △6二銀 ▲7八銀 △5四歩 ▲6八飛 △1四歩
▲1六歩 △3二銀 ▲4八玉 △5三銀 ▲3八銀 △2四歩 ▲3九玉 △2三銀
▲5八金左 △2五歩 ▲6七銀 △2四銀 ▲5六銀 ・・・ (第1図)



 この早めの銀上がりは、▲6六角(本局は後手なので△4四角ですね)を阻止するだけでは
なく、この銀で後手陣を撹乱しようという狙いです。以下、大乱戦となりました。

    第1図よりの指し手
△1五歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲4五銀 △1六歩 ▲3四銀 △3二金 ▲2五銀
△8四歩 ▲7七角 △8五歩 ▲1二歩 △同 香 ▲1三歩 △同 桂 ▲1六銀
△同 銀 ▲同 香 △2五銀 ▲1七歩 △1五歩 ▲同 香 △1四歩 ▲2六歩
△同 銀 ▲1四香 △2七歩 ▲2四歩 △4四角 ▲6五歩 △7七角成 ▲同 桂
△4四角 ▲6四歩 △同 歩 ▲3四角 △3三金 ・・・(図面略)

 飛車先の歩を伸ばしていったのは、秒読みのため訳が分からなくなっての指し手です。攻め
た端を逆に攻められてしまいましたが、最後の▲3四角が悪手で、以下後手がよくなりました。
 居飛車側は、強引に端を攻めることが出来るので、一応言い分は通っているのではないかと
思います。1局ではありますが、根本的な対策にはなっていないのではないか、と感じていま
す。

対抗策 その2 矢倉志向

 どの将棋も互角以上に戦えて来た「井上流美濃くずし」ですが、年貢の納め時?がやってき
たようです。
 某有名アマ強豪との一戦より。この方はおそらく参考文献を読んではいないと思います。た
だし、ごるが指しているのを何局かはちらっとですが眺めてはいると思います。

初手よりの指し手
▲7六歩 △3四歩 ▲4八銀 △4四歩 ▲5六歩 △4二飛 ▲5七銀 △9四歩
▲9六歩 △7二銀 ▲7八銀 △6二玉 ▲8六歩 △5二金左 ▲8七銀 △6四歩
▲8五歩 △7四歩 ・・・(第2図)



 玉は囲わず、△6四歩と△7四歩を優先します。このときの手順が重要です。▲8七銀に対
応して△6四歩、続いて▲8五歩に対応して△7四歩です。あまり早く(▲8六歩を突かれる前
に、という意味)△6四歩を突いてしまうと、場合によっては▲9七角の筋から高田流の1変化
のように六筋から手にされてしまう危険性があります。
 この手順のように△7四歩まで入ると、居飛車側からは玉頭位取りに変化することが出来な
くなり、この後の展開としては井上流か妥協しての銀冠位しかなくなります。まあ、銀冠穴熊は
あるかもしれません。

    第2図よりの指し手
▲8六銀 △7三銀 ▲7七角 △4五歩 ▲8八飛 △7二金 ▲3八金 △6三金左
▲4八玉 △7七角成 ▲同桂 △2二銀 ▲5八金 △3三銀 ▲6六歩 △2四歩
▲6五歩 △同 歩 ▲6八飛 △6四銀 ▲6五桂 △4四銀 ・・・(図面略)

 「居飛車奇襲戦法」の中に収められていますが、井上流は居飛車ではありません!
この戦法は相振り飛車、しかもかなり特殊な形です。
 相振り飛車なら、理想の囲いは・・・そうです!矢倉です!ですから、矢倉を目指して△6四歩
〜△7四歩が正しい応接なのです。また、注意したいのは玉の位置。端攻めを見せられている
以上、深く囲うのは損です。わざわざ戦場に玉を移動させることになりますから。私見では、こ
の某強豪のように△6二の位置で待機しているのが良いでしょう。相手の出方を見て、棒銀を
繰り替えたりするようなら、それに呼応して入城する。それが呼吸というものです。

 上の指し手中、▲7七同銀からの繰り替えが良かったかもしれません。本譜は△2四歩と指
されて焦りを感じ、突っかけていったのですが、やわらかく受け止められ、以下完敗でした。
 △2四歩に対して悠長に玉を囲っていたりすると、二筋に飛車を転回され、逆に棒銀から攻
められてしまいます。井上流側としては、これ以上囲っても固くならないので、どこかで猛攻す
るしかないのです。そのときに攻めようと思って準備していた端が空回り気味になるのが痛い。

 余談になりますが、実は、この某強豪にはこの戦法をアマ名人戦など重要な大会で使おうか
と密かに温めていました。本局はアマレンレーティングしかかかっていない対局だったのです
が、気が変わっての採用。つくづくここで試してよかったと、思っています。

 さて、井上流側としては、どうしましょう?先ほどチラッと書きましたが、銀冠穴熊を目指すと
いうのは案外有力かもしれません。今後の研究課題ではないかと思っています。


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