2003/04/05
NHK将棋講座に連載されている青野九段の「将棋よもやま話」は、毎月楽しみに読んでいる
連載物のひとつである。このテキストの最新号(2003年4月号)では、『コロンブスの卵』と題し て碓井女流プロが指した角換り早繰り銀の新手に関する記述があった。
青野九段は角換りの名手でそれに関する著作も多数ある。その青野九段と、この随筆中で
森下八段がその「碓井新手」を絶賛していたので、調べてみた。
第1図が問題の局面である。
ここまでに至る手順については参考文献3などに詳しく書いてあるので省略する。
第1図はこれまで先手不利といわれていた局面である。次の△7三角が厳しいと言うのがその
理由である。例えば、第1図より▲6八玉なら、△7三角で、▲3七歩なら△3六歩、▲4六銀の 受けには△4五銀打ち、といった按配である。そのため、第1図の直前では2筋で銀交換せず に先に▲6八玉などが一般的であった。
この局面で「新手」を出したのが上記のように碓井女流プロである(参考文献2)。この局面
がプロの将棋で近年現れているかどうか調べてみたが、私の調べた限りでは同一局面はなか った(もし、御存知の方がいらっしゃいましたら、教えてください。)
第1図よりの指手(その1)
▲3七角 △7三角 ▲同角成 △同桂 ▲7五歩 △6四角
▲4六角 △5五銀 ▲3七角 ・・・(第2図)
なお、「将棋倶楽部24万局集」では、同一局面が1局あり(2001/9/29、shakutorimushi対
kikkasyou戦)、そこでは▲4六角△7三角▲同角成△同桂▲4六角△5五角▲同角△同銀▲
7五歩と進展している。どちらも▲7五歩が入っては先手有利であろう。
では、▲3七角で先手有利なのだろうか?後手の対抗策を考えてみたい。
第1図よりの指手(その2)
▲3七角 △6四銀 ・・・(第3図)
その1の手順中、後手の△7三角が疑問ではないかと思う。この手に代えて銀を投入してし
っかり守ってみてはどうだろうか?ちょっと勿体無いようではあるが、よく考えてみると先手は 角を打ってしまっているので、そんなに損というわけにはならない。
やはり、第1図は先手がやや不利ではないかというのが、現時点でのごるの結論である。
▲3七角に△6四銀と打った実戦譜がある、またこの手に関して記述してある本があるという
話も聞いたのだが、残念ながらまだ見つけていない。これに関しても情報を頂ければ幸いで す。
参考文献
1)「将棋よもやま話」、テキスト『NHK将棋講座2003年4月号 58頁(筆者:青野照市)』
2)「将棋世界 2003年2月号 248頁」
3)「青野流近代棒銀」、青野照市著、日本将棋連盟、1983
4)「将棋倶楽部24万局集」、久米宏編著、ナイタイ出版、2002
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