先手三間飛車にはいつも苦労している。
ごるが将棋を覚え始めた頃は、三間飛車といえば石田流であり、オーソドックスな三間飛車
はほとんど指されてことはなかった。たまに指されても、加藤一二三著「プロの三間飛車破り」 を熟読していたため、急戦でひとつぶし!ということが多かった。青野照市著「先手三間飛車 破り」が現れるに至ってその思いはますます強固なものになっていった。
が、しかし―。
近年ではプロでは中田功氏、アマチュアでは山田敦幹氏に代表される三間飛車の使い手が
続々登場し、三間飛車からの華麗なさばきで星を荒稼ぎしているのは皆様よく御承知の通りで ある。
後手三間飛車への急戦もなかなか通じにくくなってきている。最近時々見られていた▲6六
銀(参考文献3の84頁、参考文献4の111頁)が救世主か!と思っていたときもあったが、やは りどうも玉の薄さのため形勢は微妙でも勝負としては居飛車急戦側が勝ちにくい将棋なのでは ないか、と最近ではそう思っている。
後手三間にでさえそうなのであるから、先手三間にはなおのこと急戦は難しい。勿論、穴熊と
いう最終手段は残されてはいるが、それだと相穴熊へとなる可能性が大きくなる。個人的に相 穴熊はどうしても指す気になれないので、何か別の手段を講じなければならないことになる。
で、現在のところ、・・・うまい対策はたっていない。先手三間をカモにしていらっしゃる方に是
非このメモを代わって書いて欲しいところである。
現在の所、先手三間には、おとなしく左美濃に組んで無理はしない、千日手になるならそれも
仕方がないか、というスタンスで指している。どうにも後ろ向きな指し方なので気が進まないの だが。
以上でメモを終わるわけにはいかないので、既成の手順への疑問とその修正を発表したい。
初手よりの指手
▲7六歩 △8四歩 ▲7八飛 △8五歩 ▲7七角 △6二銀 ▲6八銀 △4二玉
▲4八玉 △3二玉 ▲3八玉 △5四歩 ▲6六歩 △3四歩 ▲2八玉 △1四歩
▲1六歩 ・・・(第1図)
参考棋譜の実戦そのままの手順である。角道をなかなか開けなかったのは、ちょこっと「鳥
刺し」を匂わせただけであり、この形までなら多少の手順前後(普通に角道を早めに開ける)は OKである。
ここから左美濃に組んでいくのであるが、左美濃に組む場合でも大概の人はここで△5二金
右と挙がるのではないだろうか。なにせ、いままで出版されている定跡書でも△5二金右が入 っている形しか書かれていないのだから。
ここで(あるいはここまでで)△5二金右と上がるのは、左美濃に組むのなら疑問手ではない
か、というのがごるの主張である。理由は、石田流に組替えられる変化が生じるからである。
第1図以下の指手(その1)
△5二金右 ▲3八銀 △2四歩 ▲6七銀 △2三玉 ▲5六歩 △7四歩 ▲7五歩
△同歩 ▲6八角 △7二飛 ▲4六角 ・・・(第1-1図)
この変化は参考文献5に書かれている手順である。これは先手有利。
しかし、△7四歩のところで普通に△3二銀なら▲7五歩と突かれ、以下石田流に組まれてし
まう。それはそれで1局ではあるのだが、三間飛車側の主張が通り、主導権を握られてしまっ ている感は否めない。
それではどうしたらよいのか?次に修正手順を示す。
第1図以下の指手(その2)
△2四歩 ▲3八銀 △2三玉 ▲6七銀 △3二銀 ▲5六歩 △7四歩 ▲7五歩
△同歩 ▲6八角 △3一角 ・・・(第2図)
そう、右金上がりよりも△3二銀を優先させ、△3一角と引く余地を作るのである。先手が先
程と同じように仕掛けると、第2図で後手受けきりである。
仕掛ける手順がないのなら、以下は三間飛車側は普通に高美濃〜銀冠に組替える位であ
る。そのあたりの手順及び考え方は参考文献6を参照されたい。
ただ、ひとつ注意がある。ごるの参考棋譜がよい例なのだが、離れゴマを作る前に△9四歩
と端歩を突いておくことである。振り飛車側からの仕掛けはないと思っていたごるは、銀冠に組 替えようとした瞬間に仕掛けられて激しく動揺した経験がある。振り飛車側が▲2七銀と銀冠 に組換えるのと見合いで△2三銀と上がるか、そうでないときには端歩をいれておく。これが大 事である。
しかし、今回書いたことはほんのささやかなこと。根本的な三間飛車対策にはなっていない。
三間飛車を苦しめる側に回るのは、いつの日になるのだろうか・・・。
★ 参考棋譜(北海道の三間飛車のスペシャリスト、Kanakenさんとの一番です)
参考文献
1)「プロの三間飛車破り」、加藤一二三著、大泉書店、1982
2)「先手三間飛車破り」、青野照市著、創元社、1988
3)「これが最前線だ!」、深浦康市著、河出書房新社、1999
4)「粉砕振り飛車破り」、井上慶太著、創元社、2001
5)「定跡次の一手 三間飛車VS左美濃」、安西勝一著、将棋世界1994年4月号付録、1994
6)「羽生の頭脳4」、羽生善治著、日本将棋連盟、1992
|