鳥刺しへの正しい手順

2003/01/11


 鳥刺しは現在のところ奇襲戦法に分類されている。その理由は、角道を開けないという特殊
な形が原因ではないかと思う。また、指す人が少ないため、定跡化も進んでおらず、棋書もごく
僅かであることも一因であろう。
 鳥刺しがあまり指されない原因は、相手が振り飛車をあきらめ居飛車で来た場合に作戦負
けになり易い事ではないかと思う。しかしそれは、既成の手順に若干問題があるのではないか
というのがごるの主張である。

 初手よりの指手 ▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲4八銀  ・・・(第1図)



 数少ない定跡書での鳥刺しの手順は決まってこうである。最近出版された話題の書「島ノー
ト」においてもこの手順である。しかし、ここに問題があるのである!
 第1図で後手の最善手は△4二銀(島ノートの△3二銀も可)ではないかと思う。(第2図)
この手で△8四歩は早い。▲7六歩と指された時に角交換に対応するため△4二銀(あるいは
△4四歩)の一手が必要となり、以下▲6六歩△8五歩▲7七角で飛車先が受かってしまう。



 第2図での最善手は▲7六歩ではないかと思うのだが、それでは鳥刺しにはならない。鳥刺し
にするためには▲5六歩と指さなければならない。以下島ノートでは後手が角道を止めている
ので玉移動の前の▲6八銀が効き、後手の居飛車への対応が取れるようになっている(ここの
考え方は大変参考になる)。しかし、△4四歩の代わりに△8四歩ならどうであろう。

 第2図以下の指手 ▲5六歩 △8四歩 ▲5七銀 △8五歩 ▲7八金 ・・・(第3図)



 先手の最善の組み方は上の順ではないかと思う。下手に角道を開けると、代償なしで横歩を
取られかねない。▲5七銀の代わりに▲7六歩でもギリギリ大丈夫(後手横歩をとりに行くのは
無理)ではないかと思うが、余計な変化をなくす意味で本譜の順が妥当であろう。
 ただ、どうやっても飛車先は交換されてしまうのである。

 では、どうしたらよいのだろうか?
 ごるは、以下のように指し始めている。

初手よりの指手 ▲5六歩 △3四歩 ▲4八銀 ・・・(第4図)



飛車先の歩は後からでも十分間に合うのである。なお、初手と3手目は逆でも構わない。ごる
は初手で今大流行のゴキゲンを匂わせて三手目で肩透かしの本譜の順を採用している。
 ここで後手が△8四歩なら、以下▲5七銀△8五歩▲7六歩(第5図)で、英春流。この場合も
飛車先交換は後手の権利であるが、この形なら直後に銀冠に組むことも可能である。



 また、一手様子を見る△4二(3二)銀の場合には、▲6八玉と上がり、△8四歩に▲7六歩
(第6図)。角交換なら手得であるし、△3三銀なら▲7八銀で問題ない。



 相手が何を指すか分からない状況で既成の手順を採用するのはかなり勇気がいる。したが
って鳥刺しはメインの戦法にはなかなか採用することが出来ず、そのため奇襲戦法の位置付
けに甘んじざるを得なかったのではなかったのではないだろうか。
 しかし、この修正手順なら居飛車で来られてもそれなりに戦える!
 島八段もこう書いている。
「四間飛車にとって鳥刺しは、対策の決定版が容易に見つからない戦法ではないかと思う」
 鳥刺しがブームになる日もそう遠くはないかもしれない。


参考文献
 「島ノート」、島朗著、講談社、2002
 「奇襲虎の巻」、神谷広志著、毎日コミュニケーションズ、1994
 「奇襲戦法」、森けい二著、創元社、1983
 「超急戦!!殺しのテクニック」、横田稔著、高橋書店、1988
 「必殺!19手定跡」、鈴木英春、三一書房、1990


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