川海老の焼き物
材料 川海老・塩・醤油

作り方
 作り方というほどの料理ではないだろう。生の川海老を七輪の上でこんがりと焼き上げ、ぱらっと塩を振るか、醤油ををかけ回していただくだけのもの。
 今では七輪もないので、我が家ではアルミホイルに並べ、オーブンで焼いている。
 頭から鬼殻で口に入れると、これが実に美味い。海老の甘味と焼いた皮の香ばしさが口一杯に広がり酒がすすんでしまう。
 別の調理法として、布巾などでしっかり水気をとり、さっと素揚げして塩をぱらぱらっと振るなんてのもいい。

 平蔵は後始末を配下達と町奉行にまかせ、おまさををつれて外へ出た。
 平蔵が、おまさをみちびいた場所は、市ヶ谷八幡宮境内にある「万屋」という料理茶屋の離れであった。ここは平蔵なじみの茶屋だ。
 酒が出て、川海老の塩焼きやら穂紫蘇の吸い物がはこばれ、女中が去ってしまうまで、平蔵は沈黙したままである。
 おまさには、それが不気味であった。
 平蔵が出した盃へ酌をするとき、おまさの手がふるえ、盃が音をたてた。
「おまさ、お前は何故に、二代目の狐火を庇うのだ。?」
 ずばりと問われ、おまさはとっさにいいぬけもならず、はっと顔を伏せてしまった。こうしたときの平蔵の呼吸は実に見事なものであって、
「お前、先代の狐火のもとではたらいていたとき、いまの二代目勇五郎を抱いたな。」

           (鬼平犯科帳−「狐火」)

鬼平を喰らうへ  江戸を歩くへ  悟雀の部屋玄関へ