エゾジカの生レバーを食べる トップへ
2005年12月上旬。北海道置戸町という、大雪山とオホーツク海の中間ぐらいにある小さな町で知り合った、佐々木さんから、新鮮なエゾジカの生レバーと心臓が届きました。佐々木さんの旦那さんが、誰も足を踏み入れないほどの山奥で撃ち、すぐに解体して送ってくださったものです。下界に降りて、人間に触れたり、畑のものを食べたりしたことのない、まったく天然の鹿だったそうです。 包みを開けて、まず驚いたのは素晴らしい血の香りでした。生臭いことも獣臭いこともなく、ほどよく熟成した美しい血の香りがしました。手にべっとりと付いた血も、心地よく嗅ぎました。これほどの新鮮なレバーは目にしたことがなく、下ごしらえをしていても鮮血が湧き出してきます。刺身をいただくと、思いがけないほど弾力があり、細胞一つ一つが生きていて口の中でプチプチと弾けました。臭みは全然なく、ただただ濃厚で気高いとさえ言える様な鹿の香りが響きました。鹿が食べたであろう、あらゆる種類の草の香り、樹皮の香り、木の実の香り。ある時は湿ったような、ある時は草一本一本が乾いたような、ある時は松脂のような。それらが厳しい寒さの中で、少しずつ蓄えられ、積み重なり、ひとつの力強さをもった滋味となっておりました。あまりに香りと味が濃厚なため、一瞬で理解するのは困難で、きつめに打った塩の味と共に、ゆっくりとかしみると、レバーの中に集積されていたあらゆる香りが分かってきます。それは鹿の記憶を開放することなのかもしれません。 |
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(左:ペースト 右:ハツの炙り) | |
日曜日の午後の、ほんの2、3時間だけの料理会。冬にしては日差しがあって、窓を開け放して、静かな空気の流れを感じながら、食べました。少人数で、じっくり、鹿の旨味を堪能し、その時々の話題を楽しみ、意見を言い、ある人は遠くの景色を見ながらタバコを吸い、ある人はワインを傾け、和やかな時間が過ぎていきました。いいものです。 メニューは ○鹿の鹿レバーの赤ワインマリネから作るペースト 作り方はここ ○鹿ハツ(心臓)の手作りパンチェッタの炙り ○鹿レバーの薄切り塩胡椒焼き ○鹿レバーとホクホクじゃがいもの香草焼き ○熊本県のおばさんのパウンドケーキ ○美美の珈琲 |
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(左:レバーの塩胡椒焼き 右:レバーとジャガイモの香草焼き) |