中学生の時、私は都市部から田舎へと引越ししました。

地区の生活人口が今までの10%ほどに減り、町の隅から隅まで自転車で1時間もあれば回れてしまうすごいトコ。

その上なんと、引っ越してきたこの地区には中学校と言うものがなく、小学校ですら木造のガサい校舎でした。

放火したら間違いなく半日で全焼してこの世から消え去ってしまう事間違い無しな、渋さ百万石の木のお城。

ここに通う事になる弟が、ちょっとかわいそうに思えました。

中学2年の夏休みに引っ越したのですが、知り合った同世代は一人。

これから寂しい中学校生活が始まるかと思うと、前向きになんかなれないほど淋しすぎる。

 

 

 

中学校へは、自転車→電車→バスを乗り継いで行ってました。

隣町にある中学校へ通うためです。

その電車にはいつも高校生のヤンキーな兄ちゃんも乗るため、随分とガラの悪いところだと思ったものです。

しかしそんな疑問もすぐに解決。

中学校からして無法地帯のような所でした。

案の定2学期の初登校で、転校生の洗礼を受けました。

どんな洗礼だったかというと。

殴られたりバタフライナイフなんかで斬り付けられたりしました。

そんな世界はスケバン刑事の特撮モノだけかと思っていましたが、あれが現実を題材にしていた事をあれほど思い知らされてしまいました。

けどこっちも命を守らなければいけないので相手を骨折させたり前歯を折ったり、色々喧嘩もしました。

野蛮だと思うかもしれないけど、そうしなければ普通の中学生として生活を送れないのです。

いじめられっこは前の中学校だけで沢山です。

せっかく転校したのだから、人生リセットだと思ってやれるだけやってました。

顔をボコボコに腫らして帰っても、親父は何も言及しません。

生活水準の低い地区の学校に行くのだからそれくらい当たり前だと思っていたのでしょうか。

喧嘩に対して何も言わない親父に、私は感謝しました。

ただ一言「いい喧嘩だったのか」と言い放つ親父が大きく見えました。

男の喧嘩とは意外とサッパリしているもので、案外あとへは引かないものです。

喧嘩をして相手に認めさせて、友達を作る。勝敗なんかは別問題です。

バイクとはあんまり関係ないんですが、しのはらは思うんです。

いじめられっ子になるかならないかは、これが出来るか出来ないかではないか、と。

出来ない人間は、どの世界にいっても生活など成り立つはずがありません。

現実に目をそむける弱い人間は、結局その程度の人間でしかなく。

前向きに生きようとしない人間は爪弾きにされてしまうのです。

これは、しのはらがこの学校で唯一得た教訓です。

 

 

 

毎日が修行で随分とヤったりヤラれまくったりしたしのはらですが、彼らはいい経験をさせてくれました。

それが、バイクに出会うきっかけをくれました。

川辺に乗り捨ててあるバイクを、修理して友達が乗っていたものを乗らせてもらったのです。

その時、ひどいカルチャーショックを受けたました。

この世にこんな面白い乗り物があるのか、と。

今までの普通にやってきた中学校生活がバカらしくなるほど、感情を言い表せないくらいの面白さ。

アクセルグリップをひねればどこまでも加速していく快感。

上がっていくスピードメーターの針と同じように、自分の中の罪悪感と緊張感が上がって行くのがわかる。

アンビバレンツなこれらの感情が、自分のテンションにいっそう火をつける。

気を抜けば振り落とされそうなくらいの張り詰めた緊張感の中、晴れた空の川辺でいつまでもこの空気の中で暮らしたいと感じました。

乗り終えた後、友達に感想を聞かれたのですが。

このすばらしい感覚を、この時自分の口から表すだけのボキャブラリーを持っていなかった事は、今でもはっきりと覚えています。

それが、篠原 剛のバイクとの出会いです。

喧嘩にいちいち目くじらを立てない親父、そして1年半しか住んでないけど良い経験をさせてくれた地元のみんな!

どうもありがとう!

 

 

 

後日談ですが。

度を過ぎまして、中学生にしてワタクシK察さんに捕まった事もあります。

よいコの皆んなは決して真似しないでね!

 

―ありがとうございました―