―むだい―

 

 かえりのひこうきのしゅっぱつじかんがちかづく。

 くうこうないのきっさてんでせんぱいとゆうしょくをとりながら、

 「あちらはさむいんだろうね」

 とかいわをかわす。

 あたたかいくうきときもちのよいあおぞらのしたですうじつのあいだすごしたこのかんきょうも。

 きょうでおわり。

 よるにはもうきおん15どのわがとちにかえるのだ。

 しゅっぱつびんのとうじょうあんないがくうこうないをこだまする。

 きょうかされたけいびたいせいのなかきっさてんをあとにしてとうじょうぐちへとむかった。

 

 

 ろびーないからみるそとのけしきはゆうやけがかっていた。

 あとすうじゅっぷんもすればまわりはやみにとざされる。

 そしてひこうきがとびたつだろう。

 そしてぶじにしんちとせくうこうへとうちゃくできるだろう。

 そしてぶじにいえにつくだろう。

 そのよそうがさえぎられそうでたちきられそうでこわかった。

 

 

 ひこうきがとびたってすぐまどからちいさなひかりのつぶがめのなかにはいってきた。

 りりくのかそくをまだからだにうけながらゆっくりとながれるまちのひかりはひにくなほどきれいだった。

 いなざわしをいちぼうできるこのそらのくうかんはぜっけいだ。

 ちとせにもはねだにもないひかりのつぶはとおくまでつづきわたしのにちじょうかんかくはしゃだんされた。

 ゆめでもみているのか。

 ちにあしがついていないとてもおそろしいこのかんかく。

 そのひかりはまるであめりかでたましいをうしなったひとたちのともしびにみえた。

 ながれるひかりのつぶたちはとうろうながしのようにゆっくりとゆっくりと。

 まどからあらわれてはきえ。

 まどからあらわれてはきえる。

 そこにじぶんもいけそうなふんいきにのみこまれそうになったとき。

 

 「べるとさいんがきえるまで―」 

 

 あてんだんとのひとことでわれにかえった。

 なにをかんがえていたんだろうか。

 このあいだゆめにでてきたうちのしんだかいいぬにくるのはまだはやいといわれたばかりなのに。

 

 

 

 いのちというもののかちづけはじゅみょうのながさのみにあるとおもっています。

 ろうすいによるものもじこによるものもびょうきによるものもすべてがじゅみょうです。

 それがいのちのきびしいびょうどうさであり。

 じゅみょうをかけていきているじんせいであるからこそひとはしあわせにいきたいとねがい。

 そしてくらしをするのです。

 しかし。

 あれがひとのじゅみょうであるならば。

 これほどくやしいものはありません。

 

 

 

 

 なくなったかたのごめいふくをいのりつつ。

 いまいきているすべてのひとにかごとしゅくふくがありますように。

 


 

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