56. 献身

献身

可能な愛のもっとも深い強烈さのなかに全面的に入っていきなさい。それを、あなた自身のなかにある、神性へ向かう開き口にしなさい。自分の女性的なエネルギーが流れるのを許しなさい。

 

 ミーラ、インドの女性神秘家は、ほんとうに狂った帰依者、"バクタ"だった。神との途方もない愛とエクスタシーのなかにいた。彼女は女王だったが、通りで踊り出した。家族は彼女を勘当して、毒殺しようとした。王家の家族にとって、彼女は恥さらしだったからだ。
 そこは、国のもっとも因習的な地域のひとつ、ラジャスタンだった。そこでは何世紀もの間、誰も女性の顔を見たことがなかった。
女性の顔は覆われていたのだ。常に覆われていた。当時、それほどにもばかげた環境のなかで、女王が通りで踊り出した。群衆が集まった。ところが、彼女は神性であまりにも酔っていたために、彼女の"サリー"はずり落ち、彼女の顔はあらわになり、彼女の手は剥き出しになったものだ。家族は明らかに、非常にあわてた。
 だが彼女はすばらしい唄を、世界中でかつて歌われたことがないようなすばらしい唄を歌った。それらは彼女のハートそのものから来ていたからだ。それらは自然に起こる発露だった。
 彼女は夫に言った。「いつまでも自分が夫だとは、信じつづけないでください..私の夫はクリシュナです。あなたは哀れな代用品にすぎません」
 王は非常に怒った。彼は王国から彼女を追放した。彼女はマトゥラに、クリシュナの場所に行った。そこにはクリシュナのもっとも偉大な寺院のひとつがある。その寺院の首席僧侶は、生涯どのような女性も見ないという誓いを立てていた。三十年間、彼はどのような女性も見ていなかった。女性は誰もその寺院に入るの許されていなかったし、彼は一度も寺院を空けたことがなかった。
 ミーラはそこに着いて、寺院の門のところで踊った。門番たちはあまりにも魅せられ、引きつけられたために、彼女を遮るのを忘れた。彼女は寺院に入った。彼女はこの三十年間でそこに入った最初の女性だった。
 首席僧侶はクリシュナを礼拝していた。彼はミーラを見て、自分の目が信じられなかった。彼は狂っていた。彼は彼女に向かって叫んだ。「ここから出て行け! 女、ここから出て行くんだ! ここでは女は許されていないのを知らないのか?」
 ミーラは笑って行った。「私が知るかぎりでは、神を除くすべての人が女です..あなたもよ! クリシュナを三十年礼拝していて、それでもまだあなたは自分が男だとでも思うの?」
 それは首席僧侶の目を開かせた。彼はミーラの足もとに崩れ落ち、こう言った。「そのようなことを言った人はこれまでひとりもありません。でも私にはわかります、私は感じることができます..それは真実です」
 もっとも高い頂きでは、愛の道に従おうと、あるいは瞑想の道に従おうと、あなたは女性的になる。
THE BOOK OF THE BOOKS, Vol.5, Discourse 10

 ミーラの愛は、完璧な人間の愛だ。彼女に必要なものはなにもない。彼女はクリシュナからはなにも望んでいない。彼女はただ与えつづける。彼女には歌う唄がある..彼女は歌う。彼女には踊るダンスがある..彼女は踊る。彼女には得るものはなにもない、彼女は与えるだけだ。それなのに彼女は千倍も受け取る..それは別のことがらだ。
 もしミーラになりたかったら、まずあなたは人間的な愛の必要を満たさなければならない。さもなければ、あなたのクリシュナはあなたの想像、抑圧された欲望の投影にすぎなくなる。
 人間の限界を覚えておくがいい。そして、あなたの限界を覚えておくことだ。そして、愛がどのような種類であれ可能であれば、そのなかに入って行くがいい。不可能なことを欲しがってはいけない。さもなければ、あなたは可能なものでさえ見逃す。可能なもののなかを通って行きなさい。可能なものを終わらせなさい。あなたの存在が満たされてそこから出てくるようにしなさい、そうすれば不可能なことも起こりうる。あなたに能力がそなわったのだ。
 まず人間の愛と喜びと、人間の愛の惨めさを通り抜けることだ。それを通して自分を成熟させるがいい。
SUFIS : THE PEOPLE OF THE PATH, Vol.2, pp.87-88


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