55. セックス(性)

セックス(性)

セックスを、最後の段階ではなく、最初の段階にしましょう。

 

 ふたりの恋人が深い性的なオーガズムに入っているとき、彼らは互いに溶け合う。そうなると、女性はもはや女性ではない、男性はもはや男性ではない。彼らはまさに"イン(陰)"と"ヤン(陽)"のサークルのようになる。互いに届き合い、互いに出合い、溶けて、自分たちの存在証明を忘れている……。だからこそ愛は非常に美しい。この境地は"ムドラー"と呼ばれている……そして、全体とのオーガズムの最後の境地は、"マハムドラー"..偉大なオーガズムと呼ばれている。
 オーガズムとは、そこではあなたの身体がもはや物質とは感じられない境地だ。それはエネルギー、電気のように振動する。それが、基盤そのものから、あまりにも深く振動するために、あなたはそれが物質的なものだということを完全に忘れる。それは電気的な現象になる..そしてそれは、確かに電気的な現象だ。
 やがて、彼らが互いに愛し合い、互いに明け渡していたら、彼らは脈動の、エネルギーであるこの瞬間に明け渡す。しかも彼らは恐れていない……。
 身体が境界を失うとき、身体が実際に蒸発して、エネルギー、非常に微妙なリズムしか残っていないとき、それは、まるで自分がいないかのようだとあなたには思われる……。人は、深い愛のなかでしかそのなかに入れない。愛は死のようだ。あなたは、自分は身体だ思っているかぎりにおいて死ぬ。あなたは、自分の物質的なイメージに関するかぎり死ぬ。あなたは身体としては死ぬ。そしてエネルギー、活力に満ちたエネルギーとして進化する。
 そして、パートナーたちがひとつのリズムで振動し始めると、彼らの心臓の鼓動と身体はひとつになる。それはハーモニーになる……そうなると彼らはもはやふたりではない。
 いまでは彼らはひとつのサークルだ。そして彼らはいっしょになって振動する、いっしょになって脈動する。彼らの心臓はもはや離れてはいない。彼らはメロディーに、ハーモニーになった。それはありうるかぎりもっとも偉大な音楽だ。それに比べると、ほかの音楽はすべて弱々しいものだ。それに比べると影のようなものだ。
 同じことが、相手の人とではなく、存在全体と起こるとき、そのときにはそれは"マハムドラー"だ。そのときにはそれは偉大なオーガズムだ。
TANTRA : THE SUPREME UNDERSTANDING, pp.20-135


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