51. 勇気

勇気

これは、あなたがひとたび神を見い出す道に踏み込んだら、後戻りはないことを思い出させるためのものです。これには途方もない勇気が必要です。

 

あるときイエスは、朝早く湖に来た。ひとりの漁師が網を打ったばかりで、太陽はまさに地平線上を昇ろうとしていた。イエスが漁師の肩に手を置くと、漁師は彼を見た。一瞬の間、彼らの間ではことばが交わされなかった。イエスはただの彼の目を見入った。その人は恋に落ちた。なにかが起こった。
 イエスは言った。「いつまでお前は魚を捕まえて、自分の生涯を無駄にするつもりなのか? 私といっしょに来るいい。お前に神を捕まえる道を見せてあげよう」  その人には途方もない勇気があったにちがいない。彼は網を湖のなかに捨てて、ひとつの問いすらたずねることもなく、イエスについて行った。
 彼らが町のすぐ外にいると、ある人が走って来た。彼は漁師に言った。「どこに行くんだ? 気でも違ったのか? 家に帰って来い! 病気だったお前の親父さんが死んだんだ。だから俺たちは親父さんの最後の儀式と礼拝の手筈を整えなければならない」  漁師は初めてイエスに話しかけた。彼は言った。「死んだ父の、息子としての義務を果たすために、三日間だけ家に帰るのを許していただけますか?」
 イエスは言った。「心配することはない。町には死んだ人びとが非常にたくさんいる..彼らが面倒をみてくれるだろう。死人が死人を埋めるのだ。お前は私といっしょに来るがいい。そして、もしお前が私といっしょに来たら、そのときには後戻りはない」  そこでその人はついて行った。
TAO : THE GOLDEN GATE, Vol.1, pp.236-237


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