35. ムードの習得

ムードの習得

幸せであろうと、不幸であろうと、「これもまた過ぎ去る」と覚えておきましょう。この鍵が、ムードの犠牲者になる代わりに、あなたを自分のムードの支配者にしてくれます。

多くの賢者たちを擁していた王が自分の富に不満を感じた。そして近くの国、彼の国よりも力の強い国が攻撃の準備をしていた。
王は死を、敗北、絶望、寄る年波を恐れていた。そこで、彼は自分の賢者たちを呼んで言った。「なぜだかはわからないが、私はある指輪を捜さなければならない……それは、不幸なときには私を楽しませてくれると同時に、もし幸せなときに見たら、悲しませてくれるという指輪だ」
 彼は鍵を、ふたつの扉を開くことのできる鍵を求めていた――幸福の扉と不幸の扉。彼はなにを求めていたのだろう? 彼は自分のムードの習得を求めていた。彼は自分のムードの主人になりたいと言っていた、彼はもはやそれらの犠牲者になるのを望んでいない。
 賢者たちは相談しあったが、どのような結論も見い出せなかった。
ついに彼らはスーフィー神秘家のところに言って助言を求めた。スーフィーは自分の指から指輪を外し、それを彼らに与えて言った。
「ひとつ条件がある。それを王に与えるがいい。だが、彼に伝えることだ。すべてが失われ、混乱の極みに達して、苦悩の極みに達して、まったく望みがないときにしかその石の裏側を見てはならない。さもなければ、彼はメッセージを逃す」
 王は従った。彼の国は失われ、自分の命を救うただそれだけのために、彼は王国から逃げ出した。敵が迫っていた。彼は騎馬の音を聞くことができた……しかも馬は死んでしまい、彼は自分の足で走った……彼は窮地に陥った。底の知れない深淵しかなかった。
 最後の瞬間になって、彼は指輪を思い出した。彼はそれを開けた。
石の裏側を見ると、そこにメッセージがあった。そこには――
 これもまた過ぎ去る、とあった。
Osho UNTIL YOU DIE, pp.192-204


トップへ