19. 中心が定まる

中心が定まる

中心が定まったままでいることです。他人の意見や、あなたをあちらこちらへと押しやる他人の企てに操られるのを自分に許してはいけません。他人のレベルに落ちてはいけません。

かつて仏陀の時代に、もっとも有名な美しい売春婦が仏教の僧、乞食に恋をしたことがあった……。
 彼女は彼に、仏教の僧たちが旅をやめる雨期の四ヶ月間、自分の家に泊まって欲しいと頼んだ。その僧は言った。「私はマスターに聞かなければならない。もし許してくれたら、来ることにしよう」
 ほかの僧たちは非常に嫉妬した。その若者が仏陀のところに言って願い出ると、多くの者たちがそれを聞いていた。彼らはみな立ち上がって言った。「よくないことだ。その女がお前の足に触れるのを許したことですらよくないことだったのだ。『女性に触れてはいけない。女性に触れさせてはいけない』と仏陀は言ったではないか。お前は規則を破った……しかもいま、お前はその女と四ヶ月もの間いっしょに泊まることを願いでているのだぞ!」  だが仏陀は言った。「私は、あなた方に、女性に触れてはいけない、女性に触れられてはいけないと言った。それはあなた方がまだ中心に定まっていないからだ。この男にはその規則はもう当てはまらない。私は彼をずっと見守ってきた――彼はもう群衆の一部ではない」
 さあ、これはあんまりだった! こんなことは以前にはけっして一度もなされたことがなかった。弟子たちはみな怒った。そして何カ月もの間、アムラパリの家でなにが起こっているかという噂が大袈裟に行き渡った――あの僧はもう僧ではない、彼は堕落した、と。
 四ヶ月たって、アムラパリとともにその僧が帰って来ると、仏陀は彼らを見て言った。「女よ、私になにか言うことがあるのか?」
 彼女は言った。「私はあなたに入信の儀式を行なっていただくために来ました。私はあなたの弟子を悩まそうとしました――でも、失敗でした。これは私の初めての負けです。私は男とならいつも成功してきました。でも、彼を悩ますことはできなかったのです、ほんの少しといえども。私のなかにも、どうしたらこの中心に定まっていることを達成できるのかという大きな欲望が湧いてきました。
 「彼は私といっしょに暮らしました。私は彼の前で踊りました。彼の前で歌いました。あらゆる方法で彼を誘おうとしました。でも、彼はいつも彼自身のままでした。私は彼を転向させようとしました――でも、彼が私を転向させたのです、ひとことも話さずに。彼が私をここに連れて来たのではありません。私は自分で来ました。私は初めて尊厳とはなにかを知ったのです。私はそのアートを学びたいのです。」彼女は仏陀の弟子になった。
 彼は常に自分の足で歩く……彼をあちらこちらと押しやる道はどこにもない。彼は完全に彼自身のままだ。非常に中心が定まって、自分の存在のなかにしっかりと根を下ろしている。人がトゥリヤ、四番目の境地を知ったら、心の散漫はない。そのときには人はどこでも生きることができる。
 自分の生の環境を変えようとしてはいけない。自分の態度を変えようと試みなさい。内側の状態を変えるために外の状況を使いなさい。状況を変えるのはたいした変化ではない――あなたは自分自身と世界をだましている。ほんとうの宗教は意識の状態を変えることで成り立っている。
 より高いものを探し求めなさい。ひとたびあなたが、そのより高いものが自分のエネルギーに届いたことを知ったら、より低いものはおのずと枯れ始める。それがほんとうの宗教だ。
Osho THE SUN RISES IN THE EVENING, pp.213-216


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