あなたを失うことより
紅茶をそそいでる
ミルクをかきまぜる
目の前の友達の話に うなずいてる
時計を気にしてる
手帳をめくってる
ちゃんと生きてることに 気がつく
あなたがいないのに
言葉少なに たってゆくたび
心と心 すれちがうたび
夜ごとに怯えた
別れに怯えた
だけど 今 やっとわかった
あなたを失うことより
二度と会えなくなるより
一人でも歩けるじぶんになるのが怖かったと
鳴らない電話を見つめて
それでも夜を越えられる
そんな私になることが
貸したままのビデオ
わたし用のカップ
あの部屋のどこかに
今も そっと しまっていて
投げつけた言葉
傷つけた日々を
懐かしいなんて まだ思わないで
疲れたと嘆く かすれえた声が
ちいさくなってゆく やせた背中が
日ごとに遠くなる 全てが遠くなる
そして 今 やっとわかった
あなたを失うことより
二度と会えなくなるより
一人でも歩けるじぶんになるのが怖かったと
鳴らない電話を見つめて
それでも夜を越えられる
そんな私になることが
あなたを失う切なさも
二度とは会えない哀しさも
行き過ぎる季節の中
きっと溶かしてゆける
鳴らない電話の向こう
今でも膝を抱えて
苦しむあなたがいるなら