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「眠れぬ夜の森の賦」 は、東京でもまだ東日本大地震の余震が続く不安な日々に制作しました。制作にするにあたり被災地のことを思いながら、東北地方の県の木(ケヤキ、キリ、アカマツ、リンゴ、シャクナゲ、バラ、ナラ)などをモチーフにしました。
 
また、アメリカのダイアナ・ドーンクライダー(Diana Doan-Crider)さんの『The Oak Tree(ナラの木)』という詩を、サンドブラストで彫りました。この詩は、2011年4月に盛岡タイムスで紹介されたのがきっかけとなって、東北の各地方の言葉で詩を訳し、被災者を応援する詩として広がっているそうです。気仙地方の方言訳は陸前高田のHさんとNさんに頼んで訳してもらいました。

この未曾有の耐えがたき災害を前に、私自身、落ち着かぬ心をおさえようと思いながら、また同時に、「慰霊」、「鎮魂」、「応援」の気持ちを込めて制作いたしました。ガラスが2重になっており、内側にはパウダー状のガラスを使って焼きつけた、県の木の葉の形が、ボワッと浮かび上がります。また、外側の紫色のグラデーションのガラスに、詩を彫りましたので、電気を消すと詩の文字がよくわかります。

「眠れぬ夜の森の賦」 2011.9月制作 高橋園子

  

THE OAK TREE
 
 

A mighty wind
blew night and day
It stole
the oak tree's
leaves away

Then snapped its boughs
and pulled its bark
Until the oak was
tired and stark.

But still the oak tree
held its ground
While other trees
fell all around.

The weary wind
Gave up and spoke,
"How can you still
be standing Oak?"

The oak tree said,
"I know that you
Can break each branch
of mine in two,
Carry every leaf away,
Shake my limbs,
and make me away.

But I have roots
stretched in the earth.
Growing stronger
since my birth.
"You'll never touch them,

for you see,
They are
the deepest part of me.

Until today,
I wasn't sure Of just
how much I could endure.

But now I've found,
with thanks to you,
I'm stronger
than I ever knew."

Johnny Ray Ryder Jr.

ナラの木 
(岩手県南部 気仙地方の方言訳)
 

てぁした強い(つえぇ)風っこ吹きあんした
昼間も夜間(ようま)も
ナラの葉っぱっこも 
みんな吹っとばし
木の枝っこも何も ぴゅんぴゅん揺っさぶり

木の枝も むげるぐりぁでがんした
終い(しめぁ)には 
ナラの木 
まるっぱだがになってしめぁんした

んでも土(ちぢ)さ 
すっかりと立っていぁんした
ほがの木は 
みんなぶったおれてしめぁんした

こやぐなってしまった風っこは 
あぎらめで聞いたんだど
「ナラの木よ、
なじょしてまだ立ってられんのすか」

ナラの木は返事したど
「おめぁさんは おらの枝っこ 折るごども
葉っぱっこ みんなふっとばすごども
枝っこ 揺っさぶるごども
おらのごど 
ゆっさゆっさ揺っさぶるごどもでぎるべぇ

んでも おらには土(ちぢ)さ 
ひろがっだ根っこがあんのし
おらがうまれだどぎがら
べぁっこじじ強く(つぇぐ)なってきあんのし
おめぁさんは 
おらの根ぇっこさ なじょしても触れねぇべぇ

わがるべ
根っこは
おらのいじばん深い(ふけぁ)どごろにあるからなのす

ほんとは今まで
おらにはようぐ わがってねぁがったのす
おれ自身(ずしん)なんぼぐれぁのごどに 
がまんでぎるもんなんのが

んだども いまおかげで わがりぁんした
おらが思ってだよりも
おらはもっどもっど強く(つぇぐ)なっでだのでがんすな」

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