夜桜
 
日が沈み月が昇る、今夜は満月、夜族でなくともこの月を見るために夜空を見上げる
そんな気持ち良い月光を浴びながら、セラスはヘルシング邸の庭の、ある場所を目指して歩いていた
 
「良い夜ですわね」
 
少し前方、石で造られたベンチから声を掛けられた、既に何者であるかは判っている、「魔弾の射手」の使い手、リップヴァーンその女である、少し微笑みながらコッチを見ているのに吊られて微笑みながら
 
「そうですね、雲も無く、空気もゆっくり流れて、でも、こんな夜にこんな所でどうしたんです?」
 
この時期はもっとふさわしい場所がある、何故そこに居ないのかと、少し、不思議そうな顔で聞いてみる
 
「貴女を待ってたんですわ、こんな夜ですもの・・・それに互いを知るのも必要です」
 
そう言いながら、右手を持ち上げて持っているモノを見せる
 
「コレを手に入れましたの、一人では詰まりませんわ、お相手してくれますでしょう?」
 
セラスも強くはないが飲めないことも無い、それに相手が言っている事も一理ある、同じ所に属しているとは言え、互いが未知数なもの確かだ
 
「お付き合いします」
 
それじゃあ、とリップヴァーンが立ち上がり横に並んで歩き出す、歩きながらも会話は止まらない、仕事・雑誌・新しく入った部隊、どれも他愛ない事だが、二人で話していると次から次えと話題が変わるしかし、一陣の風があの独特の香りを運んできた所で急に話が止まる
 
「満開ね」
 
現物も見ずに確信に満ちた声でリップヴァーン
 
「一番綺麗な頃ですよ」
 
早く見たいと言った感じにセラス
 
二人は道を反れて林の中に入っていく、道しるべは無い月の出ている方向に進み、そして、月が天空と地上の二つの夜空に現れた時、二人は同時に声を出した
 
「きれい」
 
そこには、一本の桜の巨木、傍には池があり水面は鏡の様に夜空を月をそして、満開の桜を写している
 
「夜の世界ですわね、では、セラスさん」
 
普段は来客用である椅子に腰掛けながら、セラスにグラスを差し出す
 
「注いで差し上げますわ」
「あ、ありがとう御座います」
 
リップヴァーンはソムリエナイフを使い優雅な手つきで封を外し、螺旋に巻かれたソレをコルクに差し込む「ポン」コルクの栓が抜けると同時にワインの匂いが鼻腔をくすぐる
 
「あ、いい匂い」
 
その匂いは、ほのかに甘く、それでいてその独特さで他の匂いに引けを取らないが、邪魔もしない、どんな料理にも合うが造り方が難しい為、本数が少なく市場に余り出回らない、リップヴァーンが、どんな方法で入手したか聞きたくなったセラスだが、あえて聞かない事にした、そう考えている間にもグラスに半分ほどワインが注がれる。
 
「注いで下さる?」
 
リップヴァーンにそう言われ、差し出されたボトルを受け取ると、少したどたどしい仕草でワインをグラスに注ぐ
 
チン
 
グラスを合わせる音が響く
二人は何も喋らずただ桜を見てグラスを傾ける、思いを馳せるは、今は亡き戦友か、今在る自分か、それとも盃を飲み交わす友か
其れを知るは、二つの月

大分、時期を過ぎていますが、どうしてもやりたかった設定(無理やり終わらした様な感も(^^;))