「大切な記憶」
バトーが記憶を失った、いや、正確には思い出せなくなったと言った方が正しい。
事の発端は、あるサイトにアクセスした人間が記憶を無くす事件が発生した事
何故九課がコレを取り扱う事になったかと言うと、その記憶喪失者の中に政府の関係者の息子が含まれていたのがその理由、しかし、事件そのものは単純なものこの上なかった、事件と言うよりむしろ事故に近かった
そのサイトは、自分の記憶を一定期間思い出せない様して擬似記憶喪失を創り出し、どの位の期間で思い出せるか競う「ゲーム」的なモノで、一定期間以上思い出せない場合は、自分が指定したコードを使う事で思い出すはずだった、だが、プログラムに「バグ」が存在し、そのサイトにアクセスしてコードを使った時は思い出すが、そこから出ると全く思い出せなくなってしまうのだその上「記憶」自体がネットの中に孤立してしまい通常の手段では取り出せなくなっていた。
そこで、イシカワとボーマに検索させ「孤立した記憶」を探し出して本人に戻すことで事件は解決するはずだった、そう「だった」のだ、事件後の処理でそのサイトを消去する事になったのだが、「バグ」が邪魔をして消去する事が出来なくなっていた、モノがモノなだけに、これも九課でやることになった、イシカワ・ボーマは「孤立した記憶」探しをしていたし、サイトー・トグサ・パズでは危険だと言う事で私が潜り消去する事になった、バックアップをバトーに任せて・・・。
トグサ「ダンナが記憶喪失!?」
課長「そうだ、自分の名前すら覚えとらん」
パズ「何でまた」
イシカワ「例のサイトを消去するために少佐のバックアップをしていたんだが、その時にやられたらしい」
サイト−「だったら「孤立した記憶」を探し出して戻せばいいんじゃないのか?」
ボーマ「ネット上にバトーの記憶は無かった」
トグサ「じゃあ何処に?」
イシカワ「アイツの頭の中だ」
トグサ「頭の中?」
パズ「どうゆう事だ?」
ボーマ「少佐がバグを処理している途中でバグが暴走を始めた、少佐は自前の防壁で助かったが、バトーは記録をしていた為にバグ自体が頭の中に入っちまったんだ」
サイト−「それなら、バグを消してやれば元に戻るだろ?」
イシカワ「所がそうもいかない、記憶喪失の原因はバグがアイツの記憶を包み込んでる事にある、バグを消してしまうとアイツの記憶も一緒に消してしまう事になる」
課長「しかし、本当に思い出せんのか?」
イシカワ「いえ、思い出させる方法が無い訳では無いんですが・・・」
課長「何だ」
イシカワ「プログラムでは、コード指定をしてから記憶喪失になる仕組みになってました、逆に言えば、コード指定しない限り擬似記憶喪失にはならないんです、ですから、バトーも記憶喪失になる前に何らかのコードを指定したはずなんですが、それもまた記憶になってるんで見つけようが無いんです」
トグサ「となると、指定したコードも記憶になっているから、記憶喪失になっているダンナには指定コードすら思い出しようが無いと言う事か」
イシカワ「ああ、そう言う事だ」
課長「なるほど」
パズ「所で少佐は?」
課長「バトーの所だ、自分のせいでは無いとは言えやはり気になるのだろう」
私のせいだ、私がバトーにバックアップを頼まなければ、いや、バックアップなど九課の設備でも十分だった、では何故?自分に自信が無かったのか?違う自信はあった、あんなバグ取るに足らない、攻性防壁を送り込んでくる訳でも疑似体験の迷路に迷い込ませる訳でもないただのバグなのに、何故私は、バトーにバックアップを頼んだりしたのか?解らない・・・
男「・・・どうしたんだ?」
「何が?」
男「何をそんなに思いつめた顔をしている?」
「私のせいで貴方は記憶喪失になった」
男「なんだそんなことか」
「そんなこと?」
男「俺が何で記憶喪失になったかはアンタから聞いた、しかもアンタが助けてくれなければ俺はどうなっていたか解らないんだろう?それに比べればな、その上、記憶が戻らない訳でも無さそうだ、なぁーに、記憶なんてすぐ戻っちまうさ」
(記憶を失っても性格は変わらないようね)「そうね、どうなるか解らないよりはね」
男「所で、俺はアンタの部下だったそうだが、その時俺はアンタの事を何て呼んでたんだ?記憶が戻ったときに、怒られたんじゃかなわないからな」
「賢い判断ね、貴方は私の事を「少佐」と呼んでいたわ、この呼び方に何か思い出せる事はある?」
男「「少佐」か・・・、何も思い出せない、悪いな」
「そんな簡単に思い出せるなら誰も苦労しないわ」
男「確かに」
「それじゃあ今日はもう休みなさい、明日から電脳検査が始まるわ、休んでおかないともたないわよ、それじゃあね」
男「ああ・・、少佐!」
「何?」
男「おやすみ」
「おやすみ」
それから一週間バトーは鑑識の元で電脳の検査を受けたが、コードは元より、それに繋がりそうな情報も出てこなかった、そんな時でも事件は起きる、今回はバトー抜きでの作戦となるかと思ったが、相手が末端のチンピラであることと、特定の状況下に置く事で記憶が戻るかもしれないと言う赤服の提案もあり特別に課長からの許可がおりバトーも現場に行くことになった
課長「イシカワ・ボーマは関連組織の洗い出し!」
イシカワ・ボーマ「了解!」
課長「サイト−は海上から少佐達を支援!」
サイト−「了解!」
課長「少佐・パズ・トグサは目標の確保!」
少佐・パズ・トグサ「了解!」
課長「バト−は置いてかれるなよ!」
男「・・了解」
課長「お前達は給料分働いて来い!!」
いつもの課長のこの掛け声で作戦は始まった
「タチコマ、遅れるなよ!」
タチコマ「了ー解!!」
情報どうりならものの15分で終わる作戦、敵を倒して目標を確保、何の問題もない、はずだった
想定外だ敵が多い、それだけでは無い武器も強力な上に戦闘技術も並以上だ何処かで情報が漏れたか?それとも初めから違っていたのか?しかし、今はそんな事を考えている暇は無い、敵を確実に倒して目標を確保するそれしか選択権は無い、フッと足に何かが触れる、トラップ!気付いたときにはトラップは正常に作動し炎が身体を包み込もうとする
男「素子―!」
「!」
強引に引き戻された顔の前、見慣れた義眼に私の顔が映っていた
バト−「何やってるんだ!あんなトラップにひっかかりやがって!!」
「??」
バト−「おい!なにボサッとしてるんだ!目標は誰だ?何処にいる?」
バトーに目標および所在地のデータを渡す、すぐにバトーは駆け出して行った、状況が良く解らないが、もしかしてと思いながらも今は任務が最優先事項、全てはこれが終わってからだと、私も走り出す。
任務完了後、すぐに、バトーの電脳検査が始まった、その結果、バトーの電脳にはバグの痕跡は無し、記憶も完全に戻っているとの事だった、皆が安堵して口々に祝いの言葉をバトーに浴びせた、しかし
バト−「何の事だ?」
トグサ「何の事って」
パズ「覚えてないのか?」
バト−「?」
課長「今度は何だ?」
イシカワ「何も問題ありません、記憶喪失になっていた時の記憶と、なる前の記憶が混ざらないように、記憶が戻ったときにその前の記憶が消されるようプログラムされてましたから、それが働いたんでしょう」
課長「そうか、では元に戻ったと言う訳だな、例のサイトは消去してあるんだな?」
ボーマ「消去済みです」
課長「では、この件はこれで終了だ」
バトー「おい、何の話だ?」
課長「報告書を読め」
バト−「分かったよ、少佐は?」
課長「自分のセーフハウスに戻ると言っていたが」
バト−「じゃあ俺も戻るとすっかな」
課長「よかろう」
サイト−(そういえば、バトーの指定コードって何だったんだ?)
自前のセーフハウスでくつろいでいたら、あの男がやって来た、記憶喪失になったあの男“バト−”が、報告書を読んだようだ
「何か御用?もう眠りたいんだけど」
バト−「つれねーな、記憶が戻ったってんのに、祝いの言葉も無しかよ」
「記憶喪失時の記憶が無いんだから、祝いの言葉なんて贈ったって意味無いでしょ、混乱するだけよ」
バト−「・・・そう言やーよ、俺があの時聞いたこと、まだ覚えてるか?」
「聞いた事?」
バト−「何で俺をバックアップに指名したかって事だよ」
「あぁ、その事ならその時答えたはずよ、「暇そうだったから」って」
バト−「確かにそうだが、今んなって考えてみると違うような気がしてな」
「じゃあ何だというの?」
バト−「今回のバグは記憶を消しちまうもんだったろ?その事を考えるともしかして、少佐は自分の記憶が消えちまうのが怖かったんじゃないかってな、前に言ってたろ「自分が自分である為には多くのものが必要で記憶もその一部だ」ってな、違うか?」
「貴方にしては、頭を使った答えね、まぁ、それに免じて当たった事にしといてあげるわ」
バトー「ったく、何だよ、まぁ、用件はそれだけだ、じゃあな」
「あらそぅ・・、バト−!」
バト−「何だよ」
「今夜はもう遅いわ、泊まってたら?」
バト−「いいのか?」
「早くしないと気が変わるかもよ」
バト−「それじゃあお言葉に甘えるとするか」
「どうぞ」
そうだったの
私が貴方を指名した理由
もし私が記憶を失ったとしても貴方が覚えていてくれるから
私の記憶を私自身を
もし貴方がまた記憶を失っても私が覚えていてあげる
貴方の記憶を貴方自身を
でも
もう失わないで貴方との時間・私との時間
貴方と私の大切な記憶
記憶喪失ネタ、結構難しかった(^^;)記憶喪失前の性格を崩さないようにしつつ、その時では絶対口にしないであろう言葉を同時に考えねばならない事を書いてる途中で気付いて、大幅に書き直しました(汗)