「体現者」

「と、トグサ」

「はふぃ、なんうぇすか?かひょう?」

余りの格好に声をかけてみたものの、致し方なしと考え直し、いやいいと言うしかなかった、生身ゆえに多少のリスクを背負いそれに悩む事も無い訳ではないであろうが、いつも真面目に任務をこなし家に帰れば良き夫であり父親なのであろう者に流石にこんな理由で義体化を勧めるのは酷というものであろう、しかし・・・

「クシュ!・・すびばぜん」

本当に大丈夫かと周りの皆から言われているが、薬もあるしマスクもするからと鼻をかみながら言っている、言っているそばからクシャミを一つ、本当に大丈夫だろうか

「皆、集まってくれ」

ワシの一言で全員グリーフィングルームに集まる、何時もなら静かなその部屋に苦しそうな息とそれを詫びる声が聞こえる中、説明を始める

「今日は先日送られてきた総理官邸爆破予告についての再調査だ」

「何かあったのか?」

「うむ、差出人となっている「桐嶋」と言う男だが、生きている可能性が出て来た、桐嶋は、三年前に爆破するといった内容の予告状を総理官邸に送ったとメディアに流し、取材ヘリに手製爆弾を積んで空から爆破しようとしたが、その前に空中爆発を起こし、容疑者死亡のままの事件は解決、当時、ヘリには桐嶋らしい人物が乗っていた事までは確認されている」

「派手な野郎だ、で、そいつが生きてるってか?」

「そうだ、今回の予告状は送られて来たはいいが、時期的に意味が無い事やその他の組織にもそれらしい動きが無い事から悪戯だと判断されたものだが・・」

その時、ドアが開いて徹夜明けなのであろう、疲れた表情のイシカワが遅れて詫びの言葉を言いながら入ってきた

「どうだ?」

「今回と前回の予告状を照合、内容について類似点が24箇所、筆跡鑑定においては97%の確立で同一人物であるとの結果が出ました」

「おふぁじふぉきに・・グズ、ハァ」

「トグサ、いい、前回に書いた物が流出した可能性は?」

「それはないです、こいつは変なヤツで、前回同様、予告状の紙をその日の新聞のチラシ裏面を使用、発送日当日の朝刊の折込チラシ、30%OFFだそうです」

「よし、現時点より任務を再調査から容疑者の特定およびその確保に変更、トグサはワシと来い、他の者はは少佐の指示に従って行動開始、以上!」

聞き取り難い声でお待たせしましたと言って車のドアを開けるトグサに「すまんな」と声を掛け様として顔を見ると、花粉防止のゴーグル・マスクを付けている、見る者が見れば危険を感じるような胸の膨らみも、ポケット・ティシュが入っているのであろうと理解するのにさして時間はかからないだろう、一言、大変だなと声をかけた。

その後、総理には安全な場所に避難してもらうよう進言、直ぐに承諾が得られたので速やかに車に乗ってもらう為に移動している途中、状況を少佐に伝えると同時に移動中の警護をバトーと共にするように命じる。

(課長)

(トグサ、何だ?)

(電通で失礼します、前回、左堅の自宅を調べた時に押収されたものを見直しているんですが、その中に気になる物があったんです)

(何だ?)

(車の写真です)

(写真?)

(ええ、その時の総理避難用車両のです、それともう一つ気になる事が、前回は「爆破する」と言うだけの簡単な内容だったのにもかかわらず総理が非難をしたのはメディアと言う媒体を介していたために「爆破」の信憑性が強まったからでした)

(うむ)

(で、今回ですが、状況が全く同じではありませんか?爆破の予告・総理の車での非難、この次は爆破の実行でしょう)

(確かに、だが同一犯であるならばある種の一貫性はあると思うが)

(その通りです、同一犯なら狙いも同じはず、前回失敗しているなら尚更です、けれども前回は「爆破予告」今回は「総理官邸爆破予告」文字を見ただけでは目標が違うようにも見えますが場所は「官邸」です、そこでさっきの車の話なんですが、非難するのに車を使うのは通常手段です、前回もそうでした、そして犯人はヘリで来た)

(それは、警察の目を欺く為と同時に逃走用としても使うためだろう)

(それもあります、しかし、これを見て下さい)

と言ってある映像を写してきた、撮影の為であろう総理官邸を通過し空中でホバーリングを続けるヘリ、しかし、機内にカメラマンの姿は無く何処かフラフラしている、と、突然ヘリが爆発し落下していく、ここで映像は途切れた

(前回の事件映像だな)

(ええ、爆破が目的であれば、総理官邸を通過する時に爆弾を落とせばいい、しかし、そうしなかった、そこでです、課長、建物内に居る特定の人物を目標とする場合どうします?)

(建物内に居る特定の人物・・・!?少佐!)

(了解!イシカワ!)

(今回、ヘリは一機も飛んじゃいない、となると車だな、総理官邸出発から今までの間の不審車両をチェックする!)

(渋滞にはまる急げ!)

(該当車両特定!少佐、対向車線、黒のワゴンだ!)

唐突に、対向車線を走っていた車がスピードを上げ総理の乗った車に突っ込んで来た、しかし、少佐の乗った車が間に割り込み、バトーが運転席の男を容赦なく撃ち抜くその間に総理を乗せた車はスピードを上げ走り去り我々もそれを追う

(少佐、首尾は?)

(上々と言った所ね、桐嶋本人に間違い無いわ、今は爆弾処理班待ち、所轄が来たらそっちにまかせるわ)

(良くやった)

(それはトグサに言うべきセリフよ)

「トグサ」

「ふぁい」

「良くやった、少佐も褒めていたぞ」

(ありがとうございます)

ただ、身体が頑丈なだけでは九課はやっていけん、トグサはその事の体現者かもしれんな。


花粉症でも頑張ったトグサ君です(^^)
設定:「総理暗殺」爆破予告は総理を誘き出すと同時に捜査かく乱を狙った罠、それに気付いたトグサ