待ち合わせ
あ〜と、コレはココにあるし、アレは内ポケに入ってるし、チケットは少佐が持ってくると・・・ハァ、何で俺がこんな事、やっぱりアイツに聞いたのが間違いだったか、ンな事言っても他に行ってそうなヤツはいねぇし・・・。
少佐に準備を頼まれた俺は、途方に暮れた挙句、唯一の所帯持ちであるトグサに相談を持ちかけた、時間があれば隠す事も出来たが間の悪い事に明々後日が当日な上、明後日はトグサが仕事の都合で事実上明日からコッチに居ない事もあり、事実を述べた上で頭を下げて“準備”の仕方をほとんど一夜漬けでレクチャーしてもらう事になった。
「ダンナ、まずはおめでとう」
「ンなこたいい、さっさと始めてくれ」
「判った、まずは心構えからだ」
「おいおい、そんなもんまで必要なのか?」
「ああ、そうだ、色々あるけど時間が無い、一番肝心な事だけ話そう、これだけ覚えとけばそれに従って行動するだけで万事上手く行く」
「本当かよ?」
「所帯持ちなめるなよ」
こう意気込まれては従うしかない、何より時間が惜しい
「で?」
レクチャーを始めるよう先を促すと、少し乗り出すようにして話し始める
「ああ、まずはダンナは楽しんじゃいけない」
「・・・あんな所で楽しめるかっての」
「そう、そこだ、楽しんじゃいけないけど、楽しまなければいけない」
「いきなり、矛盾してるぞ」
「ダンナの考えだとそうだろうな、けど大切な事だ、今回楽しむのはあくまで“少佐”だ、だが、せっかく楽しんでも相手が楽しんでなければつまらないだろう?そうなれば全部駄目になる」
「全部?」
冗談だろ?と言う意味も込めて少し笑いながらそう聞くとゆっくり頷き返してきた、その目には絶対的な自信がありありと浮かんでいた
「そうだ、場所は決まってるらしいけど、ルートは決めたのか?」
「ああ、初めにココでそれからはグルッと一週する感じで・・・」
自分の立てたプランを話す、何処にもミスはない筈だ・・・
「駄目だな」
一言で一蹴された、あり得ねぇ、だが一応理由を聞く
「何故?」
「少佐は家の娘と同じと見た」
「ガキと同じにすると怒りゃしねぇか?」
「当たらずとも遠からずって所だ、ダンナの方が詳しいかもしれないけど少佐は他人が決めたルートより、自分が行きたいところに行くそうじゃないか?」
確かにそうだ、アイツの行動は自分のゴーストに従っている、どんな状況であっても他人のゴーストに従う事は無いだろう
「当たってる」
「やっぱり、だったら好きにさせた方が機嫌がいい」
「なるほど」
「で、次だ」
「お、おお」
― 十五分経過(余裕) ―
「土産は最後の方がいい持ってると邪魔だし疲れる、けれど、せがまれたら断っちゃ駄目だ、それに・・・・なるし、荷物はロッカーに・・・」
― 三十分経過(疲) ―
「で・・・地図も・・が・・・休憩はこまめに・・・・お金も全部・・聞いてるか?・・・肝心なのは・・・・まあ・・・・」
― 一時間経過(泣) ―
「後半は・・・・にして・・そしたら・・」
― 更に三十分経過(ネット接続中) ―
「・・・で、最後はお好きなように、判った?」
「(・・・ハッ)お、おお、判った、様は少佐を疲れさせる事なく楽しませればいいんだな?」
自分が家族サービスをしている時の注意事項が途中から混ざり始めたので、ネットに逃げていたが、ちっと入りすぎたらしい、危うく補習を喰らう所だった。
「まっ、そう言う事、頑張ってね」
そう言って鞄を持って帰ろうとするトグサに
「あれ?オマエ仕事は?」
トグサは確か報告書と明日からの仕事の準備で今夜は残業の筈
「娘が今夜は俺と一緒に寝たいって言うんでね、さっき課長に出したトコ、今から最短で帰れば2330時には帰れるギリギリ起きていてくれる時間だ、じゃっ、急ぐんで、お疲れ」
そう言って片手を振りながら帰って行った・・・23枚の報告書を書いて、サル親父を納得させた上、前の事件その容疑者の犯行時の行確、それをたった4時間で終わらせたってか、あり得ねぇ、ゼッテー後で泣き見るぞ・・・―
待ち合わせ場所に10分ほど早く着いた俺は、その時の事を思い出しながら、ま、明日励ましてやるか、少しにやけながら途方に暮れるトグサを想像した
「何、ニヤ付いてるの?」
「うお」
いきなり背後から声を掛けられ、自分でも、何もそこまでと思うほどに驚いた声を上げてしまった
「少佐、おそ・・・かぁ無いか」
「そうよ、時間道理何か問題でも?それにしても驚き過ぎよ、もし実戦だったらニヤ付いたまま頭撃ち抜かれてたでしょうね」
「そこまでボケちゃいねぇーよ」
「あらそう?で?」
「?」
「・・・行くんでしょ?」
トグサに言われたタブーをいきなりやり掛けた、すなわち「目的地に着くまで相手を怒らすな」だ、ここは話題を変えるが吉だ。
「ああ、行くには行くがチケット持って来たか?アレがねぇと入れねぇーぞ」
少佐は答える代わりに胸元からチケットを取り出し、これでいい?とばかりに腰に手を当てて首を傾げた
「在るなら問題無いな、行くか」
少佐を車に乗せて走り出そうとする俺の脳裏にトグサの言葉が蘇る
(本当は、少佐を助手席側へエスコートして扉を開けて座らせるココまで出来れば完璧なんだが)
俺にそんな芸当が出来るかっつうの
困った、まさかココまで引っ張る事になるとは(汗)
次でキッチリ終わらせよう・・・出来るか?自分(^^;)