My,master
 
「えっと」
(この書類をマスターに渡すようインテグラ様から言われたけど・・・何処に居るんだろう?)
 
アーカードに血を吸われ、夜族になり、一度は覚醒したが未だに力の使い方を知らない(使ったら使ったで大変な事になるが)セラスは、廊下の真ん中で考え込んでしまった、力を使えないと言っても、純粋に“力”を引き出せないだけで、感覚は人のソレを遥かに凌駕するが、最近アーカードは以前にも増して気の放出を抑えているので皆目検討がつかない、しかし、ヘルシング家の敷地内に居る事は判る。
 
「やっぱり、部屋かなー?まだ昼前だし」
(ま、居なかったら別の所を探せばいいし)
 
そう言って、主人の部屋へと足を向ける、ちなみに現在時刻11:30、吸血鬼を含め“夜族”ならば眠りに付いている時間であるが、まだ人間だった頃の癖が抜けず、彼女の主人が「アーカード」そして、自身も一度覚醒しているため、太陽光に当たっても“塵”に還る事の無いセラスは昼夜間関係無く行動する、ある意味「ワーカーホッリック」状態であった。
 
「だけど、このままマスターの所へ行くと、多分また怒られるんだろーなー「まだ寝てないのか、半端者」って」(頭では判ってるんだけどなー)
 
いくら平気といっても夜族である以上、太陽に当たれば疲れるし、棺で眠らなければ力は衰える一方である、血を飲んでると言っても所詮は輸血用、体力は回復するが生気は一切無い、結局、時折アーカードから分け与えてもらっているのである、ソレを考えるとアーカードに何時か嫌われるのでは無いかと余計に考えてしまい、歩幅も自然と短くなり対には止まってしまった、アーカードの部屋まで後数メートル、その距離がとても長い距離に感じられる・・・と
 
ガチャ
 
「!、ま、マスター・・・?」
(!?、じゃない)
 
主人の部屋の扉が開き誰かが出て来る、初めは主人かと思い身を竦めるセラスだが、部屋から漏れる気が、主人と似てはいるが僅かながら違う事に気付き身体が緊張する。
 
「あら、ご機嫌いかが、婦警さん?」
 
部屋から出て来たソレはセラスを見つけると丁寧に挨拶をした
 
「え?えぇぇと、はい」
 
余りに突然な事にセラスはあっけに取られた表情で返答した、部屋から出て来たのは背が高く、ホッソリとした女性だった、髪は黒く腰の辺りまで伸ばしてはいるが細くしなやかな絹の様である、服装はスーツであるが、着こなした感じで違和感は無い、眼鏡を掛け顔にはソバカスがあるものの、整っておりセラスがみても綺麗でしばらく見とれてしまったが、それど頃では無い事を思い出し、まずは一番の疑問を投げかける。
 
「あ、あの、誰デスカ?」
 
相手は、一瞬不思議そうな顔をしたが、ああ、と言って手を打ち鳴らした。
 
「失礼、自己紹介がまだでしたわね、私はリップヴァーン、リップヴァーン・ウィンクルドイツ第三帝国の中尉にして猟師ですわ」
 
リップヴァーンはにこやかに、それでいて気高く自己紹介をする
 
「猟師さん・・・ですか?」
 
自己紹介をされたものの、余り聞き慣れない単語に小首を傾げる。
 
「・・なにか?」
 
明らかに気分を害したらしい、既に笑みは消え、手は腰のホルスターに納まっている「ルガーP08」を直ぐに抜ける位置に移動している
 
「その「お譲ちゃん」を怒らせない方がいい」
 
慌てて、何とかその場を取り繕うとするセラスの背後から聞き覚えのある声がする、と同時にあの光景も蘇る、驚愕の表情で振り返ると見間違えようの無い、顔半分いや筋肉質の身体の半身を刺青が覆った、自らの手で滅ぼしたはずのゾーリン・ブリッツが目の前に立っていた
 
「あ、え、何故!?あの時・・・?・・・??」
 
セラスはためらった、確かに今、目の前に立っているのはゾーリン・ブリッツに間違いは無い、しかし何処か何かが違う、力・雰囲気・能力、それらに一切の変化は無い、にもかかわらずゾーリンに対して多少の嫌悪感はあるものの、そこから先に感情が変化しない、しばらく対峙している内に理由が判った、相手に戦闘の意思が無いのだソレだけではないセラスには何故かゾーリンが安全であると理解出来るのである、しかし、それが何故なのかが理解出来ずにセラスは腕組みをしながら考え込んでしまった、そして思考の迷路にはまっているセラスを間に挟んだ状態で立ち話に花が咲く。
 
「この方をご存知なの?」
「私を滅ぼした相手だ」
「まあ!」
「幻術を破った上、片腕一本で滅ぼされた、流石はあの男の下僕だ」
「私はあの男にマスケット銃で貫かれましたわ」
「そうだったな、私は摩り下ろされた上で燃やされた」
「おいたわしい」
「まあ、記憶としてあるだけで、感覚はおぼえてないが」
「それは、羨ましいですわ、私はそのまま喰われましたから」
「その後、直ぐに召還された様だな」
「そうですわ、「トランプ男」と一緒に」
「アレか、詰まらん奴だったな」
「本当ですわ」
 
「・・・黙れ」
 
「「「!」」」
 
何処からか聞こえて来た一言により、会話は中断、セラスも現実に引き戻される、そこへ壁をすり抜けながら不機嫌そうな顔でアーカードが出て来た。
 
「インテグラの所へ行けと言った筈だぞ「猟師」・「幻術使い」それとも、影に戻るか」
 
この言葉に二人は不機嫌な顔をしつつ局長室に向い、セラスはその場に取り残される形となった。
 
「それで、何の様だセラス」
 
そう言われて、セラスは慌てて書類をアーカードに手渡す、それを封も開けずに読み取り、問題無いと言ってセラスに返そうとして、何かに気付いたように手を止め、セラスの顎を取り顔を覗き込む
 
「あ、あの」
「力が落ちている、日の光に当たり過ぎだ、何度言えば判る」
 
そう言いながら、セラスを抱き寄せる
 
「え?」
 
一瞬、浮いたようになり、気づいた時にはセラスはアーカードの棺の中で主人を下にしてうつ伏せになっていた、恐る恐る顔を上げれば、紅い目がセラスを見ている
 
「あ、あの、スミマセン」
「そう思うのなら、どうすればいいか判っているはずだ」
「・・・はい、でも・・」
 
期待に答える事の出来ない自分にこうして気を与えてくれるアーカードに申し訳なくて、俯く事しか出来なくなる、そのままでいると、頭に手が載せられ、セラスの少し癖のある髪をまるでなぐさめる様にゆっくりと主人の手が撫でて行く
 
「ま、マスター」
「いいから眠れ、その方が回復も早い」
 
そう言って、自らの胸にセラスの顔を押し付け、促すように頭を撫で続ける、本当なら直ぐにでも眠りに落ちる所なのだが、気になる事があり寝付けない、主人の手はなおも頭を撫で続けていたが眠らないセラスが気になるのだろう手を止め
 
「どうした、まだ何かあるのか?」
 
その言葉に先ほどから気になっている事を聞いてみる
 
「あの、何であの二人を出したんですか?」
 
何だ、そんな事かとでも言いたげに目を細めるアーカードだったが、このままセラスが眠らないのではしょうがないと言った感じに話始める
 
「影の中で喚く者が居る、本来なら使い魔の餌だが、そいつがその身に何かをくっ付けていたんでな興味本位で出してみた、それが「猟師」だ、その時ついでにくっ付いて来た方にも力を与えてみた、以前そいつの血を「猟師」が吸った事があったのだろうそれが「幻術使い」だ、何なのかが判った所で戻そうとしたらギャーギャー五月蝿い、滅ぼしてやろうかと考えたが、以前インテグラが戦力が足りないとぼやいていたのでな、丁度良いのでそのままにしてある」
 
そこまで話して、もういいだろうと目を閉じる主人に対しセラスが不安そのものと言った風に聞いてくる
 
「じゃ、じゃあ、あの二人もマスターの「血族」・・・ですか?」
 
その問いにアーカードは目を開き真っ直ぐセラスを見る
 
「あんな五月蝿い「血族」を持つ気はない、「使い魔」としてもだ、当分はインテグラの護衛でもさせるが、邪魔なら滅ぼす、それに」
 
そこまで言うとセラスの顔を両手で包み込むようにして顔を近づけ、額にキスをする
 
「私の傍にはセラス、お前が居ればそれでいい、私は他に何も望まん」
 
そう言って、アーカードがセラスを胸に抱いた時、すでにセラスは安心した顔で眠りに落ちていた。

アーセラ最後だけじゃん(爆)しかも長!こんなんですが良いですか(^^;)