ジャンプ
目的地に着いて入場口でチケットを見せて中に入る、流石は平日、人も疎らにしか見えない、どのアトラクションもそう並ばずとも入れそうだ
「何処から行く?」
トグサに言われたとおり行き先を少佐に決めさせる、「決めてないの?」と突っ込まれる事も考えて自分のプランも考えてはあるがまずは少佐が先だ
「そうね、アレがいいわね」
そう言って指差したのは「バンジージャンプ」
「おいおい、あんなもんやんなくても、何時も飛び降りてるじゃねーか」
冗談半分にからかうと、少し睨んで
「仕事を“楽しみ”とした事は一度もない」
そう言って逆方向に歩き出す、方向が違うと注意しようとした時、トグサの言った事を思い出した
『初めにしたい事は一番楽しみな事だ、ソレがどんなに無意味に思えてもからかっては駄目、万が一からかって相手が逆方向に向かったら相当怒ってる』
やっちまった、しかもこの先にあるのは確か幼児向け、怒りに任せてコーヒーカップに乗る位ならまだいいがメリーゴーランドや万が一、空気で膨らませたドームでピョンピョン跳ねたいなんて言われたらもう泣くしかない、そんな想像も出来ない事を頭の片隅に押しやりながらこんな時どうすれば良いか思い出す回避する方法は一つ。
「素子、すまん悪気があったわけじゃねぇ、今日ココに来たのは怒らせる為じゃなく楽しませに来たんだ、な、戻ってくれねーか?」
走って少佐の前に回りこみそう言った、その時の自分の顔はかなり真剣だっただろう
少佐は少し考えて、ならいいわ、機嫌を直した時の顔でそう言って道を戻り始めた、その時の顔に含み笑いが入っていたように見えたのは気のせいだろうか?
ジャンプ台のある塔の下に説明書きがあった
「なになに、“このバンジージャンプはお客様の意思に関係無く、係員が手動でダイブさせますので、心臓が弱い方・始めての方は良くお考えになった上でお楽しみ下さい”だとよ、様は勝手に落としますから覚悟して下さいってこったな」
「面白そうじゃない」
そう言うと階段をスタスタ上り始める、少佐と共にジャンプ台の頂上に着くと係員が爽やかな声と笑顔で
「いらっしゃいませ、では、どうしますか?」
「?」
どうしますかとはどう言う事だと二人で不思議そうな顔をした、すると係員は経験から事態を把握したのだろう説明を始めた
「このバンジージャンプでは一人で飛ぶ「シングル・ジャンプ」と二人で飛ぶ「ダブル・ジャンプ」があります、そちらの方はお連れさんですよね?でしたら二人で飛んだ方が面白いと思いますよ」
後ろで腕組みしている俺を手で指しながら係員は少佐の返答を待っている
「そうね、じゃあ二人で飛ぶわ、でも二人とも完全義体よ大丈夫かしら?」
少佐が困らせようとするかの様に聞くと
「はは、大丈夫ですよ、今出ている義体のどの組み合わせでも切れないように造られてますから、ではどちらが後ろに?男性の方で、判りましたではこれを着てこちらどうぞ、前向き・後ろ向きどちらで飛びます?前から、ではこうですね、固定をしますので、あ、すいません・・・これで良しと」
少佐の質問に答えて、要望を聞き手際良く作業を進め安全確認もしっかりとこなしていく、あっと言う間に俺達は飛ぶだけの体制になっていた
「では1・2・3の3のタイミングで飛んで下さい、飛ぶと言っても落ちるだけですから、では1・2・3、行ってらっしゃーい!!」
最後まで聞くか聞かないかのうちに、床が二つに分かれていきなり落下して行った
数秒の自由落下の後、ゴムが反発しだすがこちらは完全義体二人だそう簡単に止まらないその間ずっと上に引っ張り上げられる感覚が続き、一瞬の停止の後、今度は放り出される感じで上へそれが数回続きやっとで止まりその後はスルスルと持ち上げられる
「なるほど、心の準備もさせてくれない訳か」
「注意書きがあるのも納得ね、少し驚いたわ」
持ち上げられながら感想を言い合う、仕事で驚いた後には必ず緊張が続くもんだが、これはアトラクション、次の緊張が無い分なんと言うか、呆けた感じになってしまい笑いがこみ上げる
「ふっ、読んでてよかったな」
「ふふっ、そうね、そうじゃなかったら怒鳴ってたかも」
元居た所まで上がると、係員がさっきの笑顔と声で迎える
「お帰りなさい、どうです驚いたでしょう?楽しかったですか?」
留め金を外しながら聞いてくる、それをまたもや少佐が困らせようとするかの様に返す
「そうね、面白かったわ、貴方この仕事ではストレス溜まらないでしょう?間誤付いても勝手に落とせるしその時の驚きの表情が面白くて」
答える前に次の客が来てない事を確認しつつ
「そうですね、でもお客さん慣れてるでしょう?もう少し驚いてくれれば良かったんだけど、しょうがない、次の方々は少し焦らそうかな」
笑顔を崩さずそう答える、まんざらでもないらしい
「次の奴には掛け声の後、二秒空けて落とすといい、特大の「叫び」が聞けるぜ」
降り口に歩を進めながらそう声をかけると、試してみますと声が返ってきた、下を見ると次の客は若いカップルのようだ。
「どうするか見てかねーか?」
「ただ見るのも詰まらないわね、じゃあ賭けましょう貴方の提案道理にやるかやらないか、負けた方が昼食をおごる」
「のった、少佐はどっちにする?」
「やらないでしょう、客商売だもの」
「じゃあ、俺はやる方に」
下についた時点ではまだ飛んでない、説明をしているのだろうしばらく待ってみる、そして、“行ってらっしゃーい”声は聞こえたが床が開かない
・ ・一秒・・二秒
ウワアアァァァーーー!!!
キャアアアァァーー!!
唐突に床が開き特大の叫びと悲鳴の二重奏が響き渡る
「まさか本当にやるとは思わなかったぜ、結構なサディストだな」
「貴方が提案したんでしょう、それにそのセリフを貴方が言うの?」
「まあな、ま、賭けは俺の勝ち、昼飯はおごってもらうぜ」
「仕方ないわね、でもまだ早いわよ」
「その辺をぶらついて気に入った所に行ってくれればいい、俺はそれについて行く」
「貴方はココでは楽しむって感じじゃないものね、それじゃあ楽しませてもらうわ」
そう言って歩き出す、今度は数々のゲームをする事のできる区画へ行くらしい、つまずきはしたが今の所大きな問題は無い、だが一個目でこれだ、最後までもつのか俺
さて、少佐は何をするんでしょうか?
そして、バトーさんは最後までもつのか?
次をお楽しみに(この回で終わらすんじゃなかったのか?)