[事件後始末書]






次の日、新聞テレビ等で大きく報じられた「謎のグループによる無差別テロ」事件。
あれだけの大規模ながらも建物が破壊されただけで死者も重軽傷者もゼロという前代未聞のそれは、しばらくの間日本中を騒がせることとなった。
その報道に荒巻はやっぱり苦虫を噛み潰し。
9課面々は耳と目を塞ぎ。
事件の中心にいたトグサは一週間の自宅謹慎という名の休暇をもらった。
「最近物騒な世の中になったわねえ」
妻がテレビを見ながら首を傾げる。
「そうだよなあ」
課長からは何にも聞かされてなかったけど、また少佐たちが俺を巻き込まないために極秘で解決しちまったんんだろうなあ。
トグサはソファに深く腰を落とす。
ちなみにトグサには事件当時の記憶がない。
素子が消し去ったのである(覚えていられるとのちのち面倒だから)。
だからトグサには解らない。
なんで自分が謹慎処分になったのかということを。
誰も多くは語りたがらなかった。
だからこれは自分が所帯持ちであるからという、9課メンバーのさりげない配慮であるということだと解釈した。以前も同じ目に遭わされていたのだから。
まさか自分がそのテロの引き金を引いた人間であることを、彼は知る由もない。
「パパっ、早く行こう!」
フリル付き白と赤のワンピースに麦わら帽子という格好で現れた娘が、トグサの腕を引っ張る。
「解った解ったよ」
リモコンでテレビを消して立ち上がると、娘に引かれるようにトグサは玄関に向かった。
今日は家族で遊園地に遊びにいくのだ。
突然の謹慎処分には首を傾げるしかないが、でもそのおかげでその間の一週間は家族サービスが出来るのだ。
棚から落っこちてきた幸運にトグサも、そして家族も幸せであったことはもはや言うまでもないことだった。
















「なあ少佐」
ものすごい量の始末書を書かされているバトーが、同じように書かされている真向かいの素子に話しかけた。
「何?」
「俺、今でも不思議なことがあるんだが」
「何かしら?」
「お前って確か、トグサのゴースト鍵持ってるよな」
「ええ」
ゴースト鍵。というのはゴーストにかけられた錠前。つまり、防壁を無条件で開けることが出来るか議のことである。防壁は不正にアクセスすれば攻撃を食らうが、ちゃんとした鍵を持って開ければ何の障害もなしに侵入することが出来る。
信頼の証として9課のメンバーは素子に預けている。
「それがどうかしたの?」
何を当たり前のことを?と不思議に思っていると、バトーは素子を見て言った。






「じゃあ何でそれ使ってあいつの鞄取らなかったんだ?」






鍵があれば相手のゴーストを乗っ取ってその体を自由に動かすことが出来る。電脳戦のプロである素子にはそれは雑作もないことであった。
だから最初からそれを使っていれば、別にこれだけの騒ぎとこれだけの始末書を書かなくてもすんだのに。とバトーは暗にいっている。
「……………」
素子は瞬きもせずにバトーを見た。
それからまた視線を始末書に戻して一言。
「ノーコメント」
…………確実に忘れてやがったな。
バトーは思ったが口には出さなかった。
やれやれ。
ため息をこぼしてバトーはまた始末書と向き合う。






教訓。行動は計画的に。






 おわり

紫様の所でカウンター1000を踏んだキリリク、イノセンスのトグサの車に付いていた人形を見てのリクエスト
紫様、ありがとう御座いました