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忘れられた子等

稲垣浩監督が「手をつなぐ子等」(1947)に続いて作った教育映画で、1949年度、稲垣プロ&新東宝作品。
前作が、一人の知的ハンデを持った子への取り組みを描いていたのに対し、本作では、そういう子供が集まった「特殊学級」そのものへの取り組みを描いている。
新しく赴任してきた新人教師、谷村(堀雄二)は、校長(笠智衆)から、特殊学級の担任を依頼される。
事情が良く理解できない谷村は、クラスの様子を見せられて愕然とする。
そこは、知的ハンデを持った子だけが集められた、あまりにも様子の異なった教室だったからである。
谷村は、2年間だけ…という、校長の懇願を受け、ほとんど捨て鉢な態度で、日々を過ごし始めた。
しかし、そんな谷村にも、徐々に子供たちの様子を素直に受け止める姿勢が出はじめ、最初は背を向けていた子供らに真正面から対峙するようになっていく。
フィクション性、理想性が強かった前作と違い、本作では特殊学級という現実性が大きいだけに、かなり観ていて最初はつらい部分も大きい。
これは、おそらく、稲垣監督の意図的な演出だと思われる。
それは、観客が、新任の谷村先生と同じ目線に立って、最初は戸惑うように仕掛けられているのだ。
やがて、観客も、谷村先生と同じように、徐々に子供達の様子に馴染んで行き、素直な姿勢で接する事ができるようになって行く。
もちろん、この作品自体もあくまでドラマとして作られており、特殊学級以外のクラスにいる、身体にハンデを持った少年も登場し、彼を取り巻く「いじめ」の様子も描かれているし、一応、クライマックスの見せ場のようなシーンも用意されている。
それでも、最後の方では、ハンデを持った子らの純真な姿に心打たれ、観ていて涙を禁じ得ない状態になる事も事実である。
しょせんは「きれいごと」「理想像」などと醒めた見方もできるだろうが、ここにはあざとい商業目的作品とは違った、真摯な作家としての姿勢を買いたい。
ハンデを持った人たちが隔離され、一般の目線にはなかなか見え難くなっている現在だけに、こうした作品の存在は、ますます大きくなっているようにも感じられる。
偏見を持たず、素直な気持ちで観て欲しい感動作である。