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手をつなぐ子等

1947年、大映京都作品。
伊丹万作脚本、宮川一夫撮影、稲垣浩監督。
小学生の中山寛太君には知的傷害があるため、どの学校でも差別され、思いあぐねた母親(杉村春子)は、受け入れてもらえるよう新しい学校の門を叩く。
校長(徳川夢声)と松村先生(笠智衆)は、寛太を引き受ける決心をする。
同級生たちの協力もあり、やがて寛太は学校が大好きになっていく。
そこへ、新たな問題児、山キン事、山田金三が転校してくる。
山キンは、事あるごとに、周囲の子供たち、特に寛太に執拗な意地悪を繰り返すのであった。
そんな山キンの様子を、松村先生は、じっと影ながら見守り続けるのだったが…。
基本的に「教育映画」の作りになっているので、かなり「理想主義的」な展開になっている。
しかし、それが「あざとく」も「わざとらしく」も感じられず、素直に見入ってしまえるのは、脚本や演出の巧みさがあるからとしかいいようがない。
子供たちの生き生きとした表情や、当時の遊びなどがていねいに描写されており、それらを観ているだけでも楽しくなる。
特に朴訥な笠智衆の先生と、寛太や山キンの触れ合いには、後年の「御前様とフーテンの寅」の関係が重なり興味深い。
乱暴者の山キンと、ちょっと知恵が足りない寛太の両キャラクターを合体させたのが、寅さんに思えるからだ。
また、昆虫の絵を描いたタイトルバックは、後年の「となりのトトロ」にそっくりで、宮崎監督は、この作品を参考にしているのでは?…とさえ思える。
往年の邦画のレベルの高さを思い知らされる、感動の名作。