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長崎ぶらぶら節

遊廓や芸者をテーマにした企画が、結構以前から映画化されるケースがあり、本当にそういうテーマで集客力があるのか昔から疑問だったが、この作品もテレビ放映されなければ、一生、観る機会のなかった作品だと思える。
しかも、若い頃だったら、全く興味も引かなかったに違いない。
冒頭の派手な芸者合戦などの部分では、あまりに通俗趣味で、早くもチャンネルを切り替えたくなったが、この作品の映画雑誌などでの評価が高かった事を思い出し、我慢して観続けるうちに、段々、一人の薄幸な女性のつましくもたくましい生き方の話だと分かってきた。
同じように、財を捨て、俗世間から自ら離れた、風変わりな男との出合い、そして、無欲な共同作業から生まれる互いの共感。
ここから、どろどろした「愛欲もの」にならないのがいい。
最後まで、気丈で無欲な生き方を選ぶ芸者の最期には、やはり、涙を禁じ得なかった。
薄幸を絵に描いたようなイメージの女優、いしだあゆみが、小さな幸せを得ている役に起用されている所にも、ひねりとうまさを感じる。(彼女が、この作品の主役だったら、悲惨で目も当てられなかったはず)
きらびやかな「芸者の世界」を、あくどい描写はできるだけ避け、比較的さらりと見せていった手腕は買いたい。(原作の力か?)
基本的には「お涙頂戴もの」パターンの話だが、ていねいに作られている佳品だと思う。