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赤ちょうちん

1974年、日活、藤田敏八監督作品。

中央線沿線のすぐ脇、電車が通る度に、その騒音に悩まされている取り壊し寸前のビルの一室。
久米政行(高岡健二)は、どこからか連れてきた17歳の少女、下川幸枝(秋吉久美子)と、いつしか同棲し始める。

二人が次に引っ越した幡ヶ谷のアパートは、焼き場の側で、今度は静かすぎて気持ち悪い。
さらに、ある日、部屋の前の住人だったと称する中年男、犬養(長門裕之)が勝手に上がり込み、奇妙な三人による共同生活が始まる。

保険外交員というその男を、バイト先の牟田(河原崎長一郎)らと一緒に、海辺で袋だたきにした政行は、オカマの住む部屋と向い合せにある、新宿柏木のアパートへ三度目の引っ越しを決意する。

さらに、そこで幸枝が妊娠している事に気付いた政行は、幸枝と「堕ろす、堕ろさない」で気まずい関係に…。
結局、子供は無事に出産、四度目の引っ越しをする事になる。

新しいアパートには、自分の赤ん坊を死なせた経験があるという、これまた奇妙な大家(悠木千帆)がいた。
赤ん坊を育て始めてナーバスになっていた幸枝は、彼女や隣近所の人間の行動を気味悪がるようになる。

ある日、買い物途中で、坂道に止めておいた乳母車が、ひとりでに坂を降り始め、すんでの所を、一人の男に助けられる。

何と、その男は、長年行方知れずになっていた幸枝の兄(石橋正次)であった。
その後、郷里熊本で待っていた幸枝の祖母も他界したとの連絡がアパートへ届く。

五度目の引っ越しは、葛飾区の一軒家。
政行は、隣人の紹介で、そこの息子(山本コータロー)と一緒の工場へ勤める事になる。
しかし、格安だったその一軒家は、実は一家心中があった現場だったと、後日、大家(南風洋子)の口から知らされる事になる…。

フォークグループ「かぐや姫」のヒット曲「赤ちょうちん」をベースにした青春ドラマ。

貧しい二人の男女が、新しい生活を始めようと環境を変えるごとに、新しい人間関係に翻弄されて、やがては、か弱い少女の精神に変調をきたすようになって行くという…という、哀しい展開になっていく。

秋吉演ずる、少女の孤独感を、最後まで理解してやれなかった青年の「若さ」が、観ていて切なくなる。

なお、本作の助監督は、長谷川和彦である。