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怪異談 生きている小平次

1982年、磯田事務所+ATG、鈴木泉三郎原作、中川信夫脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

冒頭、いきなり、隈取りをした歌舞伎役者のような扮装をした小平次(藤間文彦)が、逆さ釣りでセリフを喋っている。

舞台袖で、太鼓を叩いているのは太九郎(石橋正次)、その後ろで、その女房のおちか(宮下順子)が、簪で太九郎の首を刺す真似をしながらしなだれている。

三人は、同じ貧乏長家で育った幼馴染み同士。
いつも、つるんでは、冗談や芝居遊びに興ずる仲の良さ。

しかし、役者小平次は、おちかを女房にしたいと常々願い、おちかにも、その事を正直に訴えていた。
おちかの方はといえば、そんな小平次に、気があるようでないようで…。
どういうつもりか、小平次に、太九郎の子を妊ったが生みたくないと告白する。

三人で遊び旅行に出かけた先で、おちかは滝に打たれ、わざと流産してしまう。

その後、いつもの三人で旅興行へ出かけようとする朝、おちかは夢見が悪かったと、同行を拒む。

おちか抜きで旅に出た小平次は、思いきって、太九郎におちかを譲ってくれと告白する。
太九郎は逆上し、沼に浮かぶ小舟から、小平次を突き落として、櫂で殴り殺してしまう。

自らの所行に怯えた太九郎は、急ぎ帰宅し、おちかに自白するのであったが、何故か寝所に小平次が出現して、俺は生きている…と、驚く二人にいう。

一旦は仲直りしたかに見えた三人だったが、太九郎、おちかは、その後、隙を見て、また小平次にとどめを刺す事に。

死者から逃れるように、旅に出た夫婦だったが、旅先には、又しても、顔中包帯だらけの怪し気な男が…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

中川信夫監督の遺作だが、登場人物が三人だけという、極めて特殊な条件下で作られた、いかにもATGらしい低予算作品。

しかし、一画面ごとの緊張感溢れる画面構成など、眼を見張るような完成度で、どこか観念的な芝居と相まって、独特の様式美の世界を作り出している。

怪奇映画というより、小劇場での前衛芝居を観ているようでもあるが、美術設計などは小規模ながらも風格を感じさせる堂々たる映画そのもの。
中川監督特有のこだわりを感じさせる。

万人向けの娯楽作とはいえないが、観る者の想像力を刺激するような丁寧な演出に、決して安っぽさはない。
中川監督に興味のある人には、必見の映画だろう。