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海軍

1943年、松竹、田坂具隆監督作品。

大本営海軍の依頼によって作られた「国威高揚目的」の作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

鹿児島の雑貨商の次男坊、谷真人(山内明)は、母親思いの孝行息子。
兄を助けて、店の手伝いも欠かさない、模範的な中学生であった。

彼は、親友の牟田口(志村喬)から、一緒に海軍兵学校への入学を誘われるが、商売をしている実家の事を考え返事を躊躇していた。

しかし、やがて、兄と母親の了解も取り付け、二人は晴れて一緒に入学試験を受ける事に。

ところが、皮肉な事に、誘った牟田口の方は、視力異常のため試験に合格できず、そのまま、彼は、無事入学を果たした真人の前から姿を消してしまう。

一方、海軍兵学校を無事卒業して中尉になった真人は、緊迫する世界情勢の中、シンガポールやハワイを船に乗って見て廻る事に。

真珠湾の海中に見た鮫の魚影に、何ごとかを連想する真人。

やがて、真人は、部下と共に、特種潜航艇を使った作戦の訓練にかかる。

そんな真人は、東京の雑踏の中で、偶然、別れて久しい、元親友の牟田口とばったり出会うのだった。
牟田口は、今、絵描きの卵として、東京で貧しい一人暮らしの生活をしていた。
久々の再会を、牟田口の下宿で喜びあう二人。

絵に行き詰まったと愚痴る牟田口に、真人は、子供時代から牟田口が好きだった軍艦の絵を描いたらどうかと勧める。

やがて、鹿児島の実家は、真珠湾攻撃を知らせるラジオ放送に色めき立つ。

真人は、特殊潜航艇に乗り、真珠湾のすぐ近くの深海に身を潜めていた。
静かに浮上する、特種潜航艇。
潜望鏡をあげて覗いた真珠湾には、まだ、被害を免れ浮かんでいる敵の軍艦の姿があった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

残念ながら、現存するフイルムはここで終わっている。

真珠湾攻撃のシーンは、戦後、アメリカに没収されて後、返還されなかったらしい。

主人公が兵学校に入学するまでの部分は、真人にほのかな思いを寄せる、牟田口の妹エダ(青山和子)の描写や、ややきれいごとと感じられないでもないが、家族間、先生と生徒、友人同士の深い信頼関係が描かれていて、戦前の日本人の人情、気質を伺い知る意味もあり、それなりに興味深く観る事ができる。
松竹らしい人情ドラマは、ここでも健在である。

中学校で真人を教える、英語教師役の東野英次郎や、教練担当の笠智衆の姿も珍しい。

軍隊に入って以降の展開が、どうしても単調になっているのは、こうした種類の映画の宿命かも知れない。
ほんの何カットか登場する、ミニチュア特撮シーンは、さすがに当時の東宝などのものに比較すると、スケール感もなく、どう観てもおもちゃにしか見えないのが残念。

プロパガンダ目的の映画…と、きちんと認識して観れば、それなりに興味深い部分のたくさんある作品だと思える。