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ハナ子さん

1943年、東宝、マキノ正博監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

会社クレジットが入る前に「撃ちてし止まん」の標語。
会社クレジットも、日本を含む東南アジア一体の地図に、東宝のマークを浮き出したレリーフ状のもの。

…そう、これは、戦時中に作られた映画である。
しかも、何と「ミュージカル」!
杉浦幸雄の漫画が原作である。

タイトル部分から、手足も露な踊り子たちの群舞が登場する。
それを、ステージ真上から撮った、ハリウッドさながらの構図。
花びらが開くように、踊り子たちが動き、タイトル…洒落ている。

ハナ子さん(轟夕起子)が登場し、自分の家族を唄いながら紹介していく。

物語は、ハナ子さんが恋人の桜井五郎(灰田勝彦)と結婚し、新居を構え、何かと節約の生活を心掛けるが、ある日訪れて来た五郎の妹、千代子(高峰秀子)の発案で、ハナ子の実家で両親と同居する方が、より節約になる事に気付く。
傷を追って前線から帰って来た、ハナ子の兄、勇と千代子が結ばれる。

ハナ子さんと五郎に一粒種が誕生した時、五郎に召集令状が来る…という、いかにも時代を感じさせる内容になっている。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

ハナ子さんの実家がある町内の様子を紹介しながら、登場人物たちが唄う「トントントンカラリと隣組」
恋人に会いに行くハナ子さんが唄う「お使いは自転車に乗って」
帰国した勇と千代子が仲良くなるきっかけともなる、家族全員での遠足の時に唄われる「月月火水木金金」…など、年輩世代にはお馴染みの「国民歌謡」が次々と登場し、全体的に明るく楽しい作風になっている。

一方、実利的…というか、戦時下での庶民への教育指導的な要素も含まれていて、登場人物全員が、にこやかに唄いながら「隣近所の助け合い精神」や「空襲に備えるための消火訓練」などを奨励する描写もある。

さすがに、前線に出発する五郎を見送るハナ子さんが、涙一つ見せず、さも当然のお勤めに出かける夫を見送るかのように、二人が戯れているラストは、今観ると辛いものがある。

全体的に「わざとらしい」感じは、どうしてもしてしまうが、あくまでも、戦時下で作られた「国威高揚」目的意味合いも含んだ娯楽作品なんだと、きちんと理解した上で観るべきであろう。

それにしても、マキノ監督の何でもござれの器用振りには、舌を巻いてしまう。