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駅前旅館

1958年、東宝、井伏鱒二原作、豊田四郎監督作品。

上野駅前にある柊元旅館が舞台の人情喜劇。
黄金期の東宝を支えた「駅前シリーズ」の第一作にあたる。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

指定旅館である柊元旅館は、今日も修学旅行生でごったがえす繁昌振り。
女中部屋で生まれて以来、40年以上も旅館と共に生きて来た番頭、生野次平(森繁久彌)も、バスの添乗員をやっている万年学生、「万年さん」こと、小山欣一(フランキー堺)も、てんやわんやの大忙し。

次平は、近所の番頭仲間、水無瀬ホテルの高沢(伴淳三郎)らと慰安旅行に出かけたり、幾人かの女性たちとの付き合いに明け暮れる毎日。

一方、万年さんの方はといえば、可愛い女中のお京ちゃんが、彼に気があるそぶり。

そんな順風満帆状態に見える柊元旅館にも、女中の引き抜きを画策する「かっぱ」と呼ばれる、フリーの客引き連中の執拗な誘いが行なわれている。

最後には、そうしたかっぱを一掃しようと、独断で「地域浄化」の立て看板を立てた次平の行為が仇になり、長年世話になって来た、旅館主人(森川信)と、内儀のお浜(草笛光子)に、あっさりに馘首されてしまう…という、何とも、皮肉な運命を描いているが、登場人物たちの持ち前の明るさが、物語全体にパワフルな生命力を与えている。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

冒頭から、修学旅行生たちの滅茶滅茶な無軌道振りが描かれる。
旅館近くの飲み屋でビールを飲み、たまたまその店にいた旅館の番頭仲間にからんだ高校生3人組のまん中は、坊主頭の常田富士男。
集団の年輩客から「ロックンロールとやらを見せてくれ」とせがまれ、仕方なく、帳場横の部屋で踊り狂っている女学生たちから、ロックンロールを教わろうとするフランキー堺に、「簡単よ!」と、自らはりきって踊ってみせる丸顔の女の子は市原悦子である!
暴走する「まんが日本昔話」の青春時代…(ー_ー;)

芸達者な役者たちによる打々発止のセリフの応酬、しっとりした大人の男女の関係…、何気ない日常生活の積み重ねを描いているだけなのに、何という厚みのあるドラマ。

情感に溢れるラストシーンは秀逸の一言。
まさに、日本映画黄金期が作り上げた名品の一本である。