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豚と軍艦

1961年、日活、山内久、原作&脚本、今村昌平監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

舞台は、終戦間もない頃の横須賀基地前のどぶ板通り。
その基地から出る残飯は豚の餌になる事もあり、その取り扱い権利を巡って、地元のやくざがうまい汁を吸っていた。

戦死した兄の事ばかり思い出し、貧しい生活をしている漁師である父親(東野英次郎)を嫌い、そんな豚を飼って利益を揚げているやくざグループに加わっているチンピラ欣太(長門裕之)。
彼は、お腹に子供が出来たので、まともな生活に戻って欲しいと願う恋人(吉村実子)からの忠告も聞く耳を持たない。

そんな欣太にとんでもない仕事が言い渡される。
この土地に逃げ込んで来たヤクザものの死体を海に捨て、その犯人役として警察に出頭しろというのである。
ムショから帰って来たら、幹部扱いだ…などという兄貴分たちの甘い言葉にまんまと乗り、欣太は承知するのだったが、やがて、沈めたはずの死体が浮き上がり、父親に発見されてしまう。

その場は、組の兄貴分、鉄次(丹波哲郎)に手伝ってもらい、何とか警官の眼をごまかせたものの、欣太の目は一向に覚めない。その死体は、結局、豚舎の地面に埋められるが、豚の餌になってしまったらしく、鉄二たちが食べていた豚の丸焼きの中から金歯がコロリ。

それにショックを受けた鉄次は一見強面のヤクザだが、実は小心者で、悪化した胃潰瘍の症状を勝手に癌だと思い込み、検査した病院のレントゲン写真を子分が間違って入手してしまった事から、後数日の命と勘違い、地元の中国人バーテンに金を渡して、自分を殺してくれと依頼したり、自らも走って来る電車に飛び込もうとするが、結局はたせない。
癌ではなかった事を知ると、今度は死ぬのを怖がり、殺しを依頼したバーテンの姿を観ただけで逃げ出す始末。

お腹の子供を処理した恋人は、米兵のオンリ−になっている姉や、そんな姉のように自分もなれと勧めている母親(菅井きん)と絶えず衝突していた。
自暴自棄な気分から、ある夜、泥酔した上で米兵数名とホテルに行ってしまう。
さらに、出来心から、入浴中の米兵の服から金を盗み出し逃走。
結局、捕まってしまい、警察のお世話になる事に。

そんな彼女の元に、再びやって来た欣太と、彼女は、別の場所に引っ越して新しい生活を始めようと約束しあうのであった。

やがて、豚を巡る内紛騒ぎに巻き込まれた欣太、ようやく、自分が兄貴分たちのいいように利用されていただけである事実を知る。
逆上する欣太。
彼は、何台ものトラックに乗せて運んでいた豚の群れを、どぶ板通りのまん中でいっせいに解き放ち、自らは周囲めがけて機関銃をぶっぱなすのであった。
通りは、走り回る豚にうめ尽くされ、警官隊も出動して来る大騒ぎ。

駆け落ちの約束をしながら、約束の時間になっても駅に現れない欣太を心配していた恋人、どぶ板通りの騒ぎを聞き付け、現場に駆け付けると、そこには、担架に乗せられて運ばれる欣太の姿があった。

横須賀に入港したアメリカの軍艦目当てに、駅から港に向かう女性グループとは正反対に、一旦はオンリーになる事に承知したものの、土壇場になって翻意し、そのまま家を飛び出して駅へ向かう恋人の姿を映し出したラストシーンが印象的である。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

軽喜劇ならぬ、「重喜劇」という、今井監督独自の作風らしいが、いわゆる「喜劇=お笑い」というイメージで観ていると、笑える所は少なく、むしろ退屈するかも知れない。

むしろ、貧しい暮らしの中で、懸命に足掻きながらも生きている若者たちの生活をじっくり描きこんだ「人間ドラマ」という方が分かりやすいだろう。
欣太の兄貴分を演じている大坂志郎や小沢昭一が珍しい。
特に、東北なまりながら、悪どい事を平気でやってのける大坂志郎の小悪党振りは印象に残る。

若い長門裕之の好演もいいが、何といっても、逞しい女性役を演じ切った吉村実子の存在感が、この作品を支えているといっても過言ではないだろう。

結局「どんな事があっても、最後には女性にはかなわない」…というのが、本作の底辺に流れている主題であるらしい。

あまり、個人的な好みとは言えないが、骨太の名作であるとは感じる。


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