TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

脱走遊戯

「脱獄もの」と「逃がし屋もの」のミックスとでも言えば良いのか?

主役を演じている千葉真一のキャラが陽性に設定されている為、千葉ちゃん版「ルパン三世」でも観ているような雰囲気すらある。

ラストも、犯罪もののお約束…と言ってしまえばそれまでだが、後味は悪くなく、作品が好評だったら、続編、シリーズ化なども考えているような締め方になっている。

峰不二子役とも言える陽子役を演じているのは、松竹の仕事が多かった鰐淵晴子で、この当時はちょっと濃い感じも見え始めているが、まだ妖艶できれいな盛りである。

悪役を演じているのは小沢栄太郎で、教誨師と言う表の顔と、脱走屋と言う裏の顔の両面を持っている複雑なキャラクターを好演している。

その子分として、今回も、宍戸錠の実弟郷英治が登場してクセのありそうな悪役を演じているが、またもやあっさり殺されてしまい、活躍の場は少ない。

低予算なりに細部に渡りアイデアが良く考えており、JACも参加しているので、ものすごい大迫力!と言うほどの見せ場はないにせよ、全体的にそこそこ楽しめる展開になっている。

この時期の東映作品にしては、ヤクザ映画っぽい雰囲気が希薄なのも好ましい。

B級アクションとしては平均作と言った所ではないだろうか

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1976年、東映、高田宏治+関本郁夫+大原清秀脚本、山下耕作監督作品。

刑務所のスライド写真を暗室の中で見守る謎のメンバーたち

ここの塀は高い。

監視塔は四カ所…

ここは、脱走の常習犯ばかりが送られて来る特殊刑務所なので、今までのやり方ではダメだ…

刑務所内の説教部屋で、3人の受刑者に持参した弁当を振る舞っていたのは田所洪善(小沢栄太郎)だった。

田所は、夢中で差し入れの弁当を食べている受刑者たちに、君たちは脱走の常習者だそうだねと話しかけると、1人が、俺なんて5回しか逃げてないよと恥ずかしそうに打ち明ける。

一方、そういう話には全く興味なさそうに弁当をかき込んでいる男に、田所は、神木君は32回目だそうじゃないかと感心したように話しかける。

神木渡(千葉真一)は、そんな話など全く聞いてないように黙々と食い物を口に運ぶ。

作業室で働いていた受刑者の1人がトイレに行くと、横に並んで用を足す形になった外来者が、シャバに出る気はないか?と話しかける。

あんた、逃がし屋か?と受刑者が驚くと、3000万でどうだ?あんた、ヤクで貯め込んでいるそうじゃないか?と謎の男は話しかける。

後日、昼の休憩時間、中庭に出ていた受刑者たちの中で、急に仕組まれたように見える喧嘩騒ぎが始まり、刑務官が止めに駆けつける。

その中で、ただ1人、作業室の方へ移動して来た男がいた。

3000万で脱走を依頼した男だった。

しかし、場違いな場所にいたその男は、すぐに刑務官に気づかれ、こんな所で何をしているんだ?と声をかけられ、逃げ出そうとした所をあっさり掴まってしまう。

その時、刑務所の上空に1台のヘリコプターが接近して来る。

菜園で茄子の世話をしていた神木は、上空にやって来たヘリがホバリングを始め、縄梯子を降ろした事に気づくと、脱走のチャンス到来と悟り、すぐさま走り出すと、縄梯子が降ろされた建物の非常階段をよじ上りだす。

すぐさま、神木の動きに気づいた刑務官等も追って来るが、神木は一足先に縄梯子に飛びつくと、ヘリはその場を離れて行く。

タイトル

刑務所内からその様子を観ていた仲間の五郎が「兄貴や!」と縄梯子に掴まって飛び去って行く神木を嬉しそうに見送る。

縄梯子にしがみついた神木は着ていた主人服を脱ぎ、縄梯子についていたバッグの中から衣装を取り出し、空中で着替え始める。(キャスト、スタッフロールの背景)

やがてヘリは、河原沿いの土手を走るトラックに接近。

荷台にはマットレスのようなものが置いてあり、そこに縄梯子を近づけたので、神木はその荷台に飛び降りる。

さらに、パトカーが追って来たので、トラックと並走して横の小道を走って来た赤いオープンカーの運転手が合図して来たので、そちらに飛び移り、パトカーから逃げる。

オープンカーに乗っていた久世陽子(鰐淵晴子)は、持っていた写真と乗り込んで来た神木の顔を見比べ、あんた、私たちの客じゃないわねと聞く。

しかし、神木は平然と金ならあるぜと、ゴリラのマスクをすっぽり頭にかぶせられ、眼が見えないような状況で、彼ら逃がし屋のアジトに連れて行かれる。

そこには、黒人の巨漢などもおり、ゴリラのゴムマスクを外された神木は、いきなりライトを照らされ、何や、こいつ?とその場にいた仲間たちから言われる。

とんだ手違いなのよと陽子が説明し、金は出せるのか?と、ライトの奥の闇の中にいた男から声をかけられた神木は、ある場所に預けていると答える。

その後、神木は、逃がし屋の用心棒や陽子を連れ、楊明徳(汐路章)と言う中国人ブローカーらしき男の事務所にやって来ると、ドアをノックする。

覗き穴から神木の顔を確認してドアを開けた楊だったが、素早く机の引き出しから拳銃を出すと、しばらくぶりだな!と言いながら入って来た神木にニュースで聞いたと出迎える。

神木が、俺の取り分20万ドルあるはずだと用件を言うと、君がドジ踏んだお陰で大損害を被った。損害賠償して欲しい。1人で夢を見て下さいと言いながら、拳銃を突きつけて来る。

しかし、その拳銃をかわし、楊の背後に回り込んだ神木は、楊の首を締め上げ、昏倒させると、室内に会った金庫から金を奪い、銃もそのまま持って天窓から外へ脱出する。

連れて来た逃がし屋からも逃げたつもりだった神木だったが、天窓の外の道には、しっかり黒人ヴェトナム(ウィリー・ドーシー)ら用心棒等が待ち構えていた。

陽子の赤いスポーツカーに乗せられ、港に連れて来られた神木は、手足を縛られた上に錨まで抱かされ、埠頭から海に投げ込まれる。

懐中に沈んだ神木は、海底に落ちていたナイフを発見、素早くそれを拾い上げ、縛られていたロープを切断して海から脱出する。

山陽刑務所

健康診断用の診療車の中、奥さんにちょっかい出した男を殺したそうやな?と診察している医者から言われた受刑者関口勝春(北村英三)は仰天する。

奥さんから前金500万もらっている。脱出請負業だと関口にその医者は自己紹介する。

ジョーズ(郷英治)、サーカス(根岸一正)、教授(垂水悟郎)、ヴェトナムらメンバーたちに、山陽刑務所の難関は、直径35mmもある鉄格子ねとアジトで説明していた陽子は、マンションに戻って来ると、シャワールームに入っていたボスに、今度の仕事が終わったら、しばらく休みくれない?旅に出たいのと声をかけるが、身体を拭きながらシャワー室から出て来たボスこと田所洪善は、だめだ、もう1年の辛抱だと言い聞かせる。

その時、部屋に入ってきたのは神木で、驚く陽子から銃を奪い取る

田所は神木!と驚くが、神木の方は、田所が脱獄請負業のボスと知り、ハナからきな臭かったんだ。やっぱりあんたか、田所先生と皮肉る。

金を返してもらおうと言う神木に、ここにはない。鐘はスイスの銀行に預けてあると田所は言う。

それを聞いた神木は、今度の仕事に噛ませてもらえないか?こんな巧い仕事があることを思いつかなかった俺がバカだった。手ほどきくらいしてくれたって良いんじゃないか?と図々しくも頼む。

すると、田所も態度を急変させ、鷹揚に椅子に座ると、陽子に煙草を用意させ、一回だけ使ってやろう。陽子、みんなを集めろと命じる。

陽子はメンバーたちと、ゆで卵に何か液体を注射して準備を始める。

脱獄の依頼主関口は、差し入れがあったんやと、ゆで卵を取り出し、同じ房内の3人の受刑者たちに披露する。

びっくりするよ、飲んでみ?と勧められた仲間たちは、そのゆで卵の殻の穴から中味を吸ってみると、それが酒だと言う事を知り、3人奪い合うように飲み始める。

しかし、それは睡眠薬入りの酒だったので、関口以外の3人は、みんな夜中熟睡してしまう。

その間、神木は、メンバーたちの助けを借り、山陽刑務所の塀に飛び移ると、刑務所内の建物の屋上に登り、ペンライトの明かりを回して、仲間たちに知らせる。

すると、刑務所の向かいの建物の屋上に身を潜めていた仲間たちが、神木のいる屋上に向かって、ロープを発射して来る。

そのロープを捕まえた神木は、どんどんロープを引っ張り、より太いロープを惹き込むと、屋上にある換気扇に結びつける。

向かいの屋上にいた仲間たちは、刑務所の屋上との間に張ったロープに、滑車付きの小型運搬機を取り付け、神木の方に引かせる。

神木は、運搬機に付いていたバッグを取り外し、屋上から、脱獄依頼者の関口のいる房の窓までロープを伝い下りて行く。

鉄格子のハマった小さな窓から、関口か!と神木が声をかけると、寝た振りをしていた関口が起きて来る。

下がってろ!と呼びかけた神木は、今受け取ったバッグの中からバーナーを取り出すと、それに点火し、鉄格子を焼き切り始める。

その時、酒を飲んで眠り込んでいたはずの受刑者の1人が急に起き上がり、こんなことやないかと思ってた。おめえのようなケチな奴が酒など飲ませるはずがないからな。わしも一緒に行くけんなどと関口を押しのけて言い出す。

関口とその受刑者が喧嘩を始めたので、止めろ!と制止し、でかい声を出すな!連れてってやると受刑者に言う。

バーナーで鉄格子を焼き切った窓から、外に身を乗り出した受刑者と関口を、1人ずつ屋上へ運び上げる神木。

そして、身体の大きな受刑者の方から先に、滑車が付いた運搬機に乗るように指示をする。

一方、向かいのビルの屋上で神木の様子をうかがっていた脱獄請け負いグループの教授は、赤外線スコープ付きライフルで神木の頭を狙っていた。

依頼者の関口を収容した直後、新入りの神木を処分する腹づもりだったのだ。

ところが、小型運搬機に乗って近づいて来た受刑者の姿を観た彼らは、それが関口ではないことに気づくと、慌ててロープをワイヤーカッターで切断する。

先に乗っていた受刑者は、そのまま地上に落下し、死亡してしまう。

それを見ていた神木は、全部計算済みだと苦笑し、関口を刑務所内の納棺所に連れて行く。

そこには、昨日便所で首を吊って死亡した受刑者の遺骸が入っているのだと関口は教える。

翌朝、霊柩車が刑務所内にやって来て、その棺桶を積んで出発するが、その車の底に神木はへばりついていた。

刑務所を出て一般道を走り出した霊柩車の床下から後部の扉によじ上って来た神木は、扉を開き、中の棺桶のふたを開ける。

その中に入っていたのは関口だった。

2人は、信号で停止した霊柩車の背後からこっそり降りると、何食わぬ顔で、走り去って行く霊柩車に向かってお辞儀をする。

一方、神木が関口を乗せ車で走り去ったのを、別の車の中から見張っていた陽子は、無線で来たわよと仲間に連絡。

神木の車が到着したのは、関口の妻順子(風間千代子)が住むマンションだった。

車に関口を残し、神木だけが順子の待つ部屋に向かい、旦那が車で待っていると伝える。

順子はすでに金と旅行道具が入った2つのカバンを用意していた。

そこへ乱入して来たのが、ジョーズとヴェトナムで、ヴェトナムと神木がベランダで格闘している間、ジョーズは、金が入ったバッグの中身を確認する。

その時、ベランダで神木と組み合っていたヴェトナムが落下、地上に墜落死する。

神木は、ジョーズを倒した後、2つのバックを詰め直し、気絶していた順子を起こす。

その時、気絶していたジョーズが気づき、床に落としていたナイフを拾い上げようとするが、それに気づいた神木が、ボスに伝えておけ、良い勉強させてもらったとなと伝える。

先に、下で待っていた関口の車にたどり着いた順子は、金の入ったバッグと一緒に車に乗り込むと、2000万丸儲けじゃと喜ぶ関口と共に車を出発させる。

2、3日温泉へでも行くか?と関口は順子に笑いかける。

もう1つのバッグを持って下に降りて来た神木は、自分が置き去りにされたことを知る。

関口が運転して逃げる車を追って来たのは、陽子の運転する赤いスポーツカーだった。

陽子の姿を観た順子は、あの女、500万出す脱走屋の女よ!と関口に教える。

関口は何とか逃げ切ろうとするが、途中に待ち構えていたショベルカーに車の天井を掴まれ、そのまま山の中の崖に突き落とされてしまう。

その車に駆け寄った脱走屋たちは、順子が持って来たバッグを開けて中を確認するが、中味は旅行用の衣服だったので、畜生!と悔しがる。

その頃、もう1つのバッグを自分のマンションに持ち帰っていた神木は、バッグの中に、すり替えた札束が入っているのを確認すると、押し入れにしまい、自分は愉快そうに口笛を吹きながらシャワーを浴びる。

通天閣

チラシ配りをやっていたのは、ムショを出たばかりの五郎だったが、通りかかった黒メガネの男に、あんた親戚に人殺しでもいそうな顔してますななどと言いながらチラシを渡そうとするが、黒メガネを外したその男は、先にムショを脱走していた神木だった。

五郎は再会を喜び、自分の汚いアパートに神木を連れて来る。

神木は、五郎が出したぼたもちを食いながら、ヘリで脱出した時の話から、ヴェトナム帰りの黒人とか地獄の釜から這い出て来たような奴等ばかりだと脱走屋の存在も打ち明ける。

3000万取られたけど、1億ばかり稼がせてもらったよと神木が愉快そうに武勇伝を話すと、わいも一口、乗せとくんなはれ。わい、表あるけないさかいな…と前科者の辛さを五郎は訴える。

その時、ノックが聞こえ、入って来たのはジョーズと教授だった。

五郎と神木は銃で殴られ、神木は自分のマンションに案内させられると、タンスの中に隠しておいた金の詰まったバッグを応酬されてしまう。

神木、お前もなかなか良くやったが、高くついたぞと教授が神木に言うと、教授!俺にやらせてくれ!とジョーズが言い出したので、教授は金の入ったバッグを手に先に部屋を出る。

立て!窓の側に行って開けろ!ヴェトナムの仇だ。同じ死に方をしてもらうんだ。飛び降りろ!3つ数えて引き金を引くと言い、数を数え始める。

ベランダの所にカーテンを命綱代わりに身を乗り出していた神木に反撃にチャンスはなかったが、3!とジョーズが叫んだ瞬間、銃声がして倒れたのはジョーズの方だった。

ジョーズは頭部を撃ち抜かれていた。

しかし、神木が握っていたカーテンが外れ始めたので、慌ててたぐって何とかベランダの中に転げ込む。

部屋に入ってきたのは、銃を手にした陽子だった。

あんたが助けてくれるとはね…、部屋の中に戻って来た神木は驚いたように言う。

ちょっと風向きが変わったのよ。神木さん、私、あなたの身辺調査をしてみたわ。

昭和21年沖縄で生まれたあなたは、12才の時に傷害事件を起こして、それから刑務所暮らし。

脱獄32回、計器は42年、罪名は暴行傷害、密輸入その他…、身上書には、刑務官に対し反抗的であると書かれていたわと陽子は語ると、神木さん、私と組まない?大きい仕事があるのよと言い出す。

田所を裏切るって言うのか?あんた、田所の女だろう?と神木は意外そうに聞き返す。

関東女子刑務所

神木を底に連れて来た陽子は、休憩中、外に出ていた受刑者の1人を指し、やよい(中川三穂子)と言って、ボスが前から狙っているのと教える。

娘じゃないか?と神木が驚くと、あの子が生まれた頃、ボスは刑務所にいたので娘じゃない。遺産じゃないと思う。関東なら長いこと世話になった人物の娘じゃないかと思うと陽子は言い、ボスを殺して欲しいのと突然頼む。

私はムショで生まれて育ったの。ボスにはもう十分貸しは返したわ。はした金で働かされるのはもうたくさん!一発勝負にかけてみるの。あなただって同じでしょう?と陽子は神木に迫る。

翌朝、陽子のマンションに移って来た神木は、陽子手作りの朝食を前に感激する。

陽子と向かい合ってリビングで飯を食い始めた神木は、俺、こうやって飯食うの、生まれて始めてなんだよと涙ぐみながらも、さっきの身上書んびは一つミスがあった。俺が生まれたのは沖縄じゃない。孤児院に入れてくれた人の話によると、中国からの引き揚げ船に捨てられてたんだとさ。つまり俺には生まれた国もおふくろもないんだ…、あんたの方がまだましだぜと言う。

関東女子刑務所に2人の女性刑務官が派遣されて来る。

その2人とは、五郎たちが女装した姿だった。

刑務官司令所に申告に来た2人は、当番の刑務官が2人を怪しんで非常ベルを押しかけたので、素早くその手を止め、殴り倒す。

1人の巨漢の女性刑務官に手こずった2人だったが、何とか胸を揉んで倒すと、房の鍵を奪い、既に女囚たちが寝ていた28房の258号室に入り込む。

しかし、1人の女囚が五郎が男であることに気づきむしゃぶりついて来た為、他の女囚たちもみんな「男や!」と飛び起き、全員が飛びかかって来る。

そんな中、やよいにもう1人の男がシャバに出るんやと話しかけ、他の女囚たちが五郎に組み付いている隙を狙い部屋の外に連れ出す。

翌日、やよいが脱獄したと言う記事を新聞で読んでいた田所は、誰の仕業だろう?と首を傾げていた。

その時、部屋の壁に設置された監視モニターに神木の姿が写ったので、教授に案内して来させる。

部屋にやって来た神木に、お前の仕事か?と田所が新聞を投げてみせると、俺と陽子の仕事だと神木は答える。

それを聞いた立どころは、陽子はお前に、俺を殺せと言っただろう?と聞き、あれは中途半端なことができん女だからなと言う。

全財産と交換しないか?あの古賀何者か知っているのか?と田所は神木に言い寄る。

掛け買いのないお宝だと言うことは知ってるぜと神木がうそぶくと、来い、教えてやろうと言い、隣の部屋に神木を誘った田所は、銃を突きつけて付いて来た相手に、小さなダイヤを出してみせる。

あの子には30億の価値がある。

このダイヤは、戦後、アメリカに奪われた供出品だよ。そのアメリカから奥垣と言う奴と一緒に強奪したんだ。

奥垣は今、殺人罪で刑務所にいるが、ダイヤの在処は、娘にしか話さんと言っている。

その娘と言うのがあのやよいだ…、どうだ、神木?この話興味あるだろう?と田所は言う。

その後、音楽を聴き踊り狂っていた弥生と共に神木の帰りをマンションで待っていた陽子は、田所が入って来たので、驚愕する。

やよいも、教誨師としてしか知らない田所を観て、先生!と驚くが、そんなやよいに田所は、連れ戻しに来たんじゃない。お前をお父さんに会わせてやろうと思ってなと話しかける。

しかし、それを聞いたやよいは、うち、興味ないわ…と言い捨てると、又1人で踊り始める。

田所は、この仕事は極めて難しいぞと神木と陽子に告げる。

やよいの父親である奥垣松夫が収監されている海南刑務所は、日本一近代的な設備を誇る重罪刑務所だったからだ。

考えていた田所は、こうなったら仕方がない。やろう!30億の為なら苦労する価値があると決断し、先ほどから気まずそうにしている陽子に、これでもわしを殺したいか?と聞き、この仕事が終わったら、のんびり世界旅行でもしようじゃないかと行って笑い出す。

重罪刑務所へ向かう車の中、陽子は、田所はあんたを殺すわと警告する。

しかし神木は予想しているようで、そうだろうな…、だがこっちも、30億、丸々頂戴するつもりだと答える。

あなたは、田所の本当の怖さを知らないのよ。私も殺される。許すはずがないもの…と陽子は怯える。

海南刑務所の近くにある海南病院前の道路のマンホールを開け、下水道に侵入した教授たちは、途中の金網を切断、柵も取り外して奥へと進む。

途中、便所の排水を浴びたりしながらも、奥垣が収監されている特殊官房から2、3分の距離の所にある刑務所内の物置に向かう。

一方、特殊官房に入れられていた奥垣松夫(花澤徳衛)に教誨師として面会に来た田所は、娘さんを見つけた。やよいさんが見つかったんだ。わしが預かっていると伝え、やよいの写真を見せてやる。

それを観た奥垣は、間違いない。死んだかないに生き写しや…と感激する。

ここに面会に連れて来てやりたかったんだが…、近いうちに連れて来てやるからなと田所が親切気に語りかけると、年老いて気が弱くなっていた奥垣は、頼む!と頭を下げる。

夜、刑務所の横の道にクレーン車がやって来る。

その時、刑務所内の監視室のモニターの一つの画像が乱れだす。

クレーン車の天辺から降りて来たワイヤーに、地上に立っていた神木がぶら下がり、刑務所の屋上に降り立つ。

監視室の職員が、モニターの異常を電話連絡していると、突如、乱れていたモニターが正常化したので、もう大丈夫だと電話を切る。

刑務所の屋上にいた神木は、排気口の入口から中へと侵入する。

そして、仏壇がある教誨部屋の前までやって来て待機する。

教授たちは、下水管の中から、地上へとドリルで穴を開けていた。

翌朝、刑務所近くの旅館に泊まっていた陽子は、鏡台の前で、ハンドバッグの中の拳銃を確認していた。

そこに、お早うと言いながら田所が入って来る。

そして、お前と言う奴は日ごとに美しくなる。俺は一日ごとに老けて行く。若さに勝つには金しかない。年を取るほど金に汚くなる。30億入ったら何に使う?と田所は話しかけて来る。

何に使おうかしら?ボスにお任せします…と答えた陽子は、ボスは?と聞き返す。

すると田所は、全部お前の為に使うよと答える。

その日、再び海南刑務所に教誨師としてやって来た田所は、刑務官に化けた五郎を連れ教誨室にやって来る。

室内に降りた神木は、五郎にフィルムを手渡す。

その後、刑務所内では、映画鑑賞会が始まる。

受刑者たちは講堂に、たまには東映のヤクザ映画でも観たいななどと言いながら集まって来る。

五郎は、16mmフィルム映写機の準備をする。

刑務官は受刑者たちに、今日の映画は「働き蜂の一生」と言う文部省推薦のためになる映画だと告げたので、受刑者たちの中からがっかりした声が広がるが、映写が始まると、画面にはいきなり東映マークが出て来る。

さらに、いきなり濃厚な濡れ場が映し出されたので、受刑者たちはどよめきだす。

その声で映画の異変に気づいた刑務官は驚き、中止しようとするが、映し出された女の裸目がけ、受刑者たちが殺到して来る。

やがて、それを制止しようと集まった刑務官等を押しのけ、講堂を飛び出した受刑者たちは暴れ始める。

その暴動の最中、刑務官の服装に身を固めた神木が特殊官房に向かう。

そして、奥垣に用意して来た刑務官の服を渡し着替えさすと、足が弱った奥垣を抱えて官房の外へと連れ出す。

豚小屋の中に開けた穴から、奥垣を地下の下水道へと案内する。

海南病院横のマンホールでは、先に刑務所を出ていた田所が待ち受けていた。

上から洋服を投げ込み、再び着替えさせた奥垣をマンホールから外に出すと、いきなり教授はまだ中にいた神木目がけ機銃を掃射して来ると、手榴弾を投げ込んで来る。

間一発下水管の方へ大きくジャンプして爆破の直撃を免れた神木だったが、元の豚小屋に戻ると、暴動を制止するため入り込んでいた消防車を奪い、そのまま、パトカーや警官隊を乗せたトラックが到着した中、堂々と刑務所の正門から脱出する。

そんな消防車に気づき、兄貴〜!と追いかけようとした五郎だったが、暴動に巻き込まれ、殴られた上にあっさり捕まってしまう。

奥垣を助手席に乗せ、トラッを運転して逃亡していた田所は、背後から追って来る小型消防車を運転しているのが神木だと気づく。

神木は消防車をトラックの背後に近づけると、トラックの荷台に飛び移る。

荷台に乗っていた教授が神木と格闘し始める。

神木は教授を荷台の外に投げ落とし、教授はトラックに轢かれて死亡する。

神木は、運転席に乗り移ろうとするが、田所が立ち木に接近させたので、途中で飛び降りる。

その後田所は、無事、やよいと陽子が待つ別荘に奥垣を連れて来る。

奥垣は、ギターを弾いて挨拶もしないやよいに会うと、感激しながらも、仕方がない、獣のように生みっぱなしで何もして来なかったわしが悪いんじゃと力を落とす。

そして、田所、もうええ、お前の腹は分かっとる。ダイヤの隠し場所は娘にも教えるつもりはない。幸せになるとも思えんし…、このまま墓の中まで持って行くつもりや…と奥垣は言い出す。

すると、それまで黙って聞いていた田所が、わしを甘く見るな!と言いながら、銃をやよいに突きつける。

このハジキは脅かしじゃねえぞと田所が言うと、始めて、やよいが、父さん、助けて!と奥垣に声をかけて来る。

それを観た奥垣は、田所、娘を助けてやってくれ!と頼む。

(回想)ダイヤを小袋に入れた奥垣は、それを、先祖の墓の下に埋めていた。

(回想明け)その時、ボス、堪忍して!あなただって私を殺す気でしょう?と言いながら、銃を田所に向けた陽子が引き金を引くが、銃弾は出なかった。

俺を分かってなかったな…と、夢中で引き金を引く陽子目がけ発砲した田所は、部屋から逃げ出して行く。

そこへ駆けつけて来たのが神木で、ベランダで倒れていた陽子を抱き上げると、陽子!と呼びかける。

その時、田所は車で逃げ出していた。

その車の下部には時限爆弾が仕掛けられていた。

仇は取ってやると神木は言うが、あのダイヤはあなたと私のものよ…、田所にも誰にも渡しはしない。お願い、起こして…と虫の息の陽子は頼む。

陽子を抱き起こしてやったその時、別荘から走り去りかけていた田所の車が大爆発を起こす。

これでやっと自由になれた…と、その爆発を確認した陽子は呟く。

30億手に入ったんだ。2人で日本を脱出しよう!と神木が声をかけると、信じて良い?と陽子が聞いて来たので、俺だって、一生に一度くらいはまともになるさと神木は笑う。

それを聞いた陽子はそのまま安堵したように息絶えてしまう。

その陽子の身体を抱きしめる神木。

その後、赤い陽子のオープンカーに奥垣とやよいを乗せ、ダイヤの隠し場所にやって来た神木だったが、そこは、右も左も分からないくらい造成され、今や団地に変わっていた。

あんたの先祖のはかってどこなんだ?と神木は聞くが、墓なんてどこを見渡しても見当たらなかった。

狂うとる…。先祖の墓の上に住むなんて…と奥垣はあっけにとられたような表情で呟く。

今にコンクリートになって化けて出て来るよと神木も唖然とするしかなかった。

親父さん、諦めようぜ。俺たち悪い夢を見ていたんだと神木が話しかけると、後部座席に乗っていた奥垣は、ムショに戻してもらおう、こんな世の中なら、ムショに戻った方が良いと言い出す。

やよいは、どっかにぎやかな所で降ろしてと言い、おじさんは?と神木に聞く。

俺は本格的な脱走屋をやるつもりだ。悪い夢の続きを観たいんだと答えた神木は、車を発車させるのだった。